長雨の終わりの始まり
シリアス系ファンタジーにしようと思っています。
・・・・今日も雨が、降っている。
どんより濁った空は俺の心の中のようだ。
俺は湯ノ原 悟。
高校3年。下に妹が1人。
今は学校に居るんだが、傘を忘れて下駄箱の前で立ち往生している。
正直、家には帰りたくない。
母さんと父さんはいつもケンカばかりしている。
だから、家に居たくなくてテレビも見ずに妹を連れて早めに学校に行く。
傘、持ってくれば良かったな。
びしょ濡れで帰っても怒られるだろう。
せめて、雨が弱くなるまで待とう。
隣でしゃがみこんでいる妹の奏は肌寒いのか肩が震えている。
「奏。俺に合わせて残らなくていいぞ」
人見知りな俺と違って奏は誰にでも話しかけて行くので友達は多い。さっきの友達に折り畳み傘を借して貰っていたのを見かけた。
こいつ1人なら濡れずに帰れるだろう。
「お兄ちゃんと一緒じゃなきゃイヤ」
少しだけ顔を上げた奏は子供みたいに頬を膨らませている。
しょうがないな。何か羽織れるものはなかったか?
リュックの中を覗く。お。底の方にクシャクシャになったタオルがある。無いよりはいいか。
「ほら、タオル。無いよりマシだろ?」
「うん。ありがと・・・・」
俺はまた空を見上げる。止みそうにないな、と視線を下げた。
「こんばんはー。いや、まだこんにちは?かな」
目の前にいきなり男が現れた。
「っは!?」
あまりにも至近距離だったので仰け反ったら、そのまま倒れこむ。
「だっ!」
いてぇ!?変なとこ、ぶつけた!
「だ、大丈夫!?お兄ちゃん!」
すかさず奏が手を貸してくれた。
「大丈夫だ」
立ち上がって男を睨む。いきなり人を驚かしておいて、一体、何がしたいんだ。
「おお、怖い怖い。わての心臓は豆腐並やさかい、そないに睨まれたらお詫びせんとな~?」
変な関西弁を話す男は出で立ちも奇妙だった。
大きな黒いシルクハットを被り、メガネのレンズは左が黄色、右が緑色の派手なデザイン。服は黒いスーツ?いや、燕尾服?を来ている。
髪はなんと七色。白をベースに、赤、ピンク、青、グレー、紫、水色。
あ、これ、関わっちゃいかんやつだ。
「ちょお待ちぃ。これやるさかい、堪忍え?」
逃げようとした俺の肩を掴んだ男は懐から、黒い長方形の物体を取り出した。
「スマホ?」
気になって見てみるが、どこにでもありそうな普通のスマホみたいだ。
「そうそう。すまぁとふおん、やったかな?それを模して作ってみたんやー」
ほい、と手渡されて受け取ってしまった。
「いや、いらなーー!」
すぐに返したくてスマホを前に出すが、男の姿は無かった。
目を離して居ないのに忽然と消えた?まさか、な。
奏もポカンとしている。色々、おかしすぎる。
気味が悪い。このスマホも早く捨てたほうがいい。
だが、少しだけ触ってもいいよな?
迷ったが、ちょっと触ったら捨てよう。
何せ、スマホは初めて触るのだ。周りのクラスメイトは当たり前に使っているのに、親は買ってくれなかった。
ワクワクしながら、横のボタンを押して画面を見る。
画面にはアプリが一つだけ入っている。あと電話とメールは使えるようだ。
「押して見るか」
もしかしたら、遊べるかもしれない。誘惑が勝ったのだ。
ピロリン、と音がしてアプリのタイトルらしきものが表示された。
「彼方からの交響曲?音ゲーか?」
「あ、これ友達がやってた。王道RPGだっけ?男主人公と女主人公から選べてマップ進めて魔王を倒すんだよ」
「へー。ま、やってみるか」
スタートボタンを押す。
かちりと頭の中で音が聞こえた。
すると、周りの景色がいきなり黒く染まり始めた。
「!!しまった!奏!」
「お兄ちゃん!!」
咄嗟に奏の手を握る。良かった、間に合った。
そうして世界が暗闇に包まれた。
◇◇◇◇◇
・・・ピチチッ
鳥の鳴き声?気を失っていたのか?
・・・日差しが眩しい。
雨が上がったのか?
「・・・・・っ!?」
咄嗟に起き上がる。掴んでいた手には何もない。
奏は!?
「奏、どこだ!?」
辺り一面に草が生い茂っている。その周りを木々が囲っている。
倒れているとしたら、見つけられないかもしれない。
焦りはじめた時だった。
「あ、お兄ちゃん。やっと起きた?」
いつもの暢気な声が聞こえた。
「良かった。無事だっ、た??その肩の、何?」
振り返った先にいた奏の肩に何かいた。
長い耳に白い毛、しっぽは長くてフサフサしている。
ウサギ?ネコ?フェネック??
それと額に赤い石がある。
「はじめまして!勇者サトル様!わたくしは案内人のクルルと申します!」
・・・・はあああああああ~~~~!?!?
更新は遅めです。すみません。