お茶菓子の好みは十人十色なのさぁ。
今日のお茶会は、私の好きなお茶菓子をたくさん作ったんだぁ。
「カルちゃんや、お招きありがとう。アレはあるかのぅ?」
「ちゃんと用意したさぁ!しんさんはアレが好きだなぁ。」
曾孫である王子様と一緒にやってきたしんさんは、開口一番に自分の好物さあるか聞いてきた。
「マックイーン嬢、今日は招待ありがとう。大祖父様からマックイーン嬢が作るアレが美味しいといつも自慢されていてね。食べてみたいとずっと思っていたんだ。」
王子様が私の手さ取って、手の甲に口付した。
「リュカ王子、お戯れが過ぎるのでは?」
私の肩を抱くように引き寄せて王子様から離したナザル坊は、私の手さハンケチーフで念入りに拭いてる。
「先々王陛下、それにリュカ王子。本日は我が婚約者のお茶会へ、ようこそ。招待に応じて下さり、恐悦至極に存じます。」
「おぉ、ナザル君か。君の優秀さは職員の中でも評判じゃよ。精進なさい。」
きちっと出迎えの挨拶をするナザル坊に、しんさんも笑顔で応じてくれた。
「マックイーン嬢、案内してくれるかな?」
王子様はやっぱり凄いさぁ!私の手をさささっと取ってエスケープする動作が優雅だぁ。
「リュカ王子、案内はオレが。カルディナに触らないで下さい。」
王子様のエスケープから私を引き剥がすナザル坊は少しばかり強引さぁ。
「だって、マックイーン嬢はナザルの弱点だろ?楽しいじゃないか。」
ニコニコ笑う王子様を見て、ピーンと来た!
「王子様はナザルが大好きっしょぉ?だもんでついつい構いたくなんだらぁ。王子様の気持ち、わかるさぁ。」
「はぁ?」
ナザル坊は嫌そうにしてるけん、友達同士仲良くするさぁ。
「ぷっ、君にはそう見えるんだ?マックイーン嬢は本当に面白いね。気に入ったよ。オレも名前で呼んで良い?」
「駄目です。カルディナはオレの婚約者ですので。」
名前で呼んでも良いよって私が言う前にナザル坊が断っちまっただ。
名前位構わないらに。
「ふぉっふぉっふぉっ。」
見事な白い髭を撫でながら笑うしんさんは楽しそうだ。
「しんさんも王子様も、もうみんな来てるけん、中にお入りなさいなぁ。お茶会さ始めるけぇ。」
お茶会会場にはセッちゃんもアリアちゃんも、王子様としんさんの到着さ待ってたんだぁ。
ナザル坊が蚤の市で買ってくれた急須と湯呑みでお茶を淹れるさぁ。
「これはこの間のか?」
「んだぁ。このでっかいのはナザル坊専用の湯呑みさぁ。私の部屋さ置いとくけん、いつでも飲みにおいでぇ?」
「オレ専用…か。」
ナザル坊もこの湯呑みが気に入っただか、嬉しそうに笑ってる。ナザル坊が嬉しいと私も嬉しいさぁ。
「ねぇ、ちょっとコレ!美味しいんだけど!」
アリアちゃんが興奮して食べてるのは……きな粉のお餅。
アリアちゃんの持ってるお皿にゃ、きな粉のお餅がてんこ盛りだ。
「カルディナ!控えめに言って、最高!!」
アリアちゃんはお餅さ気に入ったけ。あんこのお餅にも手を出してる。
「とても美味しゅうございます。」
セッちゃんのお皿にあるのはセッちゃんの大好きなお漬物。セッちゃんは甘い物よりもしょっぱい物の方が好きなんだぁ。
お漬物とお茶は無敵さぁ!
「たんとお食べなぁ。セッちゃんもアリアちゃんも、そんなに美味しそうに食べてくれると嬉しくなっちまうなぁ。」
お茶とお茶菓子やお漬物をもりもり食べるセッちゃんとアリアちゃん。楽しそうで良かっただぁ。
さて、しんさんと王子様の様子も見に行くとするかねぇ。
「しんさんも王子様もアレを持ってきてやるから、呼ばれなぁ?」
床几台に座ってお茶さ飲んでる2人は、仕草が優雅で本当に絵になるなぁ。
そんな2人に、しんさんの好物さ運んでやった。
「マックイーン嬢…コレは一体?」
「ふぉっふぉっ!コレじゃコレ。」
驚く王子様の横では、しんさんが目を細めて喜んでいる。
「コレはねぇ、茹で落花生さぁ。」
落花生の殻さ割って中を出してやると、王子様は指で摘んでしげしげと眺めた。
「コレは…ピーナッツかい?茹でたピーナッツなんて初めてだ。」
落花生をつんつんと突く王子様の、好奇心旺盛な様子は可愛らしいさぁ。
「城の料理長は茹でたピーナッツなんて聞いた事もないって、茹で落花生を作ってくれんからのぅ。初めてカルちゃんからもらった時は衝撃だったんじゃ。」
私も落花生とピーナッツが同じものだったなんて知らなかったけん、衝撃の事実にびっくりしたんだぁ!
しんさんは本当に茹で落花生が好きさね。
王子様の分まで自分のお皿に乗せて確保してるさぁ。
「カルディナ。」
しんさんと王子様と話をしている私に声をかけたんは、湯呑みを持ったナザル坊だぁ。
「ニコラスが挨拶に来たぞ。」
「兄さんがか?」
ナザル坊の言葉に振り向くと、兄さんが真っ直ぐ私達の方に向かって歩いている。
「兄さん!」
「様子を見に来た。」
兄さんは私の肩をポンッと叩くと、しんさんと王子様に向き合った。
「マックイーン家嫡男ニコラスが、先々王陛下と王太子殿下にご挨拶申し上げます。本日は我が妹カルディナの招待に応じて下さり、恐悦至極に存じます。」
兄さんの言い回し、ナザル坊とそっくりさぁ。
んだぁ、違うなぁ。ナザル坊が兄さんそっくりなんだぁ。
しんさんもそれがわかったのか、兄さんとナザル坊を見てクスリと笑った。
「いやいや、カルちゃんには私から招待して欲しいと前々から言っていたんじゃ。こちらこそ、招待してくれてありがとう。」
「ニコラス、今日はお邪魔させていただいているよ。オレもマックイーン嬢が友人を自宅に誘っているのを見て、強引に割り込ませてもらったんだ。手間を増やして悪いね。」
兄さんとナザル坊は必要以上にニコニコしない男だぁ。だけんども、しんさんと王子様はニコニコして雰囲気がみるい。
「いえ、お気遣いなく。」
兄さんがにこりともせずにお辞儀をする様子を見ていたら、後ろから服の裾さつんつんしてくるアリアちゃんがいる。
「兄さん、私の友達さ紹介するさぁ!」
兄さんはセッちゃんとは面識があるけん、アリアちゃんとは初対面だぁ。
「アリアです!よろしくお願いします。」
ぱぁっと花が咲き誇るみたいに笑うアリアちゃんは可愛らしい。
「カルディナの兄のニコラス=マックイーンだ。妹と仲良くしてくれると嬉しい。」
アリアちゃんの笑顔を見ても表情を変えない兄さんは、お貴族様らしいって言うか……、ちっさい頃から表情の乏しい坊だけん、兄さんも笑うと可愛いのにもったいないなぁ。
「カルディナ、オレはこれで戻る。ナザルがいるから大丈夫だとは思うが、くれぐれも王族の方々に失礼な事はするなよ。」
「わかってるさぁ。兄さんも忙しいのにありがとうなぁ。」
いっつも書類仕事に追われてる兄さんが顔を出してくれたんは、私の為だってのもわかってるさぁ。
「王族が来てるんだ。当たり前だ。」
兄さんは照れくさそうに私の頭をぐりぐり撫でると、そう言ってサッサといなくなってしまった。
「あれがニコラス様かぁ。実際に会ってみると顔は良いけど、ちょっと怖いかも。やっぱり攻略するのは無理かなぁ。」
私の横で小声でブツブツ言ってるアリアちゃんの声は、よく聞き取れん。
「アリアちゃんももっとお茶さ飲みなぁ。私のお茶会はまだまだ始まったばかりだけん。」
今日の1番のオススメは揚げ饅頭さぁ!
ちょっと渋めのお茶に、甘ぁいあんこがよく合うんだぁ!!
初めて茹で落花生と出会った時、中身かぐにゃぐにゃしてたので、失礼ながら腐ってるのかと思いました。
茹で落花生をくれた人は落花生とピーナッツが同じだとは知らなくてびっくりしてました。