彼女の苦悩
私は、自分の部屋のベッドの上で、スマホを眺めていた。
特に、何かを通知するわけでもなく、様々アプリが表示されている画面をただみつめ続ける。
あれから既に一週間がたっていた。
「やっぱり、私なんてダメなの、かな」
普段は明るく振る舞っているものの、根は元々ネガティブなのは間違いない。
頑張ってモテる女の子を演じたつもりなんだけどな、などと考えては自己嫌悪に陥る。
普段であれば、連絡先など渡さない。というより渡せない。
そんなことをしたのは今回が初めてだ。
ましてや、出会ってすぐの男の子に渡すなど、なんて軽い行動だろう。引かれたのかもしれない。
少し目に、湿度を感じた。
「ダメだ。こんなんじゃ絶対。変わらなきゃ!」
決意を胸に、そう口に出すと、スマホの画面を改めて開く。
そして、ラインからいつもの連絡先へと文章を打つ。
『あやちゃん助けて!』
歳下にこんな文章を送るなど情けない気もしたが、この際そんなことはどうでもいい。彼女は頼りになるのだ。
そうして送ると、すぐに既読がつく。
今はお昼休みだったのだろう。タイミングが良かった。
『どうしたの?』
返信を確認すると長めの文章を打ち込む。
きっとこうすれば、あやちゃんはなんとかしてくれるはずだ。
長文を送信するとすぐに既読がつく。
しばらく待っていると、『わかった』と一言かえってきた。
長文に対して、味気ない気もしたが、そんなことより、現状の打破の方が不可欠だ。
『ありがとう』というスタンプを送った。
最近彼女のお気に入りのゆるキャラのスタンプだ。
元気で可愛いのだが、寂しがり屋な犬のキャラクターでどこか自分に似ている気がして、つい購入してしまった。
それ以来、大事な時に使うと密かに決めていて、うまくいきますようにという願掛けをこめている。
「……きっと大丈夫だよね」
そう『結城 薫』は呟くのだった。