12.墓参り殺人事件
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
山並郁夫とは、俺のこと。
俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。
長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。
ところが、人生、思ったようにはいかない。
俺は、隊長大文字伝子と運命的に出逢ったことで、今後の方針を固めた。
それは、『闇サイトハンター』として、EITOに、いや、大文字伝子に協力していくことだ。
義理の姉に呼び出されて、渋々行ったら、何のことはない。
墓参りだった。
俺達の親の墓参りではない。義姉の亡夫の墓参りだ。詰まり、『府中のドンファン』の墓参りだ。
「墓参りくらい、1人で行けばいいじゃん。運転免許証もクルマもあるんだし。」
「郁チャンの意地悪。恐いから頼んでいるのに。」メソメソ泣き出した義姉を見て、思わず「分かったよ。」と言ったら、「じゃ、墓参り済んだら抱いて。」と言うので、「ダメ。きょうだいなんだから。」と、『お相手』は断った。
義姉は、『自由恋愛』が不得意なのだ。『男漁り』に行けなくなったことも事実だ。
亡夫は有名人だった。だから、「不審死」などと騒がれ、殺人の汚名を着せられた。
義姉が信用出来る人間は、もはや、俺だけになったのだ。
喪服を選んでいるので、「喪服は要らないんじゃない?」と言ったら、「だって、祥月命日よ。お坊さんは呼ばないけど、ムードは大事でしょ。」と返して来た。
今日は日曜日だが、曇り空なので、墓は閑散としていた。
「ぎゃー!!」『府中のドンファン』の墓参りを済ませて帰ろうとすると、悲鳴が聞こえた。
逃げようとする犯人をラリアットで転倒させ、現場に行ってみた。姉貴もやってきた。
現場には、例のナイフガンナイフがあった。
すぐに、自分のスマホに写真を撮ってから、「姉貴。110番だ。」と怒鳴った。
姉貴は、「ここの番地分からないわ。」と言うので、急いで、現場に行った。
「大丈夫だ。GPSで分かるから。」と言って聞かせた。
いち早く駆けつけた警察官が、「あなたがやったんですか?」と、間抜けなことを言った。
「犯人はこいつ。私が犯人で通報するのなら、安全圏に逃げてからにしますよ。」
すぐに救急隊員が搬送に来た。
「失礼なお巡りさんね。主人の祥月命日だから、お墓参りに来たのよ。発見者を殺人犯にしたら、何万円ボーナス出るの?弁護士の先生に連絡した方がいいかしら?」
姉貴は、無理矢理、亡夫の墓に連れて行った。
分が悪いと感じたのか、警察官は他の警察官に促され、去って行った。
ゴミ袋を所定位置に捨て、柄杓とバケツを所定位置に返した俺達は、帰路に着いた。
姉貴は気が立っているので、運転は俺がした。
それが幸いした。
高速道路に入った途端に「煽り運転」のクルマが追走してきた。
このクルマには当然ドラレコが着いている。
亡夫の亡くなった後、パパラッチが絶えないので、弁護士の助言で360度録画出来るドラレコが搭載されている。
俺の指示で、姉貴はまた110番することになった。
サイレンが近づくと、煽り運転のクルマは遠ざかって行った。
俺は、白バイ警官にナンバーと状況を説明した。
「運が良かったですね。丁度こちらに向かう途中でした。ご協力、ありがとうございました。ナンバー覚えていない人、多いんですよねー。失礼します。」
白バイが去った後、漸く帰宅した。
手作りのバターライスを食べていると、「ねえ。まだ興奮しているの、泊まって行ってよ。」
「ごめん。6時に約束があるんだ。こういう時はね、文章書くと落ち着くよ。小説に書いてもいいし、日記に書いてもいいし。俺にメールするのもいいし。」
「郁チャンの意地悪。半世紀先でも待ってるからね。」
台所に去った姉貴を見て、「下半身はオッケーでも、巻き込みたくないんだよ、俺の仕事に。」と、ひとりごちた。
午後6時。
俺は、早く切り上げて正解だと思った。
PCを起動して、「パラ・リヴァイアサン」の『声明』を発見したからだ。
「じゃ、闇情報検索スタートだな。」
―完―