んだぁー!!
アリアちゃんの歌さ聴けんかったのは残念だったけん、お散歩を再開するだぁ。
今日は休みだからか、公園内はえらい混雑している。
「カ、カ、カルディナ!」
勢いよく手を突き出してくるナザル坊の顔さ赤い。
「そうさね。ナザル坊が迷子にならんように、手さ引いてあげっからな。」
昔、人混みの中でナザル坊が迷子になったっけな。
あの時は私の名前さ呼びながら大泣きしてたなぁ。
「迷子になどならん!!」
ムキになる所もちっさい頃となんも変わっとらんけ。
「心配しなくて良いさぁ。私がちゃぁんとエスケープしてやるからなぁ。」
ナザル坊の手をギュッと握ってやると、ナザル坊は大人しくなった。
(※注 カルディナ様の言い間違えです。エスケープ→✕ エスコート→○ by セッちゃん)
人が多い所じゃ手を繋がないと不安なのは、昔からさぁ。
「見てみぃ、ナザル坊。あっちで何かやってるさあ。」
たくさんの人が茣蓙さ敷いて、服やら何やらを売っているように見える。
「あれは、フリーマーケットだな。」
「???」
カタカナの言葉は聞き取れんさぁ。
「フリーマーケットは不用になった物をああやって販売する事だ。最近平民の間で流行ってるらしい。」
不用になった物を売る…。あぁ!蚤の市の事かぁ!
「ナザル坊!私らも行くさぁ!」
ウメの時から蚤の市が大好きなんだぁ。
見てるだけでも楽しいけん、時々おぉっ!って思う掘り出し物がみつかったりするさぁ。
「お、おい!カルディナ、引っ張るな。」
「時は金なりだぁ!モタモタしてっと、良いものさ売れ切れちまうらぁ。飛んで行くさぁ!!」
掘り出し物はすぐに売れちまうからなぁ。
「カルディナは飛べるのか?!」
「心も身体もぴょんぴょんさぁ!」
若い身体だと、弾むように走れて良い気分だぁ!
(※注 飛べません。飛んで行くはカルディナ様語で急いで行くと言う意味です。byセッちゃん)
ナザル坊をグイグイ引っ張って蚤の市に足を踏み入れるけん、商品の多さに目移りしてしまうさぁ。
「ナザル坊、私の手ぇさしっかり握っときぃ。はぐれたら迷子になるからなぁ。」
私がナザル坊と繋ぐ手にギュッと力を込めると、ナザル坊もギュッと握り返してくれる。
これで迷子にゃならないさぁ!
活気のある蚤の市をナザル坊と見て回る。
祭りみたいな賑やかな雰囲気に、蚤の市をみるナザル坊の目がキラキラしてるさぁ。
「欲しい物さあったらお言いよ?」
「うん!」
ナザル坊は古めかしい鎧やら、ゴテゴテした錆びた剣に興味津々だぁ。
男は何歳になってもロマンを追い求めるもんなのさぁ。
「あっ!」
あそこに見えるんは!
湯呑みと急須だぁ!!
いつも私が家で使っているような、お洒落なテーカップやテーポットでなく!
ウメが使ってた丸っこい形が愛らしい湯呑みと急須だぁ!
「ナザル坊!アレ欲しいさぁ!」
「カルディナ!引っ張るなって!!」
ナザル坊を引っ張って若い兄ちゃんがやってるお店にある湯呑みと急須を……。
「んだぁー!!」
丸っこい湯呑みが5個あって、更にその横に寿司屋にありそうなゴツい湯呑みもあるさぁ!!
「兄ちゃん、コレ!コレとコレとコレ!いくらだぁ?」
私の迫力にビクッとなった兄ちゃんとナザル坊。
思わず興奮しちまったが、血圧は上がらんのさ。
「あぁ、ちょっと待ってな。」
兄ちゃんが計算してくれてる内にお金を出さなきゃ駄目だぁ。
ポシェットとからお財布を出そうとして、私は気が付いた。
「お財布…忘れちまっただぁ。」
私のお気に入りのポシェットには何も入っとらん。空っぽだぁ。
ようやく理想の湯呑みと急須に出会えたのに…これじゃ買えないさぁ。
「まいどありー!」
絶望する私の横で、急須と湯呑みの代金を払って品物を受け取るナザル坊がいる。
「ナザル坊?」
まさか、ナザル坊が買ってくれたんか?
「ん?欲しかったんだろ?」
ニコッて笑って商品を手に持つナザル坊には神様なのか、仏様なのか。
ありがたやぁ。
「ナザル坊は良い男だぁ。」
「行くぞ。」
照れてるのか、顔を赤く染めるナザル坊は私に荷物を持たせる事なく手を繋ぎ直して歩いていく。
私よりも大きい手の温かさに、ほっこりなのかどきどきなのかわからんが、この手は好きだぁって思った。
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