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惚気

 さまざなコミュニティひしめき合う教室の中、俺はスマホを眺めてはため息をつく。

 結論から言うと、ラインを送ったあの日の夜、結城さんからの返事は来なかった。

 既読が着くこともなく、悶々としながらスマホを見ては時折送られてくる友ちゃんからのしょうもない惚気ラインに『爆発してください』と返すだけの夜で、全く不毛でした。

 まあ、こっちは一週間待たせた訳で、仕方ないわけで、って北のなんたらみたいな感じになってしまった。

 返事よ、ルールルルー。……何やってんだろ俺。

 結城さんも待っている時、こんなだったのかな。

 申し訳ないと思いつつも、自分と同じ思いだったら嬉しいなと思う。

 もしかしたら、俺と同じで返事で悩んでたりして。

 慌ててる結城さんを想像してみると、可愛い。

 やばいニヤニヤが止まらない。


 「優ちゃんキモイ」


 友ちゃんがなんか言ってるが今の俺には効かない。


 「ついにおかしくなったか」

 「なってねえよ」


 ある意味正常です。


 「結城さんからのラインか? 相原からのラインか?」

 「両方ともハズレ」


 両方とも、ラインは来ていない。


 「……エロ画像か。俺にも見せろ」

 「ちっげえよ! 見てねえよ!

 てか、木崎さんに報告するぞ」

 急に慌て始める友ちゃん。

 たしか木崎さんエロに厳しかったんだっけか。


 「やめていただけますでしょうか。まじで終わる」


 こいつ尻に敷かれるタイプだな。

 木崎さんもおしとやかに見えてなかなかアレですね。


 「つか、何もない画面見てるとかただの変態だろ」


 全くおっしゃる通り。


 「なになに? 天野君がどうしたの?」


 突然話に入ってくる木崎さん。


 「なんか優ちゃんが真っ暗なスマホの画面を見つめてニヤニヤしててな」

 「そうなんだ。何かあったの?」


 まあ、当然そう聞きますよね。

 


 「逆なんだよね。何もないのさ。

 結城さんから返事が来ないだよね。怒ってるのかな」


 木崎さんはふふっと優しく微笑む。


 「多分それは、ね。内緒です」


 なんだろう子供の悪戯をするときみたいな感じ。さてはなんか企んでるな。


 「ええ、なんだよ。教えてよ」

 「ダメです。内緒」

 「そうだ内緒だ。一週間送らなかった罰だぜ」


 木崎さんはともかく、こいつは凄い腹立つ。

 お前も知らないだろ、とつっこんでやろうかと思ったが、ここは性格悪く潰しにいってやろう。


 「ねえ木崎さん。さっきこいつエロ画像見せてって言ってきてさ。

 お前には木崎さんがいるだろうって言ったのに聞かなくてさ」

 「お、おい。俺はそんなこと言って、なくはないけど、そこまで言ってねえ!」


 汗の吹き出る友ちゃん。

 全く愉快だ。


 「と、も、く、ん。どういうことかなあ。

 私以外の女の子興味ないっていったのに、最低です」

 「違うんだよあやちゃん。違うんだって……。

 

 俺はあやちゃん一筋だあああああ!」


 …………凄いね。

 あんなに騒がしかった教室内が一瞬で静かになってしまった。

 そして何故か拍手が沸き起こり、皆さん思い思いに祝福と激励の言葉を投げ掛ける。


 ──しあわせにしろよおお

 ──結婚式呼んでねぇぇ

 ──爆発しろ

 ──がんばれよぉぉぉ


 なんか混じってた気がするけど、まあいいか。

 そんなこんなで喧騒の中にいる二人。

 友ちゃんは平気そうだけど、木崎さんはというと、顔を真っ赤にしている。

 流石にキツかったのだろうか。

 そのまま、顔を押さえながら教室の外へと出ていってしまう。

 それを見た友ちゃんは、慌てて木崎さんを追いかけるのだった。

 なんだかんだ、こう言うのって羨ましいかもしれない。別に晒し者になるのがということではないが。


 「なんか良いよねあの二人」

 と、急に話しかけられる。


 「相原さんもそう思う? 」

 「うんちょっと憧れちゃうかな」


 相原さんはそう言うと、なんていうのか女の子の顔、いや、乙女の顔になっていた。

 その後、何故か俺たち二人の間で沈黙が生まれる。

 ……なんだろうこの沈黙。

 相原さんはそれに耐えきれなくなったのか、沈黙を破りにきた。


 「あのさ、お互いの呼び方、変えない?」

 「え?」

 「お互い苗字の君、さん付けって、他人行儀っぽいし」

 思っていたことではあるけれど、いきなり過ぎませんでしょうか。

 「嫌?」


 こっちを上目使いで見てくる相原さん。

 女の子の上目使いってズルいよね。

 そんな姿を見ていると不意に意地悪をしてみたくなった俺は、相原さんの頭にポンと手を乗せて言う。


 「美優」


 想定していなかったのだろう動きが止まる相原さん。

 ………………あれ。

 まだ動かないでいる。


 「あ、あれ? ごめん。冗談のつもりで、怒って、る?」


 プルプルと震えてるのがわかる。

 これは、相当怒ってるに違いない。


 「…………ばかっ!」


 そう言うと、顔を真っ赤にして相原さんは走り去ってしまった。


 一人取り残される俺。

 

 やっぱ、こういうのはイケメンにしか許されないようです。

 今後は気を付けるとしよう、そう心に誓うのであった。


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