転生してる!?
学校へ向かう、という任務だろう、おそらく。
学校ってどこにあるんだよ、なんて疑問は、玄関から一歩外に足を踏み出した瞬間に解決された。
同じ奇抜な服装の、同い年くらいの少年少女が、目の前を歩いていたのだ──きっとみんな同じ学校の生徒のはずだ。ついていけば、きっと学校に辿り着く。
俺の推測はあながち間違ってはいなかったらしく、すぐに学校のような建物が見えてきた──校門には、『私立星空高等学校』の文字。そこに吸い込まれるように入っていく生徒たち。ここが俺の通っている高校のようだが……どういうネーミングセンスなんだ。
学校名と睨めっこをしている俺の後ろで、車が停まる音がした。振り向くと、黒塗りの高級車。いかつい顔をした男の運転手が出てきて、後部座席のドアを恭しく開ける──中から現れたのは、金髪の縦ロールが似合う美少女だった。俺と同様の制服を着ているとは思えないほど、神々しく輝いている。彼女から放たれる華やかなオーラに目が眩みそうである。
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
運転手の男が右手を胸に当て、軽く礼をしながら金髪縦ロールの美少女を見送る。彼女は、運転手に軽く手を振ったあと──俺のほうに近づいてきた。
「早乙女さん、ごきげんよう」
金髪縦ロール美少女は、俺の真ん前で立ち止まると、スカートの裾をつまんで頭を下げた──まるで、俺に挨拶をしているかのように。
「え、あっ、おはようございます……?」
動揺を隠せない上に、お上品な作法など毛程も知らない俺は、敬語で挨拶を返すのに精一杯だった──美少女は、失礼とも形容し得る俺の態度に腹を立てるどころか、小首を傾げて微笑んだ。胸も大きいが、懐も広いらしい。
「よかったら、教室までご一緒しませんこと?」
「あっ、ぜひ……」
こんな美少女がクラスメイト?
俺は前世でどんな善行をしたのだろうか──
……ん? 前世……?
その瞬間、曇り空から一筋の光が差し込んだように、脳内のモヤモヤが一気に晴れていく感覚がした。
俺、もしかして……転生してる!?
そう考えれば、辻褄が合うかもしれない。トラックに轢かれて死んだと思ったのに生きていることや、見た目がまったく異なる美少女になっていること──そして、知り合いが誰ひとりいないのに、俺のことを知っている人間がいること……。
死んだ拍子に、別の世界の人間として、生まれ変わってしまったのか──!
「早乙女さん? いかがいたしましたの?」
廊下を歩きながら一生懸命頭を回転させる俺に、隣を歩く美少女が訝しげに顔を覗き込んでくる──大きくてキラキラとした瞳にじっと見つめられたら、恋愛経験皆無な俺はどうにかなってしまいそうだ。
「あ、いや、なんでも……」
つまらない返事しかできない俺に、美少女は「そうですか」と優しく呟いて笑顔を戻した。可愛くて優しいなんて最強すぎる。
おっと、美少女から話を戻さないと。
……転生したという仮説が正しいと証明する術はないが、俺としては、かなり有力な説だと思っている──とはいえ、それならそれで、問題が発生してしまうのだ。
いったいぜんたい、ここはどんな世界で、俺は誰に転生したんだ……?