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8話目 絶対はないけど、やるしかなさそう

「ナツちゃんの特別な力については一旦おいといて彼女を恋人にしたいとか考えたりしないの。同年代のわいい女の子なんだしさ」

「今のナツには、ほかに好きなやつがいますので」

「とはいえツクヨくんが気持ちを伝えることは自由だろう。ナツちゃんは押しに弱そうだし、想像よりも結果は悪くないかもしれない」

 にやついているニアの顔を見てか、からかわないでくださいよ……とツクヨが口にした。

「それに個人的にはあまりナツを混乱させたくないんですよ」

「やっとこさ、わかりやすい嘘をついてくれたね。本当はもっと下心をナツちゃんにぶつけたいんじゃない」

「ぶつけたところで結果は変わりませんよ。ナツの意中の相手はかざというんですが、そいつと話している時の舞い上がりかたとかを見ればニア先輩も」

「わからないなー。そこまでナツちゃんの気持ちを理解しているのであれば完璧にコントロールできると自負しても良さそうなものなのに」


 なにかの音が聞こえたからかニアの耳が動く。

「恋愛と他人を思い通りにコントロールすることはまったく別でしょう」

「同じことだよ。恋人とはいえ他人……片思いだと互いに理解をするのに時間がかかってしまい最悪の場合は破局をしてしまう」

幼馴染おさななじみだからって絶対に成功しないかと」

「ツクヨくんの告白が絶対に失敗するのが確定してないのと同じようにね」

 楽しそうな様子のニアを横目で見ているツクヨが苦々しい顔をした。

「おれがナツと付き合うのが一番簡単だとしても、必ずしも正しいとは限らないのでは」

「だからって、わざわざツクヨくんが我慢する必要はないだろう。カザマくん? とナツちゃんの恋がじょうじゅしなくなるわけでもあるまいし」

 それともナツちゃんに失恋を経験させてみたいとツクヨくんは思っていたりするのかい、だとしたらなかなか意地悪だね……とニアが唇を動かす。


「おれは単純にナツに納得してほしいだけですよ」

「失恋だったとしてもか、個人的には残酷だと思っちゃうんだけどな。ツクヨくんの本来のスタンス的にもナツちゃんが意中の相手と恋人関係になることをサポートするはず」

 ニアが身体を前後に揺らしながら、ツクヨの顔を見上げる。

「さすがに恋愛成就のサポートまではしませんよ。ナツ自身も必要としないでしょうし」

「積極的かどうかの違いだけで今のもツクヨくんの下心なんじゃない? ナツちゃんが本当にサポートを不必要かどうかもわからないし」

 意地の悪いことを言っちゃったね、ごめんね……とニアが手を合わせてツクヨに謝った。

「事実なんですから意地は悪くないかと」

「ツクヨくんは優しいね。ほれちゃいそうだぜ」

「ありがとうございます。とにかくナツだったら、風間に振られることになったとしても問題がないと個人的には思っています」

「確かに、子供あつかいはしてなさそうだね。話は変わるがナツちゃんに特別な力があることは本当に知らないの?」

「本当に知りませんし。特別な力があったとしてもおれにはまったく関係がないのでは」

「ツクヨくんも男の子なんだから、圧倒的なパワーとかに興味があったりとかしないの」


 男の子はバトルとか好きらしいじゃんと言いつつニアがこぶしを突き出している。

「自分が完璧にコントロールをできるものではありませんからね。興味を持つもなにもないのでは」

「楽観的なことで……その特別な力をナツちゃんがいつでも完璧にコントロールできるとは限らないんじゃない。失恋をした時とかさ」

 ツクヨが目を見開いたが、すぐに元に戻った。

「ナツの特別な力というのは失恋でコントロールができなくなるほど繊細せんさいなんですか」

「どちらかというと暴走されることを危惧きぐしているのほうが正しいかな。ナツちゃんがストレス発散に身近なものを破壊するタイプだったら、考えるだけでおそろしいだろう」

「さすがにそこまでは」

 ニアが首を横に振っている。

「わたしもナツちゃんを信じてあげたいが、できることならコントロールや精神的ダメージを最小限にしておきたいのさ」

「ナツが本命の風間と恋人になることに関して反対ではないんですね」

「恋人になれても永遠に継続できるものでもない。わたし的にはツクヨくんがナツちゃんと恋人になり献身的なサポートをしてくれるのが一番理想的な形だと思っているんだ」


 彼女が幸せになれれば自分をないがしろにできるであろうきみにこそふさわしいと考えている……とニアは伝えていた。

「ニア先輩はナツの監視役みたいな立場だからこそ今みたいなことを言っているだけでは、問題があると面倒でしょうし」

「ナツちゃんというよりは彼女が振り回す大きな鎌のほう。モルテプレディオンと呼ばれるものの管理を任されているんだよ」

 ツクヨの言葉を否定するつもりがないらしくニアはあっけらかんとしていた。

「そのモルテプレディオンをあつかう人間は、別にナツじゃなくても良かったのでは」

「モルテプレディオンがナツちゃんを気に入ったんだから仕方がないだろう。そんなに心配なら彼女の恋人になり守ってあげれば良いだけの話」

 遠くから幸せを見守るのではなくて、きみがナツちゃんを助けるナイトになれば全ての問題が解決をできるかもしれない……ニアの本心からの言葉だと判断したのかツクヨはだまったまま。


「こちらとしてはどっちでも良いんだ。ツクヨくんができないのなら本命だというカザマくんとやらに同じことを頼むだけだし」

「仮に風間が断ったとしたらどうするんですか?」

「場合にもよるが、ツクヨくんと違いカザマくんは本命らしいから脳をいじってコントロールすることになる可能性もあったりする」

「モルテプレディオンとやらのためにですか」

「かしこくて助かるよ。ツクヨくんの言う通り……こちらとしてはモルテプレディオンの機嫌、もといナツちゃんに失恋を経験させたくないからね」

 ツクヨに怒っているようなりがまったくないからかニアが意外そうな顔をした。

「ニア先輩に怒りをぶつけても意味がないかと」

「こらこら、許可もなく年上の女の子の表情を読み取るのマナー違反だよ。わたしだからゆるしてあげちゃうけど」

「おれがナツの恋人になれば、ニア先輩は風間とは接触をしないんですよね?」

「うーん、どうかな。ツクヨくんのモチベーションのためにも本当のことを教えておくとバックアップとしてカザマくんとも仲良くなっておきたいかな」

 ストッパーはできるだけ多いほうが便利だしさ、とニアがツクヨの肩を軽く叩く。


「失敗なんかしませんよ」

「どんなことも絶対はないだろう? さっき自分で言っていたじゃないか」

 それにツクヨくん的にも自分が失敗した時の保険はほしいところだろう、最終的にいとしいナツちゃんが幸せになれれば満足なんだしさ……というニアの言葉に納得してか銀髪の彼は口をつぐむ。

 落ち着こうとしてか、ツクヨが大きく呼吸を繰り返していた。

「風間にも、モルテプレディオンの話を伝えるのは確定なんですか」

「全てを教える必要はなさそうだとわたしは考えているよ。ツクヨくんと違って、ナツちゃんの特別な力を悪用しようとする可能性もあったりするし」

「なんでおれにはナツの特別な力やモルテプレディオンについて教えてくれたんですか」

「ナツちゃんに対して純愛そうだから……と言ってあげたいが。ツクヨくんは強大な力を手に入れたとしてもちゅうちょするタイプだと判断させてもらった」

 つまりおくびょうものだから手の内を明かしたとしても問題のない相手と思われているわけですか、と口にするツクヨにニアが拍手をした。

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