20ページ,<法>
物怖じもせずに勇者はその場に堂々と立って問う。
「いつから、勇者が魔剣を持ってはいけない、と、そんな世の中になったんだい?」
その手に持っている魔剣の裏表に見ると、こちらに向かってニコリと笑う。
元々、勇者というのは『聖』の代表格だ。
そして、聖は魔に有効であると同時に魔は聖に有効だ。
つまり、聖の代表格である勇者が魔剣を持つということは自殺行為に等しいのだ。
魂というのは例外はあるものの、殆どの者が『色』に染まっている。そして勇者は聖色に染まっている。
そこに魔剣という魔色に染まっている魂をもつのは己の魂を削るのと同義。
だから、結果として勇者は少なくとも魔剣を持つことができない。
「不思議そうな顔をしているね。そんな顔ができたのかが僕にとって驚きだよ」
再びニヤリと笑うが、その笑みはさっきと違って嗜虐的だ。
こういう性格なのか?だとしたら人に褒められるような性格じゃないな。
「スキルを使ってみなよ」
とことんコイツはうざったらしいな。
「どんだけ俺の力を出し切らせるつもりだ?」
その俺の問いにケーラはニコリと笑みで答えるだけ。
コイツ相手にあまりスキルは使いたくないな。
しかたない。今回は《刻印能力》を使うか。《刻印能力》ならどんな力なのか分かりにくい。
だとしたら、なんの《刻印能力》を使おうか?
ケーラはずっとニコニコしていて余裕の表情だ。
ぜってえその顔ぐっちゃぐっちゃのぼっこぼこのめっためたにしてやるからな!
よーし決めた。もう、これだろう。これならアイツの表情を崩せるな。
「《刻印能力》《血闘接触悪夢》」
俺は血をドバドバと大量に流し、それを自分の手足として操る。
血は、素早いスピードでケーラを囲む。紅い血はケーラを囲むと同時に漆黒の血となる。
「悪夢に染まれ」
この技は、血を触ると自分のトラウマを思い出させ、悪夢としてださせる。
勇者は頭を押さえ「くッ……!アッ……ウア……!アアアアアアアアアア‼‼‼」と叫びだした。
よしっ!成功した。この技は使い勝手が悪いからあまりだせないんだよなあ。
「カハッ!ゴホッ!……ハアハア」
夢が覚めたので、その間に息が出来なかった分の空気を取り込ませる。
「気分はどうだ?」
俺がそう問うとケーラは苦渋の顔をこちらに見させる。
「……最悪だね」
「そりゃあどうも。で?まだ戦うか?」
「いーや。もういいよ。十分に君の実力が分かった。それにこっちはまだやることがあるからね」
何処に行く気だ?一昨日は今日は予定がないとか言っていなかったか?
「じゃあね。また、会うことがあったら」
「おいっ待てッ」
そう呼びかけたが時すでに遅し。ケーラは『転移』の聖法陣を描いていた。
俺が慌ててケーラの方に駆けていくと『転移』が発動された。
「逃げられたか」
あいつには、わからない所がたくさんあるから聞きたかったのに。
まずは、勇者が魔剣を持っている理由だ。いったい何故、純粋な聖色の魂である勇者が、魔色の魂を持つ魔剣を持つことができるのか。
そして、もう一つ。さっき『転移』の聖法陣の詳細を覗いてみたがケーラが転移する場所は……確か、トイツァラン帝国と言われていた所だったか。
何故、そこへ行く用事があるのか。
他にも聞きたいことがあるが、まあだいたいそのくらいだろう。
さて、他に用事がないわけだが、どうしようか。
一回、キャルの家に戻るか。アイツの聖力はとてつもない。
勇者なのだから、それは当たり前のことなんだが。
じゃあキャルの家に戻るついでに<法>とはなんなのか。それを解き明かそうか?
それには、まず<法>について語る前に、<マナ>について言おう。
まあそのマナだが、この星に無数に存在する。簡単に言えば空気中に含まれる窒素みたいなものだ。
そんなに高く含有しているわけでもないが、だが存在している。
そしてマナにも色んなマナがある。聖マナや魔マナ、稀に剣マナというものもある。その全部、含めてマナという。
マナは、この空間にあるだけでもなく、血液中に存在している。
だが、二つの対になるマナは、一人の体の中に存在できない。
簡単な例としては聖マナと魔マナは対になるマナだから一つの体の中に存在できないという感じだ。
と、そんなマナ達なんですがなんと変化するのです。
マナは一カ所に集約されると<力>へと変化される。
聖マナは聖力。魔マナは魔力へと変化される。ちなみに剣マナは剣氣へと変化される。
さて、ここからようやく<法>の説明だ。まず<法>を使うために必需となるのが陣だ。
これがなければ<法>が発動されない。その陣なのだが、描くためには<力>を使う。
そして陣は緻密な計算などの数学要素が含まれる。
一番簡単な魔法と言えば『小火炎球弾』なわけなのだが描く陣も出力される魔力も簡単で少ない。
だが、『小火炎球弾』の陣を描き、聖力を流してもなにも起こらずに陣が崩壊される。
魔法陣が聖力に拒絶反応してしまうため崩壊してしまう。このことを『陣崩壊』ともいう。
それと、<法>にも属性がある。まず定番の四大属性。『火属性』『水属性』『風属性』『土属性』。他には四大属性の進化版。上級属性、『炎属性』『氷属性』『嵐属性』『地属性』『熱属性』『温度属性』『雷属性』。それ以外だと特殊属性がある。『時空間属性』『重力属性』『毒属性』などがあげられる。
そして魔法や聖法に特化した属性が存在する。珍しいところになると、魔法は『魔属性』『滅属性』聖法だと『聖属性』『点属性』などがある。
あと、<力>は<法>を凌駕することがある。例えば、魔力だけを固めた魔力弾は強く練れば練るほど普通の魔法よりも強くなる。
他にも、初級魔法の『小火炎球弾』は強く練れば中級魔法の『業炎火鋭利矢』よりも強く、硬くなる。
そして、最後に。<法>は才能が一番強いのだが、これも努力次第で解決できる。
といっても天賦の才に追いつく努力はとてつもない時間を浪費するがな。
と、改めてまとめてみていたら、キャル宅に着く。
さて、と。キャルの家に着いたので入るとしますか。家に荷物おきっぱなの忘れてたなのついさっき思い出したからな。
ギイィと少し年期が入った重いドアを開ける。すると───
「おかえりなさあい!。あなたがクーちゃんね!お話は聞いてるの!さあさあ家に入って!」
……どちらさまです?
帰ってきて待ち受けるのは母親(ハイテンション女性)




