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最終話

署の島荒らしと疑われたが納得してくれた。

詩織は胸を撫でおろして署を後にした。もう十時を過ぎてしまった。緊張が解れたら小腹が空いてきた。すると後ろから声が掛かる。

「坂本さんちょっと待ってください」

署長と一緒にいた署員のようだ。なにか紙袋を下げている。

「あのなんでしょう? まだ問題でも」

「いやそうじゃありません。かなりの時間を引き留めさせ、お腹が空いているんじゃないかと署長からです。仕出し弁当屋に注文していたそうです。どうぞ良かったら召しあがって下さい」

「え~~署長さんがですか。本当に宜しいのですか」

「いいえいいえ署長はご機嫌で機会があったら遊びに来てくれと。もっとも警察署に遊びに来る人なんていませんが」

「お気持ちに感謝します。署長さんに宜しくお伝えください」

詩織の心を見抜いたように弁当が届けられるとは東京の警察署では考えられない事だ。

詩織はさっそくタクシーでホテルにもどり弁当を広げた。なんと豪華な事かカニにウニまで入っていた。食べ終えて詩織は吉岡の所に電話を入れた。

「もしもし社長さん、夜分遅くすみません。今日は本当に辛い思いをさせました。申し訳なくて、お詫びとお礼を言いたくて」

「なぁにそれが刑事さんの仕事であり役目。俺もあの頃は人も足りなくてよく身元を確かめず雇ったからだ。これからは気をつけないと。それとうちの奴(妻)も分かってくれたよ。偶然とは言え警察官の役目を果たしただけでしょうからと」

「私こそ、奥さまにも社長さんにも辛い思いをさせて。今度お会いする時は……とは言っても何年先になるか分かりませんが、その日を楽しみにしております。ではお元気で」

「ああ、何年でも待っている。もし結婚が決まったら俺を招待してくれるかい」

「ありがとうございます。こんな私でも結婚できるか分かりませんが」

「なぁに刑事さんなら引く手あまたさ。それでは楽しい旅を」


翌朝スマホの呼び出し音が鳴った。池袋北東警察署、署長からである。いきなり怒鳴り声が聞こえてきた。だが詩織には父親に怒鳴られているようにしか聞こえない。その怒鳴り声がなんとも心地いいのだ。

「おい坂本! おまえ謹慎中にも拘わらず北海道くんだりまで行き他所の曙のシマを荒らしたんだってな」

「いいえあの……それはですね」

「ふっふふ良くやった。富良野の署長が褒めていたぞ。出来ればこちらの署に譲ってくれとな。俺は喜んでどうぞどうぞと言ってやったよ」

「そっそんな北海道は観光には良いですが勤務するにはちょっと……」

「そうか俺の所(池袋)に置いて欲しいのか、それなら帰りにカニを買ってこい。いいな」

「しょ! 署長それは少し高いし白い恋人では駄目でしょうか」

署長は高笑いをしながら電話を一方的に切った。

それら四日間、詩織は旅を続けた。その間はもう事件と遭遇しないよう祈った。詩織は呟く。

「私って根っからの警察官なのかしら、謹慎中の旅行でも犯人から勝手に寄ってくる」



池袋の署長から怒鳴られるも褒めてくれた

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