1ページ,最強の存在、顕現。
───一日目?、迷宮の奈落の最下層───
……迷宮の奈落の底のさらに底。あったとさえ言われることのない人類未開拓地に……
『それ』は純粋な白郡色の目を開ける。
『それ』が待ってたのは古代龍神獣や氷麗狼神獣などの一匹いるだけで国が一個たやすく滅ぶ滅亡級の魔物が視界いっぱいにいる。
魔物たちは『それ』を見るや否や一気に襲ってくる。普通であれば、こんなのはもう、絶望で殺されることだろう。残酷に。
だが──
───フッ───
微かにしたであろう音と共に今さっきいた魔物は消えていた。目を凝らせば魔物の塵が見えるか見えないか、だ。
「……」
滅亡級の魔物を一掃したという生き物離れした偉業を成し遂げたにもかかわらず、そんなことは気にしないように『それ』は自分のサラサラした真っ白の髪を触り、これから邪魔になると思い掌の上に『鎌風切』の魔法陣を描き魔力を込め……髪の毛の近くに放った。
髪の毛はズドン!!!!!!!!という重い音を鳴らし地面に沈んだ。一体、髪の毛だけで何tあるのだか。
『それ』の髪型はさっきよりも随分とボーイッシュになったが、顔が美少女なので女なのか男なのか分からない。
「……〈召喚〉《トアノレス》……〚複製〛〚服一式状態〛……」
さらに『それ』の唱えた召喚魔法で『それ』の全裸だった身なりが整えられてくる。
「……ステータスオープン」
『それ』は特殊な言葉を唱える。世界は『それ』の言葉に答え、目の前に青いプレート板が出てくる。『それ』は時間があるのままステータスプレートをいじり、本来書かれていたステータスプレートが書き換えられてゆく。
***
───16分後───
書き終わったステータスプレートは半透明に青々と『それ』の目の前に浮遊している。
「ステータス〈スキル〉表示」
淡々とステータスプレートは『それ』の言われるがままに変化し、そこにはこのように刻まれていた───
***
〈武術〉Lv6 〈聖魔術〉Lv4
***
「……」
『それ』はしばらくステータスを眺め、やがて眺めるのが飽きたのかステータスプレートはシュンとその場から忽然と消えた。
『それ』はその場から動かなくなりボケーっとしているとなにかを感じ取ったのか足元に『転移』の魔法陣を描きその場から消え去った。
***
───一日目、アサレル森林───
私の名は、カムトリエ・オーバーン。カイメルス王国キサラギ聖騎士団長をやっている。最近、我が国の近隣の森、アサレル森林に災害級〈Aランク〉の亜種竜が暴れまくっているという依頼が殺到している。
そのため、我らがキサラギ聖騎士が討伐することになった。
そして、我らは今アサレル森林の入り口の目の前にいる。
私は皆を鼓舞するため、大きな声を張り上げ、言う。
「我ら!キサラギ聖騎士団は!騎士神、ウェグヌブト様の意向にのっとり!悪しき魔物!亜種竜を討伐する!皆よ!心してかかるぞ!」
「「「おおおおおおお!!!」」」
私の呼びかけに皆も声を上げる。
だが───
「グアアアアアアアアアア!!!!!」
亜種竜が咆哮を上げる。
私が後ろを向くとそこに居たのは、群青色の鱗を持った忌まわしき竜が堂々と立っていた。ブルーワイバーンと言われる種だ。……これは、絶望的だ。なにしろ急すぎて軍の態勢も崩れている。そして一番最悪なのはブルーワイバーンが最初に放つ魔法だ。
奴が放つ魔法は『水系最上級魔法』『高圧縮水圧』。私たちが万全の状態で全力で『限界結界』に聖力を込めればなんとか防げる威力だ。しかも『限界結界』は発動に最速で3秒だ。それに比べ『高圧縮水圧』は発動に遅くて2秒だ。どう足掻いても無理だ。
『不可能』そんな言葉が頭を埋め尽くす。しかし、私は聖騎士団長だ。最後まで諦めてはならない。
ギリギリまで引き付け【スキル】〈パリィ〉で『高圧縮水圧』を跳ね返すつもりだ。
〈パリィ〉は自分の技量次第だが、だいたい相手の攻撃を70%カットし、30%相手に跳ね返す。まあ、そんなことで『高圧縮水圧』を耐えれるかといったら無理なわけなのだが。しかし、ここで相手共々道連れにしなければ私達の誇りが立たない。
私はすぐさま剣を抜く。ワイバーンの魔法が出てくる口をよく見る。一瞬だ。
たった一瞬で勝負が決まる。殺すか。殺されるか。
皆も、私が剣を抜いたことで察しがついたのだろう。覚悟の目をしている。
私は、目を瞑り感覚を研ぎ澄ます。目を開けていったってどうせ見えない。無駄だ。
この間、実に1秒。
さあ、準備は整った。いつ来る……
そう思ったその刹那。
放った!そう直感した。そして目を開け〈パリィ〉を発動させ……
────────────────ン!!!!!!!!!
凄い勢いの風が聖騎士団たちを襲う。
何が起きた?それが率直な意見だった。
皆、個人で『限界結界』を発動させ、風を凌ぐ。だが、皆も私と同じに何が起きたのか分からない顔をしていた。
やがて風が晴れ、そこには一人の……子供が立っていた。
誰だ?と混乱したが、ここは聖騎士団長として冷静を装う。
「そ、そなたは、だれだ?」
冷静を装ったがやはり、動揺が紛らわせない。声が震える。だが、そんなことは関係もなしに目の前にいる人は淡々という。
「……クライシス。今はそう呼んでくれて構わない……と思う」
今は?仮の名前ということか?いや、そんなことを考えていても埒が明かない。
取り敢えず、再度質問を投げる。
「ブルーワイバーンは───」
「ブルーワイバーンはもう殺った」
心でも読めるのか、私の質問が終わる前にクライシス殿は答えた。
「や、殺った?」
「うん。話はそれだけ?じゃあね」
「ま、待ってくれ!」
クライシス殿がどこか行こうとするが、私は止める。
クライシス殿はゆっくりとこちらを振り向く。
そんなクライシス殿に私は言葉を発す。
「わ、私たちと、一緒に王国へ来てくれないか?」
「へ?」
クライシス殿はそんな予想もしない素っ頓狂な声を出した……
ガキだからうまい表現が書けない。