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23話目 結末はわかっているのに

「モニデカのわたしと人間のツクヨくんは付き合うことができたとしても、いつかは別れなければならないということですか」

「わかっているなら良いんだ。わたしとしても悲しそうに泣いているアーティスちゃんをツクヨくんと別れさせるのは嫌だし」

 本当に心苦しいと思ってますか? とでも言いたそうな顔をアテラがする。

「にしても、わたしには理解ができないな。好きな男の子とはいえ最終的には自分のものではなくなることがわかっていながら手伝いをしてあげるなんてマゾヒストにもほどがあるんじゃない」

「ツクヨくんが幸せだったら、わたしは」

「わたしだったら誰のものにもならないように破壊をするのに。アーティスちゃんは優しいね」

 天井から落ちてきたノコミがニアに殴りかかろうとするが、アテラが青みがかった黒髪の彼女を後ろから抱きしめてせいした。

「お姉さまがどんな気持ちかわからないくせに」

「わたしはアーティスちゃんじゃないんだから……気持ちを完璧に理解をできるほうが変だろう。ノコちゃんの怒りの理由もなんとなくしかわからなくてごめんね」


 落ち着きなさい、とアテラに言われてかノコミが暴れるのをやめた。

「ごめんなさい。お姉さま」

「謝る相手はわたしではなく鳴上なるかみさんでしょう」

「別にわたしは気にしてないから良いよ。謝られる理由についても曖昧あいまいにしかわからないしさ」

 ノコミの機嫌をなおそうとしてか、ニアが笑みを浮かべるが青みがかった黒髪の彼女は再びあっかんべーをしていた。

「女の子の気持ちは複雑すぎて難しいね」

「そうでしょうか? 鳴上さんは自らすすんで地雷を踏みにいっているように見えますけど」

 ニアが驚いた顔をする。

「はじめてかもしれないな。わたしのことを的確に見つけてくれたモニデカちゃんは」

「挑発ですか」

「んーん、ほめたつもり。ごめんね……アーティスちゃんを不快な気持ちにさせちゃったのなら」

 アテラとノコミに手を振り、部屋の外に出たニアが扉をゆっくりと閉めた。

「お姉さまはわがままになっても良いのでは」

「人間を幸せにするのがモニデカの本分ですから、一緒にいられるだけでも充分にわがままだとわたしは思いますよ」




「なんで竹中ちゃんだけなんだ?」

「疑問に思っても、女の子と二人きりで遊べるんだからよろこんであげるのが優しさでしょう。とくに弟に約束をすっぽかされた時とかはさ」

 イオリに言われた通りに、優しさを提供しようとしてか質問をせずツクヨは公園のベンチに座る黒のショートヘアの彼女の隣に腰を下ろす。

 ツクヨが持ってきたビニール袋をイオリがちらりと見た。

「食べるか?」

「弟にあげたいからパス」

「じゃあ、また学校で」

 ビニール袋をおいて、帰ろうとするツクヨの着ているパーカーのすそをイオリが親指と人差し指で挟み軽くひっぱる。

「友達の女の子が困っているのに助けないの?」

「問題の答えがわかっているんだから、助けることはできないんじゃないか」

 イオリがけわしい表情をした。

「デートだったら良くない」

 普段と違う様子のイオリをほうっておけないからかツクヨがベンチに座りなおす。


 近所に住んでいるのであろう小学生ぐらいの男女がボール遊びをする姿を銀髪の彼が見つめる。

 ときおり……隣に座るイオリのほうへちらちらと視線を動かしていた。

「今日はいつもよりわいらしい服を着ているな」

「木下とデートするつもりだったからね」

「このまま公園デートで良いのか?」

「見たい映画はあるけど、わたしともそうカップルをするのは才藤ちゃんに怒られるでしょう」

「友達がたまたま女の子なだけで、おれが怒られることはないと思う」

 才藤ちゃんはどこかの幼馴染おさななじみと違って大人っぽいからね、と毒づくイオリに対してかツクヨが苦笑いを浮かべる。

 ベンチから立ち上がるとビニール袋を持っているほうとは反対の手をイオリに握られてしまいツクヨが驚いた。

「わたしでも緊張とかしてくれるの?」

「心臓に悪いから、次からは事前に教えてくれ」

「了解」

 とイオリが嬉しそうに笑う。黒のショートヘアの彼女の歩くスピードに合わせてかツクヨがゆっくりと公園をあとにした。




「映画とかでさ。こいつはこのあとこうなっちゃうんだろうなー、とかわかっちゃうと不思議と悲しい気持ちになったりするよね……友達でもないのに」

 映画館の近くにあった喫茶店でおしゃべりをしている最中、それまでの話とはまったく関係ないことをイオリが言った。

 黒のショートヘアの彼女と向かい合わせに座っているツクヨがコーヒーを半分ほど飲む。

 店内に流れている曲が変わった。

「無意識に感情移入をしているんだろう」

「んーん、違うと思う。みんなが感動するタイプの映画とかでも泣けないし」

「単純にそのキャラクターに対して同情をしているとか」

「言語化するのは難しいな。なんというか……登場人物の役割がわかっちゃうと悲しい気持ちになる」

「人生の歯車の一つ、みたいな感じだからか」

 そうかもしれない……と飽きてしまったのか投げやりに返事をしつつイオリがチョコレートパフェのクラッカーを手でつかみ、かじっている。


「チョコレートパフェって食べづらいんだね」

「甘いものというか、とりあえず欲望を全部のせてみましたみたいな商品だからな……食べやすさまで考えなかったんだろうよ」

「ところで、木下はアンドロイド系の映画で泣いてしまうタイプ?」

 とつぜん話題が変わったことも気にせず、ツクヨは質問の答えを考えているのかまぶたを閉じた。

 しばらくしてツクヨがまぶたを開ける……変顔をしたイオリと目が合うも銀髪の彼は反応しない。

「弟には好感触なのにな」

「デート相手の女の子がいきなり変顔をしたら大抵の野郎は反応できないと思う。なんとなく笑うのも失礼だし」

「それもそっか。気をつかわせて、ごめんね」

 さっきの質問の答えを言っても良いか、とツクヨに聞かれてイオリがうなずく。


「竹中の求めている」

「デートなんだから、竹中ちゃんって呼んでよー。なんだったらイオリちゃんでも良いけど」

 楽しそうに笑い、イオリが足をばたつかせる。

「竹中ちゃんの求めている答えかどうかは知らないが泣くんじゃないかな」

「単純に悲しくて? それとも映画に登場するアンドロイドに感情移入をするから」

「どっちでもないな。さっきの話みたいに……歯車としてつかわれる存在だからじゃないか」

 もっと詳しく聞かせてほしいな、とでも伝えたいのかイオリの目がかがやく。

「歯車ねえ。自分以外のなにかのために便利につかわれているアンドロイドが悲しいってこと」

「悲しいというよりは、むなしい。むくわれてはいるんだろうが結局は自己満足だからな」

同族どうぞくけんに近いからかな。木下もヒトミに対しては今の話みたいなところがあるし」


 耳が痛くて、笑えないから反応に困るわ……などと言いつつもツクヨは笑顔をつくっていた。

「そろそろヒトミに告白するつもり」

「なんで竹中ちゃんに教えないといけないんだよ」

「だって、ツクヨが才藤ちゃんを選ぶ場合はわたしがヒトミの味方になってあげないと」

「ナツだったら平気だろう」

「ということは、今のところは才藤ちゃんのほうが優勢?」

 返事をせず、ツクヨがコーヒーを飲み干す。

「アーティス。才藤さんに気持ちが傾いているとは思うけど付き合うことはできないな」

「才藤ちゃんがモニデカだから」

 イオリがさらりと言う。

「知って……というか竹中も」

 とっさにツクヨが口をつぐむ。

「竹中ちゃんかイオリちゃんのどちらかで呼ぶって約束したじゃん。まったく、こんなていどで動揺をしないでほしいな」

「約束はしてないだろう」

「細かいことは気にしない。問題はどうしてわたしがモニデカやらヒトミのモルテプレディオンのことについて知っているのかでしょう?」

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