第三十三話 決戦、護る理由
「きゃーーーーーッ!!」
「ドラゴンだぁー!!」
「逃げろぉーー!!」
人々はドラゴンという恐怖から逃れるために走り
そして叫んでいる
「えー、私は今。ドラゴンが現れたという街に来ております。見てくださいこの大きさ!まさに信じられないほどの大きさです!」
そこにはテレビ局の連中がいた
バキィ!
「おい!何の音だ!」
「か、カメラが破壊された!」
「も、燃えてる!」
こんなとこで撮ってんじゃねぇよ・・!
それより間に合うのか・・・?
『うるさい人間どもだ・・黒炎砲』
くッ・・!
口砲か・・・!
「やぁめぇろぉーーーッ!!」
龍脚!!
龍はヴァジュラのあごを思い切り蹴飛ばした
『ぐゥ・・・』
そのおかげで口砲は空へ撃たれた
それを見届けた龍は地に足をつけた
「おい、あいつ!今空を・・・」
龍が実際空を飛んでいたのはその場の全員が目撃した
うるせぇなぁ・・・
『ほぉ・・あれだけ死にそうになりながら私に立ち向かうか・・・』
「もちろんだ。親の責任は仔の責任だからな、親父ぃ!」
『親に反抗するのか・・息子よ』
「・・・龍・・今の会話・・・」
その声を聞き龍は振り返った
そしてすぐ後ろにいたのは・・・
「お前ら・・・何で・・・」
龍の大切な・・友だった・・・
「何で・・ここに・・・学校の帰り道でもない・・・」
「そんな事より。今の会話は事実か・・?」
龍は思わず黙ってしまった
彼らはみな龍の友として大切な人たち
そんな人たちに今までずっと黙っていた真実
それを今更事実だなどと・・・
裏切ってしまう事と同じだ
そして彼らは龍にとって・・・・
「・・おい、炎!どうなんだ!」
近づいてきたのは坂野だった
坂野は龍の胸ぐらを掴もうとした
「・・・・そうだ・・俺は・・このドラゴンの仔だ・・・」
凍った
龍の友・・みなの心が、表情が・・凍った・・・
しかし龍の表情だけは決心したようにしっかりとしていた
「俺はドラゴンと人間の間に生まれた人龍・・炎を纏うドラゴン、火炎龍だ」
「・・・そんな・・・嘘でしょ・・・」
龍はその質問には答えず
みなの近くに近づいた
「悪い」
次の瞬間
友を蹴り飛ばした
「ぐッ・・・・炎!てめぇ!」
「・・ごめん」
大きな影が龍を覆っていた
それは上から降ってくるヴァジュラの拳だった
しかしその時龍は、笑っていた
「龍――――」
ズドォォオオ・・・
その拳は躊躇わず降ったきた
「龍ぅーーー!!」
「・・マジかよ・・・」
「あいつ・・・」
みな思った
龍は死んだと
しかし土煙の中に人影があった
「・・おいおい・・わかってんだろ?親父ぃ・・・その程度じゃ俺は殺せねぇ・・・」
『流石、といったところか・・・あの一瞬で避けるとは・・・少しは感覚が戻ったようだな』
「おぉ・・親父のおかげだ。それより、今のが本気か?掛かってこいよ、本気で・・・」
『・・いいだろう・・・・後悔をしない事だ』
ヴァジュラの周りに薄い霧が出来た
そして次の瞬間
ヴァジュラの体は人の容になった
「・・弱くなったのか・・?」
「人なんて・・・」
野次馬の分際で非難している
確かに普通に考えれば体の大きいドラゴンの容の方が強いと思う
しかしそのような常識
彼らには通用しない
「・・いくぞ・・・」
先手を打ったのは龍
ヴァジュラの目の前に素早く潜り込んだ
「・・なるほど。己の炎を推進補助装置のように使い地を一蹴りして私の前まで来たというわけか」
龍腕!
「だが、甘いな。その程度では私に傷一つ与えることは出来ない」
ヴァジュラは龍の攻撃をあっさり避けた
しかしそれは龍の思惑通りだった
「甘いのはどっちだぁ!!」
「何!?」
さっきの攻撃は偽者・・・
つまり炎で作った人形
「らァァアア!!」
バシッ!
何!?
止められた・・!?
「・・弱い・・・それが・・ドラゴンか・・!!」
「ぐふッ・・・」
腹に一発・・・入れられた・・・
い、いつの間に攻撃を・・・
「弱くなったな・・龍・・・・人と触れ合う事によって力が落ちたか」
「ぐッ・・龍刃鱗」
「刃の鱗か・・確かにそれなら私の体も引き裂くことが出来るだろう」
くらえ・・ッ
俺は殴り掛かった
しかしそれも避けられた
「だが。当たらなければ意味が無い・・・・そして・・拳は」
「がはァ・・・」
「このように繰り出すのだ」
また・・・見えなかった・・・
どうやって・・・
それも・・一気に十発も・・・
「・・分からないか・・?まだまだだな」
どうやった・・・
ブースターも無し・・・
・・ブースター・・・
「・・・龍爪」
「まだ戦うか・・・今のお前では私には・・・ッ!!」
「・・・・へへッ・・傷一つ・・付けたぜ・・・」
「・・・そうか・・肘から炎を噴射させ速度を上げたか」
ブースター・・・
これがヒントだったんだ
俺の炎を使って
「・・まだまだ・・戦えるぜぇ・・親父・・・」
「・・・そうか・・・それならば・・ここで殺すのみ・・!!」
消えた・・ッ!
どこに行った・・・
龍の姿より人の姿のほうが強い理由
それは人の姿で龍の力をそのまま使えるからだ
それにより風の抵抗が少ない人の姿だとまるで消えたかのように見える
「・・どこだ・・・」
わからねぇ・・・
「ぐふッ・・がはッ・・!」
スピードに乗って攻撃を・・・
・・目ではわからない・・・
『目で追っていちゃだめだよ』
・・集中・・・
三つの五感をフルに働かせろ・・・
風を聞き・・風を感じ・・者を匂う・・・
「龍剛鱗・・そこだぁ!!」
「ぐあ・・・」
・・・捉えた
「・・流石はかつて臥竜と言われたことのあるだけはあるな・・・」
臥竜とは眠れる龍
まだ目覚めていない力の事だ
※これは作者なりの意見であるから事実とは違うものだ
「だが・・鋼が如く硬き鱗を使ってもこの程度か・・・戻ったのは感覚だけだな・・・力はまだ弱い・・・」
「ちィ!」
これもダメか・・・
「では・・そろそろ・・・死んでもらおうか」
「何だと・・・うッ!!」
龍はその場に倒れこんだ
体が・・・
「それはそうだ。もうすでにお前の肝は潰れているというのに・・あそこまで耐えた法が不思議だ」
「へっ・・俺の体なんかどうでもいいんだ・・・・例えこの体が駄目になろうと・・この命が尽きようと!俺はこの世界を守り通す!!」
「ならば見せてみよ!その気持ちを!!」
その時
空の雲は引きそして闇へと変わった
「な、なんだ・・・!?」
「闇とはすべてを包み込む無の世界・・・そして無の世界とは宇宙を指す」
「う、宇宙・・だと・・・!?」
「くらうがいい、私の攻撃を・・・流星群!」
闇へと変わった空から無数の光が降ってきた
その光は燃え上がる小さき星・・・
そしてそれは龍へと目掛けて降っていた
「ぐあァァァアアーーーーーーーーーッ!!!」
「龍!!」
「おっと、待ちな」
そこに現れたのは雷迅だった
雷迅は駆け寄ろうとした瑠奈の腕を掴んだ
「何するの!?放して!」
「龍に避けろと言おうとしたろ。それを止めたんだ」
「何で!?龍だったらあんなの―――――」
「あぁ、簡単に避けられる。だが、避けられない理由があるんだ」
「理由・・?」
理由とは何か・・・
みな首をかしげている
この状況にそんなモノはない
「あれはやろうと思えば州を一つ滅ぼす事の出来る超高等攻撃術。そして狙いはきっとここにいる人間すべて。だが、あの隕石は龍にしか飛んできてない。それは何でだと思う?」
「・・何でって・・・知らない・・・」
「・・あの隕石共・・・炎を纏ってるだろ?大気圏に突入するとあぁなるな。そして龍はその炎を操って自らのほうに来るよう操作している・・・・それはあれから人間共を護るため。いつもの龍ならあれを避けながらだって出来ただろう。でもあいつの体力は今、極限に減っている。動かずに操るのが限界なんだ」
今の龍は体力も大幅に削られている
それは異次元の扉でのヴァジュラとの戦いによるものでしょう
それと聞いた瑠奈はショックを受けた
私たちのせいで龍は傷つき、死にそうな目にあっている
そう思ったのでしょう
「私たちがいなければ・・龍は・・・」
「そんな事思っちゃいけねぇぜ、嬢ちゃん。龍は何でそこまで戦えるのか・・それはお前らがいたからだ」
「・・俺らが・・?」
「そう・・お前たちは龍にとって初めて出来た親友・・・くやしいがな。あいつはお前らがいるからこの世界が好きなんだ。だからあいつはお前らのいるこの世界を護るために戦ってるんだ。もしいなければ多分ここら一帯は地獄絵図になってるだろう」
それはほとんどの人が死に、人の生きれない世界・・・
彼らがいなければ本当に成っているかも知れない世界・・・
龍はそれほどにもこの友らを護ろうとしている
そんな話をしているうちにヴァジュラの攻撃は已んでいた
「・・・ア・・あァ・・・」
ドサッ・・・
龍はその場に倒れこんだ
最早立つ力も残っていない・・・
虫の息だ
「・・ここまでだな・・・」
ヴァジュラは鍵を探そうとしたのかその場を離れようとしていた
「龍!」
とそこへ駆け込んだ一人の少女
「ル・・ル・・・」
「龍、龍!大丈夫!?」
大丈夫なわけが無い
「な・・んで・・・・家に・・いろと・・・言っ、た・・だろ・・・」
龍の家にはある特殊な結界が張ってある
それは魔的なモノは龍の許可無しでは入れないという仕組みの結界だ
「でも・・でも・・・」
「い、いから・・家に・・・もど・・がはッ!」
「龍!」
吐血だ
龍は体の中からもうボロボロになっている
今まであの攻撃を受けていられたとは思えないほどだ
「そこまでしてお前が護ろうとするか・・それが鍵だな?」
ばれた!!
「ル、ル・・逃、げろ・・」
龍はふらふらの体で立ち上がろうとした
しかしすぐに倒れてしまった
もう脚の筋肉さえいうことを聞かない
「その娘・・連れて行く」
どんどんルルに近づいて行くヴァジュラ
それを観ているしかないのか・・・
せめて・・・
「やめろ!親父ぃ!!」
せめて・・時間稼ぎを・・・
「やめろーーーー!」
「黙れ!」
「ぐふッ・・・」
「龍・・龍―――――!!」
龍の体をヴァジュラの爪が貫いた
第三十三話 終