3話
「うーん、朝は少し寒いなぁ」
身体を摩りながら起きる。空は曇り模様。何か変な匂いがする。こういう匂いがするときは大抵…
「やっぱり雨が降ってきた…この匂い好きじゃないなぁ」
国で買わされた傘を使う。
匂いは好きではないけど、傘に当たる雨粒の音は好きだ。ただ、この匂いがわかる人はあまりいない。
周りに家は無さそうだ。このまま歩いて進む。
何故か雨粒の音を聞いていると歩調が少し速くなる。今回は短い雨だった。2時間も歩いていれば雨は上がる。
少し残念な思いもあるけれど、その後に見られる虹という現象がとても綺麗だった。
見る度にもっと続けと思うけど、それは許されずにいつの間にか消えている。何故か悲しくなる。
「よし、行こう」
お昼ご飯を挟み、5時間も歩いたところ何やら建物が見え始めてきた。
王国に似た建物が多そうだ。
「身分証のご提示を」
私はカバンからカードを出す。
「これはこれは、ご苦労様です!」
「ご苦労様です」
これが私の一つの特権。本来であれば入国税やその他諸々の税はこのカードを見せればそれらを全て免除される。た
だ一つの印が押されているだけなのに。何がいいのだろうか。
そんなことを片隅に置いておき、街を堪能する。
「色々あるなぁ。武器屋さんに防具屋さん、素材屋さんにお薬屋さん。冒険者ギルドに商人ギルド。警備隊と色々あるな
ぁ」
散歩している間に夕方になってくる。
「すみません。この辺でいいお宿知りませんか?」
「そうだねぇ、この道を真っ直ぐ行った突き当たりの宿がこのクオークの一番いい宿かねぇ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いいえー。今どき感謝できるなんて珍しいわねぇ」
「そうなんですか?普通ではないのですね」
「その心忘れちゃダメよ」
「失礼します」
―
「確かにいいお宿かも」