5話
「うん、美味しい。前の世界もこんな感じだったのかな…」
「どうしたんだい。そんな悲しそうな顔をして!バンと背中を叩かれる。
「い、いやぁ…故郷を思い出すなぁ…と」
「そうなのかい?テキトーに作ってるだけだからどの辺の料理かわからないけど食べたくなったら来なよ!金さえ出せば
作ってやるからさ!」
「ありがとうございます。ご馳走様でした」
「おや、珍しく丁寧だ。片付けもしてくれてありがとう!」
「いえ、当然のことですから」
「当たり前ができるやつなんてそんないないのさ」
「それでは、失礼します」
「あいよ!また来てくれ!」
―
「今度は武器屋かな」
周りを見回しながら歩く、標識や看板等は全て統一しているのかわかりやすい。
食事処に武器屋、防具屋、素材屋に錬金屋など一目でわかるようになっている。
「武器屋武器屋っと…あった」
剣と剣がクロスして重なっている看板である。
「こんにちは」
「おう、お嬢ちゃんどうしたんだ?」
「魔物の素材を剥ぐ用のものが欲しいんですけど」
「ほう、お嬢ちゃんは冒険家か何か、か?」
「いえ、いろんな街を旅している錬金術師です」
「錬金術師か…それじゃ作ったもの見せてもらってもいいか?」
「こんなのはどうでしょうか」
「ほう、上級の解毒薬…か」
「よくご存知ですね」
「俺は元々冒険家だからな」
「なるほど、上級を知っているということは相当腕が良かったんですね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」
「いえ、思ったこと言っただけですので…」
「そんじゃこのミスリルダガーでどうだ?」
「いえ…そんなミスリルなんてこの世界だと4番目に凄い鉱石じゃないですか…そんなものを買えるお金がないです」
「いんや、俺の実力がわかるやつに渡すと決めていたんだ。それが今だってだけさ」
「いいんですか…?」
「その代わりと言っちゃアレかもしれないが、ちょっと頼まれごとしてくれないか?」