ヒロインはずぶ濡れになるものなのよ!!byアリアちゃん
ナザル坊んちの馬車にゆらゆら揺られて、私らは近くの街へと向かった。
「馬車で街に行くのも楽しいなぁ?」
近くの街さ行くのに私はいつも散歩がてら歩きで行くけん。
馬車からの景色はいつもより違って見えるし、パカッパカッと馬の蹄が地面蹴る音が心地良いだぁ。
「カ、カ、カルディナ!その、今日の服…凄く似合ってる。」
おときさんが選んでくれた空色のワンピースをナザル坊が褒めてくれた。
「ナザル坊も、白い背広さよぅ似合ってるだぁ。」
汚れが目立ちそうな服だが、青いお目々さくりくりっとしたナザル坊にはとてもお似合いなのさぁ。
「そ、そうか?」
前髪を全部上に上げてポマードで固めた髪型で、今日のナザル坊はまるで花婿さんみたいな装いなんだぁ。
「今日も絶好の散歩日和だけん、公園にでも寄って行かんかい?」
馬車から降りると、ぽかぽか陽気が迎えてくれる。
ここの公園の真ん中にはそりゃあ綺麗な噴水があってなぁ、私のお気に入りの散歩スポットさぁ!季節ごとに咲き誇る四季折々の花の花壇は見事なんだぁ。
「ん?噴水に人集りが出来てるな。」
ナザル坊の言う通り、噴水にはたくさんの人が集まってる。
耳さ澄ますと、綺麗な歌声が聞こえた。
「あれは…アリア嬢か?」
背ぇ高いナザル坊には、人集りの原因がわかったみたいだぁ。
「あっ!カルディナ姉ちゃん!!」
「おや、きー坊かい。」
人集りの中に、公園でよく会うきー坊がお父さんの肩車の上から手ぇ振ってくれた。
「カルディナですって?!やっと来たのね!」
おんやぁ?誰かに呼ばれたかと思ったら、噴水から人さ掻き分けて……ア、アー、アリアちゃんがやってきただぁ。
「もぅ、ずーーっと待ってたのよ?これでイベントが進められるわ!!」
私の手さアリアちゃんの両手が包み、ブンブンと振ってくる。
アリアちゃんは、そのまま私を引っ張って噴水の前で仁王立ちをした。
「さぁ!私を噴水に落としなさいっ!!」
「はぁっ?」
またこの娘は突拍子もない事を言うなぁ!
「まだ肌寒いけん、泳ぐにはちぃっと早いらぁ。」
いくらぽかぽか陽気でも、風邪ぇひいちまうさぁ。
「うるさい!良いの!!あんたに噴水に落とされないとイベントが発生しないの!!あんたをずっとずっとず〜〜っと待ってたんだから!!」
「あのお姉ちゃん、1週間位毎日ここで歌ってるんだよ。だから僕今日も聴きに来たんだ。すっごい上手なんだよ!!」
きー坊のの言葉に周りの皆も頷いている。
周りの人達は皆アリアちゃんの歌を聴きに来た観客なんだねぇ。
「私も聴きたいさぁ!」
よく見ると地面に置かれた帽子に、お金がえーかん入ってる。
これだけお客さんが聴きに来るって事は、アリアちゃんの歌が素晴らしいって事さぁ!
「えっ?そう?しょうがないなぁ……って!違う!早く私を噴水に落としなさいよ!!」
一瞬照れた様子のアリアちゃんだったけん、また噴水に落とせって言ってきた。
「カルディナがそんな事するわけないだろ。」
私とアリアちゃんの間に割って入ったんはナザル坊だぁ。
「ナザル様もいらしてたんですね!でもごめんなさい。今日のお目当てはナザル様じゃないの。」
ナザル坊の顔を見て満面の笑みを浮かべたアリアちゃんだったが、すぐに申し訳なさそうな顔をした。
「はぁ?」
「そんな残念そうな顔をしないで下さい。その代わり次のイベントはナザル様のイベントを発生させますね?」
困惑するナザル坊に、アリアちゃんはとびきりの笑顔を向ける。
「って、ナザル様ってば白いスーツなんて着て……もしかしてデートなの?」
アリアちゃんは笑顔だったかと思えば眉さ寄せたり。表情がくるくる変わって可愛いさぁ。
「あぁ、そうさぁ!私達は新しい湯呑みさ買いに行く途中なんだぁ。ぽかぽか陽気に誘われて、公園に立ち寄ったんさぁ。」
おときさんが婚約者同士が2人で出掛ければデートって言ってたけん。
「それでナザル様の瞳の色のワンピースなんて着ちゃってんのね!!私はナザル様のものよアピール?うざっ!!」
ナザル坊の瞳の色のワンピース?
思わず自分が着てるワンピースと顔を赤くしてるナザル坊瞳を見比べちまったさぁ。
「本当さぁ!アリアちゃんはよう気ぃ付くなぁ?」
綺麗な空色だぁって思っとったけん、ナザル坊の瞳の色だったかぁ。
「それだけナザル様の色を主張しといて気が付いてなかったの?逆に驚きよ!!まぁ良いわ。さぁ!私を噴水に落としなさい!!」
改めてビシッと言い放つアリアちゃんは、よく舌の回る娘だぁ。
それにしてもそんなに泳ぎたいんかいねぇ?
「そんなに噴水で泳ぎたいなら私っち来るけぇ?温泉みたいに広い風呂あるけん、泳げるでぇ?」
風呂好きな私の為に作ってくれた自慢のお風呂さぁ!
「あんたの家行ったって……そう言えばカルディナのお兄さんも攻略対象だったわね。」
アリアちゃんは小声でぼそぼそ言いながら何かを考えてる。
「今度あんたの家に行くわ。でも、今日は私を噴水に落としな……。」
「遊びに来てくれるんかい?嬉しいさぁ!いつにすっかぁ?」
アリアちゃんさ私っち遊びに来るさぁ!
ナザル坊以外の学校の友達は、セッちゃんしか遊びに来た事がなかったさぁ。
「あの…ちょっと早く私を噴水に…。」
「茶菓子用意して待っとるけ。楽しみにしとるさぁ!!」
甘いのが良いかぁ?
しょっぱいもんが良いかぁ?
「へぇ、楽しそうな話をしているね?」
私がウキウキ考え事さしてるたら、誰かが話に入ってきた。
「あなたは!この国の王太子にして、女生徒の選ぶ結婚したい人ランキング1位、女性よりお美しい顔ランキング1位など!女生徒の女生徒による女生徒のためのランキングの1位を総ナメする美貌のリュカ王子様!!」
「大層な紹介をありがとう。」
興奮するアリアちゃんに笑顔で返す王子様はさすがだぁ。
「マックイーン嬢。曾祖父から、君の家の茶菓子が美味しいと聞いていてね。是非オレも招待して欲しい。」
王子様のひいおじいちゃん……。
「リュカ王子はシャインデル校長先生の曾孫だ。」
ナザル坊がコソッと教えてくれただぁ。
「あぁ!シンさんの!!」
王子様はシンさんの曾孫さんかい!
なら大歓迎だぁ!
「シンさんは私の大事な茶飲み友達さぁ!今度ゲートボールする約束もしててなぁ。王子様もどうだぁ?」
シンさんとマサさんとゲンさんと約束してるけん、ゲートボールは5人で1チームで1人足りないんだぁ。
今度ゲンさん主催でゲートボール大会もあるんさぁ。
「オレがゲートボールをするのかい?面白い事言うね。」
ありゃりゃ、若い子はゲートボールに興味ないかのぅ。
「わかった。大お祖父様と一緒に参加させてもらうよ。でもその前に君の家でのお茶会が先かな?」
「わかっただ。ナザル坊も来るらぁ?」
無言で頷くナザル坊。セッちゃんも招待するさぁ!
「それでは失礼するよ。招待状、待ってる。」
王子様は去って行く姿も気品があって王子様みたいに見えるだぁ!
「噴水に落とされてないけど……イベント成功?なの?」
「相変わらず掴めない王子だ。」
ぽかんとするアリアちゃんと、険しい顔をするナザル坊。
「アリアちゃん、招待状を送るなぁ!」
貴族のお茶会ってのは招待状を送る事から始まるさぁ!
「ナザル坊、そろそろ湯呑みさ買いに行くかぁ。」
今までナザル坊が使ってた湯呑みは、お客様用の湯呑みだったさぁ。これから買う湯呑みはナザル坊専用の湯呑みだぁ。
お茶会にゲートボール。
楽しい事がいっぱいあって嬉しいさぁ!
評価&ブックマーク&いいねをありがとうございます♪