第11話 魔法少女桜の初恋 前編
私の名前は天野 桜
今日から私も高校一年生
中学での雪辱を果たすためにイケメンの彼氏を作ってキラキラな青春高校生活を送ってみせる。
と自分の部屋で声を上げ宣言しているとペットのハムスターが言った。
「あのー、桜さん
あなたには魔法少女としての役割がある事忘れて
ませんか?
中学のあの事件以降、変身を嫌がるようになって
しまって私は未だに失意のどん底にいるというの
に」
そう実は私は中学の頃、魔法少女をやっていて地球を侵略しようと企む異世界の悪魔たちから日々人々を守っていた。
たが忘れもしない中学3年生の夏、当時付き合っていたクラス1のイケメン彼氏と別れて気づいてしまった。
このまま魔法少女をやっていたら私は1人の女の子として幸せになることは出来ないのだと。
「何度も言ってるでしょ、ベレト
私はもう魔法少女はやらないって決めたの
私以外にやってくれる人を探して」
「そんな事言わないでくださいよー
私は桜さん以外に魔法少女にピッタリな女の子は
いないと思ってるんですから」
このしゃべるハムスターが私の相棒のベレト。
本来は異世界から来た地球に対して友好的な派閥の悪魔の1人なのだが正体がバレるわけにはいかないとか色々あるらしくハムスターの姿で生活している。
「そんなこと言われてもー
というか、もう学校行く時間だよ
早く行こ、ベレト」
様々な期待を胸に学校へ行き、自分のクラスの教室のドアを開けた。
クラスを見渡してみると、中学が同じ人同士は固まっていてそれ以外の人は静かに座っているといった感じだ。
私はとりあえず席に座りホームルームを待った。
チャイムがなり担任の先生が入ってきた
「おはよう、新入生の皆
僕の名前は金井です
これから仲良くしていきましょう」
それから自己紹介が始まった。
クラスの主要人物になりそうな人を見定めつつ、全員の自己紹介をしっかり聞いた。
そして、クラスの中で一段輝きを放っているイケメン君の番
「えーと、僕の名前は向井 龍也です
趣味はギターでサッカー部に入ろうと思っていま
す、色んな人と仲良くなりたいので是非気軽に話
しかけてください」
まさに百点満点の自己紹介といったところね。
クラスの女子がすでに何人か恋に落ちているのが分かる。
そして私の番、今回は登校した順に席に座っているので私の番は後の方だった。
「私の名前は天野 桜です
趣味はお菓子を食べる事で作るのはあんまり得意
じゃないです
部活はテニス部かダンス部に入ろうと思っていま
す、よろしくお願いします」
さすが私、クラスの視線を集めてるのが分かる。
まぁ金髪ロングで身長168センチのモデル体型でしかも美少女なのだから無理もないけど。
私の後に佐藤なんたら君が自己紹介していた。
正直ザ・平凡という印象だったのであまりよく覚えていない。
それから2週間が経ち
私は見事にクラスの最上位カースト女子グループの一員となった。
最上位といったものの、このクラスは皆いい人ばかりでこれから仲良くやっていけそうで安心した。
もちろん、クラスの中心は向井君だった。
ある日の放課後、私は友達と別れた後先生に頼まれた明日の授業のプリント作りを手伝っていた。
「いやー、すまんな天野
優秀だからといってこんな面倒なことを頼んでし
まって」
「いえ、優秀だなんてそんな事ないですし
このくらいならいつでも手伝いますよ」
「ほんとありがと
うちのクラスには頼れる学級委員長向井もいるし
俺、このクラスの担任になれて幸せ者だ」
プリント作りの手伝いを終えた私は教室をでて体育館の方へ向かった。
今日は体育館でダンス部が練習をしているらしくその見学を少しして帰ろうと思ったからだ。
しかし体育館に着くと、何やら体育館裏から声が聞こえてきた。
近づいて物陰からちらっと覗いてみると新入生の男の子が怖そうな先輩たちに囲まれて脅されていた。
「おいおい、お前良いとこのお坊ちゃんらしいな
ちょーっとだけお金貸してくれない?」
「あの、僕知らない人にお金を貸すのはちょっと」
「いいじゃんか、金持ちなんだろ
一万や二万くらい安いもんだろ」
「無理なものは無理です
諦めてください」
「なるほどな、少し痛い目をみる必要があるな
やっちまえお前ら」
まったく部活動の時間で先生が忙しいときを狙ってなんて卑怯な奴らなのかしら。
あんまりこういうことで目立ちたくないけど仕方ない、助けてあげましょうか。
そう思って出て行こうとしたその時
「先輩方、後輩からお金を借りるなんてかっこ悪い
と思います
それよりもアルバイトによって自ら勝ち取ったお
金で遊ぶ方が断然カッコいいと思いませんか?」
「なんだ、お前こいつの友達かなんかか」
「いえ、初対面です
ですが、俺が個人的に許せなかったので口出しさ
せてもらいました」
あれは佐藤何とか君
こんな事する人には見えなかったけど実は喧嘩が強いとかそういうパターンなのかな?
「ならまずはお前からだ」
「いいでしょう、かかってこいやー!」
そして佐藤君は思いっきり先輩たちにボコボコにされた
私が先生を呼んだおかげでその先輩たちは佐藤君をボコボコにした後逃げるようにその場を立ち去った。
助けられた子が佐藤君に必死で感謝を述べて用があるからと連絡先だけ交換して去っていった。
私は佐藤君に近づいて
「大丈夫?
身体中怪我してるけど」
と言って絆創膏を差し出した
「あー、大丈夫だよこのくらい
でもありがとね
絆創膏の事も先生呼んでくれた事も」
「気づいてたんだね、私が先生呼んだの」
「まぁあの場に飛び出す前に天野さんの事は見つけ
てて、今にも飛び出しそうな勢いだったから
女の子に怪我させるわけにはいかないと思って
つい助けに入ったんだけど」
「ボコボコにされちゃったね」
「いやー、全く歯が立たなかったなよ
正直あの時はどうにかなると思ってたんだけど爪
が甘かったかな」
不思議な人だと思った。
普通あんな怖そうな人達に立ち向かおうとは思わないし、私の存在に気づいていたのなら私に任せ、自分は知らないふりしてその場を立ち去ってもおかしくない状況だった。
私は気になって聞いてみた。
「どうしてあの子を助けたの?
初対面だったんでしよ?」
そういうと彼は全く曇りのない笑顔でこう言った
「後悔したくないんだ
怖いからってその時何もしなかったら後で絶対後
悔する、たがらとりあえずやってみることにして
る、それだけだよ」
それを聞いて私は初めて魔法少女になった時の事を思い出した。
そうだ、私もそう思って魔法少女をやろうと思ったんだ。
その後佐藤君と別れて、私は家に帰り自分の部屋のベッドで横になった。
今日の出来事を思い出しながら不思議な気分に浸っていると自分の胸がドキドキしていることに気が付いた
恋に落ちるのは理屈じゃないっていうけどこれは流石にありえない。
「私もしかしてあの平凡男の事が、、、
好き・・・なの?」
この瞬間、ベレトがとても嬉しそうに微笑んでいたことに私は気が付かなかった。
注意 今回の話は神原さんの漫画の内容です