2ページ,王と対面
「へ?」
そんな素っ頓狂な声が出てしまった。
こんな声を出したのはいつぶりだろうか。
「いや、少し事情を聴きたいので王国に来てもらいたいかと……」
「ああ……はい。分かりました」
なにを言い訳をしても無駄だろう。王国というのはそういうとこだ。だからおとなしくついていくしかない。
残念そうにトボトボ歩く。道中で喋る事はない。あったとしても速攻で話を終わらせる。あまり自分のことは晒したくない。
この聖騎士団長には俺は関わりづらい人だと思われてるだろう。
そうこうしている内に、以外にも早く王国に着いた。ざっと30分くらいか。うん。だいぶ早い。
古くなった王国の門を潜ろうとうすると門番が僕の事を止めた。まあ当然だろうな。
「身分を証明できるものはありますか?」とでも言おうと思ったのか。でも聖騎士団を見るなり「申し訳ありません」と言い俺を離した。
いやー便利だな。聖騎士団って。だって身分証が無くてもこうやって通してくれるんだから。
さて、と門を潜ろう。
僕が門を潜ると中世的な建物から一気に近未来の都市に姿が変わる。背の高いビルが連なり美形としたデザインの建物も出てくる。心なしか、無表情だった住人も、今では少し笑顔になっている気がする。
ふとさっきの門はどうなっているのか後ろを振り返る。
するとさっきまであった古びた門もすごいキラびやかな近未来の門に変わってた。
これってあれか。都市全体を幻覚聖法でまだ発展途上国みたいにしているということか。しかも、都市全体を拡張聖法で普通の土地を2倍に広げているのか。そして門を潜った者のみ聖法が解かされるってわけか。にしてもこの規模でこの高度な聖法、普通なら聖力が持たないだろう。きっとなにかの神代技術物を使っているのだろう。
こういう、都市全体を聖法で包んでいる国は何国かあると知っていたが、全部が全部、都市を変える方法が違う。僕は、このやり方は初めて知った。
「流石、クライシス殿ですな。この構造をすぐに理解できるとは」
横にいた聖騎士団長のカムトリエさんが言った。多分【スキル】〈読心術〉でもやったのだろう。〈読心術〉は言葉の通り心を読むスキルだ。
といってもカムトリエさんでも、俺の断面的な心情だけで内面は見えてないだろう。もしかしたら内面を見えていたとしても、あやふやしか分からないだろう。ちなみに名前はこっそり鑑定して見ちゃった。
「……こんなにすごい聖法技術は初めて見ましたよ。正直驚きました」
今言ったことはちょっと嘘だ。これは、凄い技術だが、俺はこれより凄い技術をしている奴を知っている。でもまあ人間じゃないから数える内には入らないか。
「いえ、たしかにこういう幻覚や拡張聖法などは技術的には進んでますが、攻撃などはあまり……」
──聖法は魔法と真逆の存在だ。魔物や魔族などは攻撃制の高い魔法を使うのにたいして聖法は人族や亜人族が使う。主に守備特化型だ。なぜ、そうなのかと言うと、宗教の問題だ。人族などが慕う神は攻撃をあまり使わない奴だ。しかもどっちかというと、守備などで自分や相手を守る奴だ。無駄な殺生はしたくないとか言っていた。僕にはよく分からない考えだ。
逆に魔族などが使う魔法は、攻撃こそ至上の神を慕っている。私はあいつが苦手だ。力ばっかりでそれ以外は興味がない。
あいつの唯一の妻だって構ってもらえなくて堂々と不倫していた。あいつはそのことに気づいていても、そのことを後回しに、力を探求していた。
……あいつとは友達とは呼べるか分からなかったが、力を探求する以外では良い奴だった。もう何核年になるかな。多分もう代替わりされているだろう。
「クライシス殿、王宮に着きましたぞ」
そんな昔のことを思い出してたら、王宮に着いた。
そういえばカムトリエさんの鎧が違う。というより聖騎士全体の鎧が違う。凄い着心地がよさそうな鎧だ。普通に私服として着てても良さそう。
まあそんなことは後にして、俺は、王宮の門を潜った。今度は門番になにもいわれなかった。よかった。まあ横にカムトリエさんがいるからですね。
すると門番の奥にいた使用人みたいな人が王宮の扉を開けた。この門を開けるだけで相当なマッスルが必要なはずだ。どうやら相当な手練れのようだ。それに全然、隙がない。流石、王宮の人だな。
俺はペコッと一回お辞儀をして王宮に入った。彼は、いえいえと言わんばかりの笑顔で返した。どうやら優しい人らしい。この人は幸せになれればいいな。
王宮の中に入ると───そこはもう凄いよ。うん。皆、王宮って想像してみ?その2倍凄いから。ていうか豪華すぎて語彙が消えちゃう。とりあえず今、言えることは絶対、金使ってる。うん。
しばらく歩き回ったら王室という部屋についた。これカムトリエさんと一緒に付いていかないと迷子になるやつだ。というよりカムトリエさんこ、この構造覚えとるんか?
いや普通に考えたらすげえぞ。
おっとまたこうやって考えごとしてたらまた迷惑しそうだ。さっさと王室に入ろう。
カムトリエさんに目線ではいっていいか聞くと頷いてくれたので俺は手をかざした。するとドアが勝手に開く。これは手自動ドアという手をかざすと開くというドアだ。
まだ、こんなのが残ってたとはな。
ドアを開けると、長い赤いカーっぺトが敷かれていて横には貴族らしき豪華な服を着た者たちが私の顔を見るなり騒ぎ始めた。
懐かしいな。
そして私の真正面に居る王様っぽい人が「静まれ。」というと皆の口が閉ざされた。
間違いない。これは王族限定のスキルだ。
スキルというのは血族にも、関係する。はるか昔、ここを統治した始祖の王が持っていた〈強者の絶対権利〉が王になったことをきっかけにスキルが特殊進化し、〈帝王の絶対支配〉に名前とスキルの権能、さらに特殊スキルへと変化した。
特殊進化とは、普通の人が貴族や王になった時、神がその功績を称え『世界の管理者』に申請する。その申請が認められたらランダムで自分の持ってるスキルが一つ、運が良ければ二つ特殊進化がされる。
ここの王だとこんな感じ。
〈強者の絶対権利〉
権能:自分の全ステータスが相手の全ステータスを上回ったら相手を自分の思い通りにできる。
↓特殊進化
〈帝王の絶対支配〉
権能:自分が相手より上だと思ったら、相手を支配できる。(例外あり)
特殊効果:血族継承[血筋の長男にスキルが継承される。]
このスキルのおかげで代々この国の王族は威厳を保ってきた。
おおっと考えすぎた。なんか王の側近の人が長々色んなことを言ってんな。えーとなになに?ふんふん、めっちゃ簡単に言うと「あなたは物凄い業績を残しました。だけど、どうやってブルーワイバーンを瞬殺したのですか。」ていう感じだな。
うーん。わかりやすい!
えーとなんて答えよう。そうだなあ。
少し考えて出た考えが───
「パンチです」
簡潔に答えた。こんなん真面目に長々変な文章を言い連ねるなら簡潔に答えてさっさとこんなことなんか終わらせたほうがいい。
「えーと、もう少し詳しく説明していただけると……」
側近の方が言いにくそうに答える。
え?まじ?そーだなー
「えーとブルーワイバーンの上に転移してブルーワイバーンに向かって頭をワンパンチしました」
「……」
側近の人が額に手を当て呆れている。
僕、たださっきより細かく答えただけなんだけどなー
側近の人が呆れていると、王様が随分と豪華な椅子から立ち、腰に手を当てる。
そして────
「ワハッハッハ!!」
なんとも豪快に笑い始めた。なんだ?俺の話がやばすぎて笑っちまったのか?
「なんとも愉快な奴よのう!」
どうやら違ったみたいだ。よかった。
金髪の髭に手を当て、疑問の顔がでるがニコッとし、王は言う。
「どれ。お主は女子かの?それとも、もしや男か?!」
一つ冗談を言ったつもりだろう。────だが、その話は俺にとってはタブーだ。
「いいや。違う。────それと、その話はあまりしないでいただきたい」
俺は、俺にとってはだいぶ手加減をした覇気をその場で放った。
クライシスの一人称はクライシスの気分次第で変わります。誤字脱字ではありません。