告白されちゃう!?
不安に感じていると、樋笠さんのお父さんはコーヒーを淹れてくれた。しかし、明らかに動揺している。
手がブルブル震えて全部こぼしていた。
「熱ィ!!」
「パパ、大丈夫……!?」
「……だ、大丈夫だ。ちょっと油断していただけだ」
「珍しいね。いつも冷静なのに」
そりゃ、樋笠さんが俺を彼氏として紹介したせいでは……。
とりあえず殺されなくて良かったけど。
汗を拭っていると、お父さんは小さな声でなにかつぶやいた。
「結婚は認めんぞ」
え、今なんて……?
樋笠さんも聞こえなかったようで首を傾げていた。
「あとはやっておくから」
「しかし……」
「いいから着替えてきて」
樋笠さんはお父さんを追い出した。
なるほど、どうやら娘の方が強いらしい。
その後、俺は家の中へ案内された。
あ……お店でゆっくりするんじゃないんだ。
まさかの自宅へ。
ていうか、お店兼自宅だったとは。
流れるままに俺は樋笠さんの後姿を追う。喫茶店とはまるで違う通路を歩き、気づけばリビングらしき場所に到着していた。
「広い空間ですね……テニスコートかな」
「それは言い過ぎだよ~。そんなに広くないって」
テニスコートは言い過ぎたか。
でもそれくらい広い。どうなっているんだ、この家は。豪邸かよっ。
喫茶店が儲かっているんだろうな~。
てか、俺……気づかぬうちに女子の家に入っていた。なんかちょっと嬉しい。
「まさかお店が自宅にもなっているとは」
「凄いでしょー。パパの趣味でさ」
適当に座ってと言われたので、俺はソファに腰掛けた。なんか途轍もなくフカフカ!
てか、隣に樋笠さん!
……これではまるで本当に付き合っているみじゃないか。
「あ、あの……樋笠さん、近い……です」
「ねえ、霧島くん」
「は、はい……」
「この前はお財布を拾ってくれてありがとね」
「ああ、そのことはいいんです」
「でもね」
「え……」
「実は、それよりももっと前にも霧島くんに助けられたことがあったんだ」
財布の件よりも前?
……全然覚えていない。
てか、樋笠さんと同じクラスになって話すようになったの、つい最近のはずだ。昔に会ったことはないと思うけど。
「いつです?」
「中学校の頃。覚えてないか」
「う、うーん……」
「あの時、霧島くんは今よりもヤンチャだったよね」
そんな時代もあった。
思い出したくもない黒歴史だ。
ああ、だから記憶から抹消されているんだ。
「俺、なにしたっけ」
「わたしのピンチを救ってくれた」
「そうだっけ……」
「うん、あの時もね……お財布を拾ってくれたんだよ」
な、なんだって……!?
中学の頃にもあったんだ。
そう言われると微かに覚えているような……!
中学の頃は、金髪にピアスという不良みたいなことしていたからな、俺。だが、ある事件がキッカケで俺は更生。過去を抹消して真面目キャラになった。
あの頃なんて思い出したくもなくて、ずっと忘れていた。
けど、言われて思い出してきた。
そうだ。
俺は……中学時代に樋笠さんと会っている……!
「そうだったんだ」
「だからね、わたしはずっと霧島くんのことが気になってた」
「……!?」
樋笠さんが俺の手を握る。
……まるで告白されるみたいな視線。
ど、どうしよう。