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1ー4 一時限目社会の勉強!
「ふむ、テンキュウね…剣と魔法の世界なんだろ?」
陸斗は言った。ここじゃない時間、ここじゃない世界。
そんなところに招き入れてくれたことには感謝しよう。
いろいろ不安はあるけれど━━━
『うん、そうそう。君たちがいた地球とは全然違うところだから、簡単に死んだりしないでね?』
不穏な言葉を述べつつも神はこの世界のことを語り出した。
テンキュウ
人族や、魔族、獣人族など様々な種族が生きる世界。
ここでは大きく六つの国に分かれている。
その中でも一番勢力が強いのが人族の治める国、サンタマギナ。
剣術、魔術共に世界一を誇る。
これから送り出そうとする国はそこ。
そこで貴族位を持って過ごすわけだから、領民にとって見本となる様な振る舞いをして欲しい。
「こちとら貴族なんてやったことねぇから振る舞いとかわかんねぇよ!」
そして第二王国、魔王が統べる国タルタロス。
魔王と言っても勇者によって討伐される対象とかではなく、一つの国を治めるれっきとした王だ。
人間離れした魔族だがこと技量に関して人族を超えることができず万年二位のポジションにある。
だが人族との関係は良好互いに切磋琢磨する仲でもある。
「へぇ〜、悪者ポジションじゃないんだ〜?」
第三王国、エルフが治めるエルフリーデン。
長寿の特徴を持ち、出生率が低く世代交代がなかなか行われないせいで発展が乏しいものの、持ち前の魔力と知識量にて制圧されずに一つの国として存亡している。
「制圧ってなんだ?拙者は争い事はごめんでござるぞ?」
急に厨二病を発症する翔大。
彼は生粋のオタクだ。が、高校での成績はよく他の生徒とも仲がいいし先生方からの期待もあってかその重圧に耐えるよう自分を隠して生きてきた。
が、もう地球ではないのならその本性をぶっちゃけても構わないだろう、と思うのだった。
第四王国、ドワーフの納めむ国ドワランド。
巨大な鉱山をいくつも有し、そこから取れる鉱石により世界の武器防具を生産する。
その交易により、他国からの侵略を受けることなく中立国として存在している。
どの国も武器防具は他国から領土を守るのに必要不可欠である。
「おい!戦争事の匂いぷんぷんさせてんじゃねぇか!」
『あぁーもう!うるさいなぁ!今説明してるとこなんだから黙っててよ!』
解説の途中で口を挟むことを毛嫌いするのは人も神も同じ。
『第五王国、妖魔族ヴァルク!第六王国、獣人族ロウケン!これが僕の世界の六王国!』
途中でチャチャを入れすぎたせいか神は詳しい説明を省いた。
それら王国は王を筆頭にして国として成り立っている、互いの領土を奪い合う世界。
とはいえ、首都中心は穏やかに暮らしていて、争い事があるのは国境周辺。
三人にはまず首都へろ降り立ってもらい、生活の基盤を作ってほしいそうな。
翔大は手を挙げて質問する。
「先生、拙者らがいってもさほど人口増加は叶わないかと思われますが?後、何故我らでしたか?」
その質問に腕を組みふふんと鼻を鳴らす神。
いい質問だと陽気に答えを返す。
『まず、君たちを選んだ理由から説明するね。ぶっちゃけたところ、安かった。地球人類にとって影響力がなかった。地球の神が出してくれるリストに載ってた。そして安かった!』
「二回も言ったな!安いってなんだよ!!」
言葉のあやか真実か、どちらにせよ陸斗は納得がいかない様子。
個人の存在を否定されたような気持ちに荒ぶる。
それを抑えるように秀は陸斗の背をぽんぽんと叩いて落ち着かせていた。
まだ話の途中だからだ、と。
ここからは神の話━━━━━
この世には『創力』という命や物質をつくる力が存在する。
そしてそれは神々の『通貨』のような役割をするのだ。
その『創力』を使い各々の世界をより充実させて行くのが神の仕事。
その力を得るには条件がある。
自分の世界で生きる者がその総力を生み出す。これが基本。
他の神から得る。これは今回の件。
三人を『創力』を使い買い取ったという形になるのだ。
『創力』でやりとりされるのは主に二つ。
輪廻転生の輪から死んだ魂を引き渡す(売買)こと。
住民自体を受け渡す(売買)こと。
「つまり…拙者たちは人身売買された、ということでござるか?」
『言い方!』
言い方も何も、まるっきりそのままではないかと首を傾げる翔大だった。
が、それはあくまでも人同士での話。神々からすればよくある『事象』にすぎないのだ。
地球では金が流通するが、神々の世界では創力が流通する。
そして、人や物は『商品』であり、創力の取引材料でもあるのだ。
「それを人身売買というのでござるよ!」
それはさておき
「置くなよ」
創力の主な使い道について。
物質をつくる。
植物、山脈、鉱山、大地。
輪廻から魂を引き戻す。
他の世界から人や物質を呼び寄せる。
「人身売買ね」
神はムッとした、が話を続ける。
世界のシステムを変える。
『しすてむ〜?』
三人は首を傾げ、声を揃えていう。
『そう、システム!世界に存在しなかった事象や役割、世界を変える魔法や武器!それらを使ってこの世界をより有意義な世界に変えるのさ!』
力強く拳を握りしめ、やや興奮気味に語る神。
その発展こそが世界を進化させる鍵でもあると言った。
魔法や武器という点に関しては三人の思う範囲で理解はできたが、『事象や役割』については理解できなかった。
地球ではない場所での想像がつかないのだ。
その辺は下界に降ってから色々と学んでほしい。ここで説明するには膨大な時間と労力がかかるから。
時間より労力を使いたくないのだな、三人は理解した。
「先生〜、創力とはどの程度で貯まる物なんですか?」
真面目な秀は真面目な質問をする。
自分たちはどれほど頑張ればいいのか?という疑問だった。
『はいはい、それについては…えーと、わかりやすくポイント制で話そうかな。』
1、『知性ある生物』が1日生きると1ポイント収集できる。
『知性ある』が大事なのだ。
なので岩や植物、動物、魚などからのポイントは収集不可。
それらは『知性ある生物』の糧となるべく用意された存在。
2、『知性ある生物』の死で1ポイント。
なので死ぬよりも長く生きて日々ポイントを献上してほしいのが神の望み。
しかし、国境間の小競り合いや天変地異での死者が出てしまうので、それもなかなか難しい。
3、異界からの召喚者は1日100ポイント収集できる。
「俺ら三人で300人分かぁ…それを聞いちゃうと安い買い物だったてのもしかたねぇか」
1日で300人、1ヶ月で9000人分、1年で…え、何人分?」
「役11万人分でござるよ。」
「流石ダイちゃん、計算早い。」
翔大は優秀だ、数学に関しては他国の数学専門大学への推薦もできるほどに。
『と、まぁ、そういうわけだから。長生きしてくれるだけで僕としては利益を得られるわけ。ちなみに君たちを召喚するのに使ったポイントは合計300ポイントね。』
「1日生きれば元が取れる…って、俺たちそんなに安かったの!?」
1日分の命でやり取りされた各人の運命、そりゃお得だわぁ〜、納得せざるを得なかった。
『さてさて、僕が望むのは君たちに僕の世界で生きてほしいって事はわかってくれたかな?』
『はぁ〜い、努力しまぁ〜す。』
三人が手をあげて誓いを立てるように言った。
世界の説明もほぼ終えて、その頃には翔大も陸斗も体の自由手に入れていた。
ここまで説明をながくしたのも、へっぴり狼と身体障害竜をそのまま野に放つのはいかんせん気が咎められるからでもあったとか。
そろそろ体も動くだろう。
あ、と声を上げる神。
思い出したかのようにこの世界での暮らし方をレクチャーする。
1、『知性ある生物』とは会話ができる
2、『知性ある生物』は、なるべく殺さない。これは創力を得るために必要だからだ。
3、戦争が起きそうなら止めて欲しい。大きな損失でしかないからだろう。
『じゃ、いくよ!』
神は両手を上げそして振り下ろす。
『僕の世界へようこそ!』
三人の足元に漫画でしか見たことのない魔法陣が展開されるとその姿は一瞬で消え…?
『うふふ、がんばってね。』