ストライプ
今回の主人公は猫シリーズタンポポの
お兄さんですが、
単品で読んでも大丈夫だと思います。
軽く楽しんでいただけると嬉しいです。
R15は念のためです。
よろしくお願いします。
俺は女神に会った。
さっきまで一緒だったんだ。
まだ夜の気配が残るなか丸くなって寝転ぶ弟の背にドスンと頭を乗せて、嫌がるのにも構わず体重をかける。熱に浮かされた様に何度目かの言葉を発した。
少し前に夜遊びを覚えた俺は昨夜もお姉さん達に会いに行くべく、いそいそと夜道を歩いていた。
アルコールの匂いと喧騒の中お姉さんの声を辿っていたら、汚泥に凛と咲く花の様に佇む女神を見つけたのだ。
小さな頭に華奢でスレンダーな身体、切れ長の瞳にはすっとアイラインが引かれていて、彼女がこちらを流し見た瞬間、俺の背に電流が走った。
絶対逃がしたくない。
強く思った俺は距離を計りつつなるべく優しい顔をして声を掛ける。
大柄で怖がられ易いのは自覚しているからこそ、女子供相手には日頃からなるべく気を遣って接していた。
子供達に怖がられないよう穏和な表情で軽妙に軽口を叩く。お姉さん達との恋の駆け引きで培われた経験すらも、すべてこの瞬間のためだったのだ。
その成果を今こそ存分に発揮するのだと自分を鼓舞する。
花が開き切る寸前のアンバランスさを湛えて、ツンとすます横顔に、うっとりと目を細めてご機嫌を伺う。俺の言葉に、彼女が微かに唇を上げたのを見つけただけで有頂天になった。
俺ってチョロいなと内心苦笑しつつ、彼女に思いつく限りの美辞麗句を捧げた。
今まで見かけたことがないだけあって、男から口説かれ慣れて無いらしく、ちょっと狼狽えたりするところがとても可愛い。凄く綺麗だけど、意外と言動が可愛いくて、そのギャップに悶えそうになった。
他の奴に捕まる前に出会えた幸運に最大の感謝をしよう。
ギリギリ嫌がられない程度まで距離を詰め、ナイト気取りで周りの男共を牽制しつつ夜の街を歩いた。
煩そうにしながらも時々小さく笑ってくれたのを励みにして、強引に次の約束を取り付けたけど、彼女は来てくれるだろうか。
名前も寝床も教えて貰えなかったし、来てくれない可能性は高い。そうと頭では分かってても凹みそうだ。
でも最後に別れた場所から彼女のテリトリーは推測がつく。後はネットワークを駆使すれば何とかなるだろう。まずは[アレ]を攻略しないと使えないし簡単なことではないが、彼女のためなら何だってやってやる。
そして手に入れたら囲い込んでどろどろに甘やかすのだ。
絶対、逃がさない。
そんなことを考えてニマニマしていると、俺の頭の下で嫌気がさしていたらしい弟が一発パンチを喰らわせてきたのを切っ掛けにして、取っ組み合いが始まったのだった。
ストーカーもヤンデレ化も予定は無いですが、ちょっと心配なお兄さん(笑)
読んでいただきありがとうございました。