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出会いのその後

 あれから、数時間がたった。

 あの後は、特に何もなかった様に時は過ぎ、お互いの帰路についたのである。

 そうして、自分の部屋へと辿りついた俺は、ベッドへとダイブをし、今日一日を振り返る。色々なことがあった気がする。

 フラれて、出会った。

 たったそれだけのはずなのだが、感情はまるで宇宙のはしまで旅行した気分だ。


 「……どうしようかな」


 一枚の紙を見つめる。

 手に隠れてしまうほどの小さな紙。それなのにとても大きなものに見えてしまう存在感だ。

 結城さんからもらった。

 連絡してね、と言われた。

 本来であれば、「よっしゃあ!」と歓喜するところだろう。いや実際には間違いなくしてる。本当に嬉しいのだ。

 それなのに、何故か連絡する気にならない。


 「なんでかな……」


 考えては答えが出ずに自問自答を繰り返し、段々と意識が深い闇の中に落ちていくのであった。




 









 「優ちゃん! 学食行こうぜ」


 友ちゃんが嬉しそうに言った。


 「んん。今日は眠いからいいや。寝る」

 マジかよという顔でこちらを見ている友ちゃん。

 「……どうしたんだよ最近。カラオケ以来変だぞ。なんかあった?」

 「よく見てるな友ちゃん」

 「おいおい。誰が見ても変だぞ。なんか黄昏ているっていうか。あんまり雰囲気変わったもんだから、クラスの女子もなんか噂してたぞ」

 「噂?」

 「フラれたショックで落ち込んでるんじゃないかって」

 マジかよ。広まってるのね。あんまり関係ないけどな。

 「あと一部の女子から陰があって色っぽいってさ」

 「……マジ?」

 「やっといつもの優ちゃんの顔になったな」

 「なんだ冗談かよ」


 期待させんなよ。ちょっと喜んじゃったじゃないか。


 「いやこれはマジだ」


 なん、だと。元気づける冗談じゃない、だと。

 モテ期、来たかなコレ。


 「というわけで学食いこうぜ」


 元気出ただろという顔で再度誘う友ちゃん。

 だが俺は、別にそういうことではないのだ。落ち込んでいるわけではないのだ。


 「いや、今日は辞めとくよ」


 友ちゃんは考える表情をし、少し間の後、こう告げた。


 「わかった。

 ……だが、ちゃんと食べてもらう。購買でなんか買ってくるから、その後なにがあったか話せ」

 「……友ちゃん」

 「親友だろ」


 その言葉に、あの時から止まっていた時間が少し動いた気がした。

 きっと最初から相談すべきだったのだ。

 三人寄れば文殊の知恵と言うしね。二人だけど。


 「三人寄れば文殊の知恵っていうだろ。悩んでるなら相談しろよ。

 ……まあ二人だけど」

 と、全く同じこと言う親友。


 類は友を呼ぶとは言うが、本当にしょうもない。


 「そうだな! 頼むわ。

 奢ってくれるということで、なんにしようかな」

 「お、おい」

 「ゴールデンメロンパンで」

 「い、一番、たけえやつじゃねえかあああああああ」


 そうして不満顔の我が親友は購買へと走って行きましたとさ。

 …………完。





 そんなこんなで親友をパシらせた俺は、特に何もすることなく虚空を見つめていた。

 虚空と言ってもここはあくまで教室。何を見ているわけでもないが、自然に何かを見つめている構図になっているのは間違いない。

 本当に何も見たくない時は窓の外を眺めるのだが、特段何も考えていない今は何でもいいのだ。

 そうしてしばらく親友の帰りを待っていると、不意に声がかかる。


 「あの、天野くん」


 女の子の声だった。

 聞きなれた声。ついこの前まではよく聞いた声だ。


 「ん? どうしたの相原さん」


 俺のレスポンスに少したじろいだ姿を見せ、ポニーテールが揺れる。

 いくら気まずいからって、酷くないだろうか。そっちから話しかけてきたと言うのに。

 そう、彼女は『相原あいはら 美優みゆう』。

 つい先日、俺の告白を断った女の子だ。

 フラれる前はよく話したり、遊びに行ったものだ。と言っても、二人で出掛けたことはなかったのだが。

 こうやって考えると、あんまり仲良くなかった説はある。ずっとお互い名字呼びだし。

 そんなこんなで告白後のやり取りはお互いの気まずさか、ほとんどなかった為、このままどんどん疎遠になっていき、業務連絡くらいになっていくと思っていたのだが。

 まさか彼女の方から声をかけてくるとは予想外だ。

 そんなことを考えていると彼女は勇気を振り絞るような感じで言った。


 「い、今ちょっと良い?」

 「まあ、友ちゃんが戻ってくるまでだったら大丈夫だけど。どうしたの?」

 「あの、勝手かもしれないけど、他の人がいないところに移動しても、いい、かな?」


 え、二人きり、ですか。

 告白でもされるのだろうか。

 まあ、そんなことはないとしても、大事な話なのだろう。

 彼女も顔を真っ赤にして、一生懸命なのがよくわかる。


 「……わかった。いいよ」


 この返事を聞いた彼女はとても嬉しそうだった。

 こんなの断れるわけがない。

 友ちゃんには悪いが待っててもらうとしよう。

 俺は友ちゃんに、ちょっと席はずすから教室でまっててとラインを送っておいた。


 「で、どこ行こっか」


 そういうと、相原さんはついてきてと言い、俺はそれに黙って従う。

 ……まさか、あそこには行かないよね。


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