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霧雨部隊  作者: みねひよ
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第一章

それは幸福ともいうべき一閃の光。これは幸せという呪縛に囚われた1人の少年の物語である。


目が覚めた、それは自分にとってはとても重要なことに思えた。 まだはっきりとは開かない瞼、乾いた呼吸、低速な心拍。

ただそれだけのことがひどく主張している。

日は暮れていた。

「着いたわよ、結人。」

僕は喫茶店の前に立っていた。

今まで歩いていたはずだ、なのに…なぜ…。

「どうかしたの…?」

「いやなんでもない…ちょっと寝ぼけてるだけだ。」

「いい?歩きながら説明したけど、あなたは今危険な状況にさらされている。危機感をもって慎重に行動をして欲しいの」

「その危険な状況ってのがいまいちわからないんだが」

「それについては着いたら話すわ」

そういわれては聞くにも聞けない。


多くの古民家がある住宅街を歩いた。

「ここよ」

示された先はカフェのようなお店、いや紛れもなく喫茶店であった。

店内に入ると一人の老人が座っていた。

軍服に勲章をつけて、いかにも自分は軍人だと言わんばかり。

「例の人物とは君のことかね」

唐突に喋りだす老人。

「いや気にしないでくれたまえ、なんせ君は貴重な人間なのだからな」

「少将、彼にご説明をお願いします」

老人は咳払いをして、話し出した。

「私は臣義というものだ。君はじつに災難だった」

本当にその通りだ。

「だがこの場において重要な話しはそのことではない」

「コンビニ強盗についての事情聴取じゃないのか?」

それ以上に重要なことなどあろうか。

「たかが事情聴取に軍が介入するとでも思うのかね、天沖から軽い説明があったはずだが」


ふと一節を思い出す

「あなたはただ普通のコンビニ強盗に出くわした、ただ問題はそこではないわ。問題はあなたが川に落ちたあとよ。」


「たしか川に落ちたあとが問題だと…」

「その通りだ。君は川に落ちたあとどうなった?」

「そのお姉さんに助けられ…たような…」

「やはりそこの意識は曖昧のようですね」

天沖が口を挟んだ。

「私があなたに人口呼吸をしたのですよ」

「人口呼吸か…、え?人口呼吸!?」

慌てふためく思春期男子。

「それってキスってことでは…」

「ち、違うの!あくまでも人命救助のためよ!」

「そ、そうですよね、人命救助ですよね…」

ちょっとだけしょんぼりした結人。

「で、それのなにが問題なんですか…、まさか責任を取って結婚しろとでも…」

「だから人命救助って言ってるじゃない!」

「じゃあなぜいったい」

「ただの人命救助ではなかったの」

ただの人命救助ではない…?

臣義が話を戻す

「君は出血が激しく傷が塞がらなければ間違いなく死んでいた、だがどうだ今の君は健康そのものではないか」

「止血の治療でもしたということですかね」

「いや人工呼吸をしただけだ」

…?

「え?」


「君はすでに常人の身体ではない」


常人ではない…?どういうことだ。

「銃弾が貫通した足が一晩で治ると思ってるのかね」

言われてみれば。

「じゃあ俺の身体は一体どうなったんだっていうんだ」

「彼女、正確には天沖春香。彼女と同じ身体になってしまっていると言うことだ」

理解が追い付かない。

「同じ身体と言っても我々は未だに解明できていない。言うなれば異能力というやつだろう。漫画やテレビなんかで出てくるような派手な特殊能力ではないがな。自然治癒のスピードが異常に早いということだ。まったくもってうらやましいことだ」

「それならあんたも、その…き、キスをすればいいじゃないか」

「それができないのだよ。「適正」がないとね」

「…適正?」

「適正がないものが彼女と粘膜接触する死ぬのだよ」

死ぬ…だと?

「じゃあなぜ俺に接触をさせたんだ…」

天沖という女性が語りだした。

「あの出血量なら間違いなく死んでたの。だから私は一か八かの賭けにでたのよ、そしてあなたは生き残った。それが間違ってるとは思ってはいないわ」

天沖は冷静に答えた。

「一か八かって…」

「そこは感謝したまえ。軍事実験も行ったんだがな、誰一人として生き残ったものはいなかった。つまり君は優秀なモルモットになったんだよ」

「少将、言い方を考えてください」

「これはこれはすまなかった。要は君は軍にとって重要な人間になったということだ」

「それでどうするつもりだ。監禁でもして実験でもするのか」

「いや、一人の兵士として働いて貰う」

「兵士だと!?第一俺はまだ学生で…」

「もちろん基礎訓練から始めて学業も駐屯地で受けて貰う。給料もしっかりと払おう」

「誰かを殺すなんて俺にはできない、話しはこれまでは帰らせてもらう」



「君の家族はなぜ亡くなったと思う?」


戸にかけようとした手が止まった。

「君の能力が、五年前の政府襲撃事件に関わっていたとしたら?」

心臓が激しく鼓動する音が聞こえた。

「どういう意味だ」

「あれは実験のためだけの事件だったのだ」

「少将!それ以上は」

制止する天沖に臣義は手で止めた。

「当時から軍では研究が行われていたがまだ実証段階ではなかったのだ。そこでちょうど政府襲撃事件がおきた。軍内部でその研究を実践しようとしたのだ」

「その話は本当か…?」

「極秘情報だ。だが実験は失敗した、そして大量の犠牲者がでた」

結人は振り向いた。その顔は怒りに満ちていた。

「そしてまたそれを得ようとするものが現れた。どうかね、君の手で終止符を打つつもりはないかね」

「いいだろう、あんたの口車に乗ってやる。これ以上家族を失うわけにはいかない、そしてそのテロリストと軍もどちらも許せない。確実に俺がとめてやる!」

その目は怒りに満ちた目だった。

「いい顔をするな、天沖、彼を自宅まで連れて帰ってくれ。そして後日駐屯所へ彼を派遣してやってくれ」

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