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第三十話 始まる学園祭

学園祭前日の深夜十二時

最近俺はこの時間まで起きている

「・・眠い・・・」

それも学園祭のためだ

「・・・出来たぁ!」

「龍」

「わぁ!ルル!もう、勝手に入ってこないでよ・・・」

「ちゃんとノックしたよ。最近いつもおそいね。どうしたの?」

・・気付いてたのか・・・

明かりはスタンドだけなんだけどな・・・

「大丈夫よ。もう寝るから。ゴメンね、心配させて」

「・・ううん、いいの・・・体、壊さないでね」

・・ルル・・・

やさしいな・・・

「・・ルル、明日九時にうちの学校に来てくれないかしら」

「何かあるの?」

あるのは十時からだけど

「そのために出来れば手伝ってほしいの」

「手伝い?」

・・きっと明日は大変になる

執事としてのセリフは紙にプリントして役をする奴らに渡したけど・・・

きっと突然ではダメだ

その前に確認をしておかないと・・・

そのためには手伝いがいる

「そ。頼めるかしら?」

「・・・うん!私がんばる!」

「・・ありがとう」

俺はルルを部屋から出して眠りについた

学園祭の事を考えながら・・・


そして学園祭当日

「・・お、ルル。ここだ」

「龍。大丈夫なの?一般人が一時間前に来ちゃって・・・」

「大丈夫だ。俺の連れなら」


そして即行で部屋に戻った

「紹介しよう。俺の従妹の桜ルルだ」

「おぉ!かわいいな!」

「じゃあ、竹内。頼んだぞ」

「任せて、と言いたいけど・・・大丈夫かな・・・男子」

「大丈夫大丈夫。もし何かあったら俺が男子(あいつら)の首から下を動けなくしてやるから」

一度そうした事があるしな

犯人を

「さらりとそんな事をいう龍がコワイわ・・・」

「でも男子の血の気も引いたし。大丈夫だよ。ありがとうな」

「・・うん」

「じゃあ、ルル。ちゃんと竹内のいう事を聞いて手伝いをしてくれ。頼んだぞ」

「うん!」

「・・じゃあ役をする者は隣の空き教室に来い。服を渡す」


この空き教室は俺たちが料理を作ったり着替えをしたりするために借りている状態にある

でも着替えは男子と女子は別の部屋でする

「・・よし、じゃあこれに着替えてくれ」

「これは?」

「執事服だ。俺が縫った」

「マジ?すげぇ・・・」

それぞれに合うようにそれぞれ名札をつけてある

サイズは違うからな

「とりあえずそれを着てもう一度ここに集合な」

「わかった」


「着替え終わったな。まず、お前らにはなるべく女性なら男子が、男性なら女子が相手をしてほしい。呼び方は女性はお嬢様、男性は旦那様だ」

「なんで旦那様なの?ご主人様がいいんじゃ・・・」

「俺らは一応執事、男役だ。男にご主人様なんて呼ばれたいか?」

「・・・・・・・・・やっぱ・・・旦那様だな・・・」

想像したな

少しずつ顔が蒼くなってく・・・

「先週渡した『紙』はちゃんと読んで覚えたか?」

「うん!バッチリ!」

さすがは演劇部

記憶力いいもんな

長澤は問題無いとして・・・

「お前らは?」

「読んだけど・・・ちょっと曖昧(あいまい)だ・・・」

他も頷いてる

て事はやっぱり練習が必要だな

「じゃあとりあえず練習も兼ねてやるぞ。俺の言う事を繰り返してくれ。・・・お帰りなさいませ、お嬢様」

「お帰りなさいませ、お嬢様」

「お帰りなさいませ、旦那様」

「お帰りなさいませ、旦那様」

俺たちの練習はそれから三十分も続いた


「・・なぁ、何でお帰りなんだ?いらっしゃいじゃなくて」

「理解してなかったのか・・・いいか。俺たちの仕事は執事なんだ。執事は(あるじ)を屋敷で待ち、迎える必要がある。そしてこれは執事喫茶。このクラスはこれから来る(きゃく)の屋敷であるべきだ。だからその屋敷で待つ俺ら執事は“お帰りなさい”と出迎える必要がある。それゆえにお帰りなんだ」

「なるほど・・・」

・・とりあえず予行練習だな

「瑠奈!」

俺は隣のクラスで作業をしている瑠奈を呼んだ

「何?」

「・・・・・・・・」

・・・みんな黙っている

それじゃダメだろ・・・

「人がクラスに入ったらとりあえず“お帰りなさい”と言うんだ。それが俺らの仕事だろ・・・」

「え!?これも練習!?いきなりかよ・・・」

「客はいつでもいきなり来る。これにも対応しなけりゃダメだ」

「わ、わかったよ・・・」

いつでもいきなり来るものを俺は前もって呼んだってのに・・・

「とりあえず今のはもういい。次、お嬢様を席にお連れしろ」

「あ、あぁ。じゃあ、こちらにお座りください・・・」

・・よし

ここはいいな

「こちらがメニューでございます」

そういって下がって行った

・・・・おいおい・・・

「バカ野郎!メニューが決まるまで待つんだろうが!そして“本日のデザートは”だろ!!」

「そ、そうだった・・・・」

その後も続けたが

グダグダで話にならなかった

「だぁーー!!お前らもうダメだ!長澤、見本見せてやれ」

「わかった」

「瑠奈。悪いが入るところから頼む」

「りょーかい!」

パタパタとドアの向こうに走った

「・・いいか。長澤が一度だけ見本を見せる。それを観て、覚えろ」

「わかった」

「瑠奈!」

俺の呼び声と共に瑠奈が入ってきた

「お帰りなさいませ、お嬢様。どうぞ、こちらにお座りください」

長澤は瑠奈の手を引いて席まで案内

そして椅子を引いて座らせた

「本日のデザートは何にいたしましょうか」

「んー・・じゃあショートケーキ」

「かしこまりました。少々お時間を取らせていただきます」

「実物はいい。練習だ。ただ時間はそれなりに延ばしてくれ」

長澤は頷いて練習に戻った

「食前にお飲み物をお持ちいたします。何がよろしいでしょうか」

今度はさっきとは違う小さめのメニューを持ち出して差し出した

あれはドリンクメニューだ

「・・じゃあ紅茶をお願い」

「かしこまりました」

一度ポットを取りに戻り

「それではお注ぎ致します」

カップに紅茶を注いだ

「・・お待たせいたしましたお嬢様。こちらが本日のデザート、ショートケーキにございます」

「ありがとう」

「それではまた、用があれば(わたくし)めをお呼びください」

「・・・よし、完璧だ。お前ら、覚えたか?」

頭にうっすらとハテナが浮かんでいる

まだ曖昧のようだ・・・

ダメか・・?

「長澤。こいつらに指導を頼む。俺は料理の下準備を始めるから」

「かしこまりました、旦那様」

そこまで入らんでも・・・


「さて、料理をする班の諸君。お前らは何を作れるようになった?」

聞き出した結果

瑠奈はショートケーキとモンブラン

中山はガトーショコラとワッフル

朝原はチーズケーキとマフィン

竹内はタルトとノエルケーキ

・・見事にバラバラ・・でもこれは大丈夫かな

「それにしても・・・竹内。お前ノエルケーキって・・・」

「うちはケーキ職人さんがいるから・・作ってるのよく見てたし・・・」

こんなん作れるってのがすげーわ・・・

「よし。これから俺はメニューの作成にかかる。お前らは必要な生地を用意しておけ。材料はその冷蔵庫に入ってる。スポンジも作っとけよ。OK?」

「わかった」

「じゃあ頼んだ」


まずは紙に作れるケーキをリストアップしてから周りにデザインを・・・

そしてそれが終わったらコピーして大量生産

さらに汚れてもいいように加工して・・・

後は裏にあらかじめ用意したデザイン紙を貼って・・・

「よし、出来た」

とりあえず二十といったところか

「や、龍」

「穂炉。出来たか?」

「出来た。ちょっと遅れちゃったけど」

「大丈夫まだ余裕あるよ。ありがとう」

俺が穂炉に頼んでいた物はテーブル掛けだ

こいつに任せておけばデザインは問題ないからな

「で、あれが執事服?」

作業のために脱いだ俺の服を指して聞いた

「そうだよ。俺が縫ったんだ。どうかな」

「・・・このデザインは男女兼用で?」

「あぁ、同じほうがいいだろう?」

「ふんふん・・・・」

俺の衣装を広げて

何かに頷いているようだ

「いいと思うよ。師匠の眼は違うなぁ・・・」

「そこまで言うなよ・・・」

照れる・・・

「照れてる。かわいー」

「うっさいな!・・とにかくありがとう、穂炉」

「もういいよ・・・私も楽しみにしてるからさ」

「おぅ!」


「お前ら!これをテーブルに掛けてくれ。これのために頼んでおいた」

「お!いいじゃん!雰囲気というか・・・」

「そうだろ?」

穂炉に頼んでよかった

大正解だ

「ん?炎。時間はいいのか?」

「え?」

時間・・・

時刻は9時55になる

「あ!そうだ!ちょっと頼むわ!」

急いで教室を出て放送室へと走った

「ったく、あいつが一番あわただしいな」


生徒会長として始まりの言葉を言わなければならない

去年だってやった事なのに・・・

「悪い!遅れた」

「会長。大丈夫です。まだ三分あります」

「・・よし・・・」

俺はまず息を整えた

息が荒れている状態じゃ格好がつかないしな

「・・・10時です!」

ピーンポーンパーンポーン・・・

『これから、鷹三沢高等学校の学園祭を行います。生徒たちは勉強の事を忘れ羽目をはずして怪我をしないように楽しんで(おこな)ってください。外からいらっしゃいました皆様も各クラスによる出し物を楽しんでください。それでは、学園祭、開始だ!』

この言葉と共に学園祭が始まった


第三十話 終

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