1話
アルケミーには絶対的な原則がある。等価交換。
何かを成すには何かを代償に出さなければならない。
これは揺るぎ得ない絶対である。
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「ふゎぁー…もう朝か」
今日も1日が始まる。支度をして宿を出る。
「あら、もう出るのかい?もう少し止まっていけばいいのに」
「いや、この村でやることは済んだので」
「世話になったね、またおいでよ。歓迎するからさ」
「そうですね、また寄る機会があれば。その時はお願いしますね」
「それじゃ、気をつけてね。アルケミストさん」
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「お、もう出ちゃうのかー?寂しくなるなー」
「お姉さんまた遊んでねー!」
「これ、今朝取れたの。ぜひ持っていってね」
「おぉ…また来てほしいのぉ」
「みなさんわざわざありがとうございます。それでは失礼します」
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「たくさん貰っちゃったな…サンドイッチに果物、燻製されたお魚とお肉。1週間しかいなかったのにたくさん貰っちゃったな」
岩の上に座り、サンドイッチを片手に青空を見る。
「私は何処から来たのかな」
目が覚めた時は既に記憶がなかった。目の前には知らない人たちが多く、なぜか英雄扱いされていた人が私以外に3人
いた。その人たちは記憶があるらしく、堂々としていた。
男性が2人、女性が私以外に1人。
男性の英雄と呼ばれていた2人のうち1人はケンジと呼ばれており、職業が勇者。もう1人はカズオと呼ばれ、職業は賢者
だった。女性の1人はカオリと呼ばれていて聖女という職業だったらしい。
そして私の番になった時、名前がわからなかったため、あなた。としか呼ばれなかった。
職業は錬金術師。どうやら最高の職業が揃ったらしい。
後に、王様と呼ばれる人に会い、勅令が下される。
“魔王を討伐せよ”と。色々話があったが、結論。君たち強いから頑張れ的なことだった。
そうして一人一人金を貰い、パーティーとして旅に出た。
私の記憶が無いせいか、話についていけずギクシャクしたのを微かに覚えている。
次の街で偶然にも他の錬金術師に出会った。綺麗で大人びた人だったと記憶している。
そして次の日、勇者と呼ばれた男性の腕に腕を絡めている錬金術師さんがいた。