2話
どうやら、クビになったようだった。
だけど、別に何も思わなかった。正直、王様もちょっと怪しいなと思い、嫌悪感がちらついていた。
特に思入れのない勇者パーティーから私は抜けた。
勇者パーティーと言うだけで箔は付く。名も無い私はアルケミストと呼ばれるようになった。どうやら錬金術師の別名の
ようなものらしい。
それから私はアルケミストと名乗るようになった。
「うん、ラドリーさんのサンドイッチは今日も美味しかった。よし次はどこに着くのかな」
風の吹くまま、身を任せて旅をする。
この世界に魔物と呼ばれる人間に敵対する者達がいる。
それの王が魔王と呼ばれているらしい。どうなんだろう。人間と違う異形なモノは他にもいる。犬や猫、鳥や家畜たち、
でもあれらは魔物ではないらしい。何が違うのであろう。異形のものは全て魔物というわけではないのだろうか。
魔物を何体か倒したことはある。確かに明確な敵対心を持っていた。だが、それはもっと昔からのことで、最初から友
好を結べなかったものだろうか。
何故、敵対し血を流し続けるのだろうか。そう考えると何故か悲しくなってくる。魔物の素材は錬金術の材料になる。製
薬から爆薬まで、様々な用途がある。
倒された魔物は可哀想だが素材を頂き、材料とする。
錬金術の本は王国にあったものは全て読破した。
なので大抵のことには困らない。
「もう夜か…早いなぁ」
少量の火薬と石と枝を使い、火をつける。
「あー…暖かいなぁ…村が恋し」
燻肉を火で炙る。いい匂いがしたところで一口。炙らなくても美味しいのだけれど炙った時の匂いがなんとも言えない
が心が落ち着く気がする。
「うんまーい…」
口に広がる香ばしさが堪らない。脂身が少ないところを選んでくれたのか、肉の旨味も強い。
涼やかな風を浴びながら食べる外のお肉はこれも格別だ。
これを食べると家畜はいてくれて良かったと心の底から思い、感謝をする。
この世界には感謝という文化があり、口にしたり、態度に表して感謝をする。
この感謝というものを伝えると相手は喜ぶらしい。
たまに言葉にしなくても心を読める人がいるのか、感謝をする前からニコニコしている人もいる。
どういうことだろう。何故バレるのだろうか。
この世界は心を読める人が多いみたいだ。
「ごちそうさまでした」合掌をして感謝を伝える。ニコニコ笑う人が見える気がする。