第二十九話 学園祭に向けて!
運動会が終わり
約二週間後
「えー・・・それでは、朝のホームルームを始めます」
教台にいるのは俺、火炎龍
「では、前々から出ている事について、生徒会長として言わせてもらいたい・・・・」
俺はキレていた
なぜなら・・・
「・・いつになったら!来週の学園祭の出し物が決まるんですかねぇ!?」
学園祭にする出し物が一向に決まらないからだ
「そうカリカリすんなよ、炎。まだ一週間もあるんだ。のんびりと・・・」
「今日中に決まらなかったら俺が決めるぞ」
「お、お前が・・・?た、たとえば何に?」
坂野の顔が急に蒼くなった
「そうだな。世界中の偉人のレポートなんかどうだ?」
「そ、それなら簡単じゃん。みんなでリサーチすれば・・・」
「一人で偉人一人だ。産まれてから死ぬまで詳しくな。しかもそれに伝記や小説なんかといった簡単に情報を集められるような物は一切使わずにだ。もし使ったら大変な事になるぞ?」
「笑顔がさらにコワイ!!」
「情報収集は現地調達のみ!そしてその偉人にまつわる物を確実に持ってくる事。もしそういうものが無ければ自分で作れ!絵や写真で無くだ!そのための旅費や資金は自腹だ。俺は一切出してやらん!・・それが嫌なら今日中に出し物を決めな!!」
次の瞬間クラスの空気が凍った
徐々に空気は解凍されみんなも互いに相談しているようだ
しかし決めようにも決まらなそうだ
「あ、あの・・・」
「何だ、鐘」
「あ・・え、えっと、お化け屋敷とかは・・どうでしょうか・・・・」
お化け屋敷か・・・
確かに学園祭をするのは十月末
季節としては申し分無い
「では、それを候補にあげ―――――」
「ちょっと待ったぁーーーーーー!!」
俺が黒板にお化け屋敷を書こうとした時
函崎が大声を出しながら勢いよく立ち上がった
「何だ、函崎。意見か?」
「あぁ。鐘ちゃんは知らないだろうがお化け屋敷は断固拒否する!」
「理由は何だ?去年はあんな盛り上がったじゃねぇか」
「理由は一つだ!怖すぎんだよ!こいつの作った物語が!!」
函崎は俺の目の前に座っている朝原を指した
朝原はキョトンとした顔で函崎を見た
「そうか?俺は好きだったけど、スリルがあって」
「わぁい、龍くんに褒められた♪」
ハハハと乾いた声で笑った
「そんなに怖いんですか?」
「むしろストーリーより読み手じゃね?」
答えたのは坂野だった
そして坂野の目には長澤が映っていた
「そんなに?」
「こいつ男役も出来る演劇部員だもんな。一つ鐘に聞かせてみるか」
と言って長澤に目で合図をした
「・・・ある夜、男が仕事の帰り道に暗い山道を歩いていた
そこには女の人が背を向けて立っていた
「こんなくらい所に一人で何をしているのだろう」
不思議に思った男はその人に声をかけた
女の人は振り返って男に笑いかけた
女の人の服は変わっていた
白地のワンピースに首からたれる様な赤い模様
「少々空腹でして。食べ物を譲っていただけると・・・」
不憫に思った男は頷いて鞄の中を探した
「ありがとうございます。では・・いただきます」
そういうと女は男の頭にかぶりつき首を引きちぎった
男は気が付かなかったが彼女の近くには他にたくさんの首の無い死体が転がっていた」
長澤が話し終わった後
クラスの空気は氷河期の如く固まっていた
「どうした?たかが小話だろ?」
「それにしては・・・」
「後ろ!」
俺は坂野の言葉を閉ざして叫んでみた
この状況だとおもしろい事になりそうだからだ
「ヒィィ!」
坂野は叫んで後ろを見た
「なーんてな。面白かったか?」
「怖いわ!!」
「で、お化け屋敷の案は今無くなったわけだが・・・・今日中に決まらなかったら・・・」
「わかったわかった・・・」
「よし・・・他に意見は?」
もう一度クラスを見渡した
次の意見が無ければレポートになる
とそこで手を上げたのは瑠奈だった
「瑠奈、案があるのか?」
「え、と・・喫茶店とか、どうかな」
「喫茶店か・・・」
「そう。テーブルかけとか衣装とか用意して料理を出すの」
「なるほどな。値段も安くすればお客も来るだろうし、炎の腕なら間違い無くだ!」
その函崎の言葉と共にクラス中の生徒がざわめいた
衣装はどうするか
誰がするのか
そして俺の腕がどうとかで
「まぁいい。それじゃあ、候補としてあげる。他には?」
みんな話している
喫茶店について
「・・よし、わかった。このクラスは喫茶店をする。次はそれについての会議だ」
「どんな事の会議だ?」
「衣装を用意すると言ったな。それにはまずテーマが必要だ。喫茶店にも種類があるからな。例えば、函崎がさっき言っていたメイド喫茶。これも一応テーマで決められている」
「メイド?」
「まぁそんなとこだ。外から帰ってくる主人をメイドとして向かい入れる。そのようなテーマが必要なんだ。まずはその会議な」
そのあとにデザイン、料理、値段・・・
決める事はまだまだたくさんある
そういや衣装の事は誰に頼むか・・・
「龍」
「あ?何だ?」
考え事をしている間に瑠奈がそばに寄って来ていた
「そのテーマなんだけど・・・・私たちで決めると・・・」
「ん?」
そう言われてまたクラスを見渡した
「・・・・なるほどな」
読唇をしてそれぞれの言い分を読んだ
メイド喫茶とコスプレ喫茶のアイデアしか出てないじゃねぇか
おまけに女子はそれを嫌がっている
・・・
バン!!
「静かにしな!」
俺は教台を強く叩いた
「とりあえず今出ているアイデアは何かわかった。だけどそれは取り入れないだろう。メイドやコスプレなんて秋葉原の店じゃあねぇんだ。それにこれはクラス全員が一つのなってやる事だ。メイドやコスプレを男子もするってんなら別だけどな」
男子も女子も同時に叫んだ
よっぽど嫌らしい
「それでだ。男子も女子も出来るようなテーマを決めようと思う。これからするのはそういう会議だ。それを忘れないように。話し合いならしてくれていい。けどもっと静かにな」
それから少ししてチャイムが鳴った
一時間目が始まる合図が
「今日は一時間目を自習にします。そのまま続けて」
生徒たちは大喜びした
「いいんですか?先生。勝手に自習にして・・・」
「いいでしょう、たまの行事ですから」
「そんなもんすかねぇ・・・」
でもま
生徒会長としても準備の時間が増えるのはうれしいからいいか
「そんじゃあ、てめぇら。会議の続きだ」
「俺案がある!」
「お、何だ?言ってみ?」
「メイドがダメなら執事なんてどうだ?これなら女子でも出来るだろ、男装して」
なるほど
メイドは男子じゃ無理だけど
執事なら女子が出来るな
「女子、意見はあるか?」
ざわめいた
見てみたいという意見や
少し気が引けるという意見が出た
「で結局どうすんだ?賛成か?反対か?」
「・・・・じゃ、賛成という事で」
ようやく意見が固まったようだ
「よし、じゃあ次の意見はあるか?」
「お化けは?」
そう言ったのは長澤だった
「お化け喫茶?」
「そう。何かお化けに仮装してウェイトレスとかするの」
「時期的にはピッタリだな。これについての意見は?」
・・みんないろいろ言ってはいるが・・・
別に反対は無いか
「では、もう多分意見も無いと思うんでこの二つで多数決を取る」
俺はみんなの机に小さな紙を置いた
「今配った紙にどちらかを書いて教台に置いてくれ」
うちのクラスは俺を抜いて合計23人
この方が多数決にはいいだろう
相談してる奴もいる
それはそれでいいだろう
意見はきっと変わらないから
「・・・よし。みんな書いたな。これから集計をする。その間誰が何をするか、配置を考えておいてくれ」
そう言って集計に入った
「よし、集計が終わったぞ」
「早ッ!」
終わった瞬間突っ込みが入った
「始めてから一分も経ってねぇだろ!?」
「失敬な。ちゃんと三十秒は経ってるぞ」
「それでも一分経ってねぇじゃん!」
うるさいので無視に入る俺
「で、集計した結果、執事喫茶17人、お化け喫茶6人となった。よって俺たちのする出し物は執事喫茶に決定した」
集計では女子のほとんどが執事喫茶に入れてた
そんなに執事を見たいのか?
「それで次に決めるものはウェイトレス、つまり執事の格好をする役だ。男女共に5人、交代の4人ずつ、計9人ずつくらいかな」
「何で女子も?」
「男子だけじゃ男性客が来ないし華が無いからだ。まずこれを決める。他はその後だ。とりあえず候補は?」
話し合いをしているようだ
そこまでしなくてもすぐ思い当たるだろうに
「まぁ、櫻井さんは決定だろ」
「あぁ、瑠奈は無しでな」
「何でだよ。いい宣伝になるうえに客も来るぜ?」
「お前はこうは思わないのか?男服が似合うか似合わないかって」
考えもしなかったようだな
頭に思いっきりハテナが浮かんでやがる
「瑠奈は確かに華がある、男が寄り付くし客寄せには持って来いだ。だけどな、こいつに男物の服、執事服が似合うと思うか?」
「・・た、確かに・・・・それにしては・・・」
「そうだろ?だから俺がお前らに求めるのはそういう服が似合ってしかも華になる女子なわけだ。ラッキーな事にうちのクラスの女子は綺麗な奴ばかりだ。執事服も似合うだろう。その中からまず男女共に五人ずつだ。簡単だろう?という訳でお前らに任せる。とっとと選べ」
このクラスには女子が13人、男子が11人いる
多分大丈夫だ
・・・心なしか女子のほとんどが顔を伏せてるうえに心臓の鼓動がはげしいようだ
なんかあったのか?
「でもま、とりあえず長澤は一人目だな」
「何でだよ、炎」
「こいつは演劇部でも男性役をこなすし何より男物の服が似合うからだ」
なるほど
とみんな男子も女子も納得している
「え、で、でも・・・」
「という訳で。頼むぞ、長澤」
俺は長澤に笑いかけた
感謝の念と共に
「う、うん・・・」
それから約十分もかけて残りの女子も決めた
「さて、それじゃあ次は男子を決める」
「火炎は決定な」
「あぁ?俺?」
「あたりめぇだろ?お前が一番はまり役だ」
俺としてはゴメンだ・・・
面倒くせぇ・・・
「で、でも龍は料理をするんじゃ・・・」
「料理?火炎が?どんなの出来んの?」
「そうだな・・和洋中とかは全面的、てかほぼ全部出来るし・・・・喫茶店となるとケーキか・・・それならモンブランやショートケーキ、タルト、カップケーキにマフィン、チーズケーキ、シフォンケーキにミルフィーユ・・・・」
いろいろ出来る料理を並べて口に出した
みんなが知らないような名前のものまで
「あとは・・・てか全部かもな。・・どうした?」
クラスを見渡すと先生までもが一人残らず目を点にしている上に口をポカンと開けていた
「お前・・そんなに料理出来んの?」
「あれ、知らなかったか?俺んちレストラン経営してるし・・・今は親戚がやってるけど」
「レストラン!?」
みんな口々に何それとか言ってる
「あぁ、俺の親父が料理長だったからな。Vulcan Solのな」
「あの三ツ星レストランの!?」
またうるさい事になった・・・
がやがやと・・・
レストランの事を口にしているようだ
「そんな事ぁどうでもいい。さっさと執事役決めるぞ!」
「お前がレストランVulcan Solのシェフの息子だなんて信じらんねぇ・・・」
「それは俺に対する侮辱でいいのか?侮辱罪としてムショにぶち込むぞ、ゴラ!」
「申し訳ないッス・・・」
今の一言が効いたのか
クラスが一気に静まった
「・・じゃ、静まったとこで決めるぞ、男子の執事役を」
「とりあえず今は炎が料理に入るか執事に入るか決めね?」
・・・・・そうだな
先に決めちまわないと後がうるせぇな
「じゃみんなで話し合ってくれ。俺はどっちでもいい」
そうして口論が始まった
俺は執事がいいと言う班と料理がいいと言う班に分かれて
そっちでもいいだろそんなの・・・
それから約五分後
「炎!お前はどっちがいいんだ?」
「俺?どっちでもいいよそんなの・・・」
「お前の意見によって変わるんだよ!」
俺の意見ねぇ・・・
今まで取り入れてくれたことあるのか・・?
「そうだな。俺はどっちに入っても考えは同じだろうな」
「考え?」
「もし俺が料理の班に入ったとする。そしたら俺は料理を作るだろ?そしてその時に思う事は執事の班の事だ。なぜかというときっとお前らは執事としての仕事を果たさなくなるだろうからだ。つまり、仕事しっかりとしているかどうかで考える。そしてチェックした時俺は激怒するだろう。それは俺が執事の班に入っても同じだ。料理が成ってないだとかどうとかうるさく言うだろう。だからどっちに入っても同じなんだ」
納得したように頷いている
さて
この意見はどう動くのだろうか
「・・それなら両方すればいいんじゃないかな」
そこに案を出したのは鐘だった
「両方?」
「そう。執事の仕事もして料理をするの。実際の執事はそうしてるんだよ?」
何で知ってるんだ、そんな事・・・
・・こいつんちに実際のがいるのか・・・?
「執事服が料理で汚れるかもしれないぞ」
「エプロンをすれば平気だよ、きっと」
「・・だけどそうしたら一つ穴が出来るぞ?」
「どうにかなるよきっと」
こいつ・・・
マイペースな・・・
これがこいつの実力か・・・?
「・・わかった。両方しよう」
「大丈夫か?」
「あぁ。どうにかする」
鐘には負けた・・・
「他の8人を決めてくれ」
それから二十分もかけて執事の配役が決まった
「次決めるのはさっき言っていた料理組だこれには手際のいい女子を推選する。四人でいい」
それを決めるのにはそう時間がかからなかった
そんなに時間をかけるようなもんでも無いし
「で、全てが決まった。次の授業に間に合ったな」
クラス全体が嫌そうな顔をしている
あと一年もすれば卒業生になるってのに・・・
「ほ、他に決めるべき事は?」
「無い!すべて決まった。デザインは俺に任せろ。お前らには任せきれないからな」
「大丈夫。俺たちで・・・」
「決めようとしたら絞めるぞ」
一瞬にして静かになった
「先生。次の二時間目は受けれますんで」
「はい。わかりました」
そして一気にみんながため息をついた
放課後
俺は料理をする事になった四人を連れて家庭科部室に向かった
その四人は瑠奈、中山、朝原、竹内だ
「みんないるか?」
「はい。揃ってますよ、櫻井さん以外」
「大丈夫だつれて来た。それじゃあ、部活動を始める。今日はケーキ作りだ。ここにある材料を好きに使ってくれていい」
俺はテーブルにバニラエッセンスや様々な果物などを置いた
「その人たちは?」
「今から話す。それで今日はお前らに先生になってほしい。それは実は俺らのクラスの出し物でケーキを作ることになったんだ」
「・・それって喫茶店なの?」
・・いきなり直球だな・・・
それともばれてんのか?
「あぁ、そうだ。それでこいつら、櫻井も含めてケーキの作り方を教えてやってほしい。お前らの得意なのでいい。それと出来れば二種類以上でな」
「それなら龍が教えればいいだろう?なぜ私たちが?」
「俺はこれから別の用があるんだ。じゃ、頼んだぞ!」
そう言い残し俺は部室を去った
「・・行っちゃった・・・」
俺が向かった先は演劇部室
穂炉に会うためだ
「よぉ。穂炉いるか?」
「お、龍。何?私に用?」
そう言いながら俺に近づいて来た
てか近い
「だから呼んだんだろ?ちょっと頼みがあるんだ」
「頼み?めずらしいね、龍がだなんて」
「まぁな。実はな・・・」
俺は穂炉の耳元で話した
「・・・なるほど・・・・それを用意すればいいんだね?来週までに」
「頼めるか?」
「師匠の頼みを断る分けないでしょ?大丈夫。ちゃんと用意できるから」
「・・助かる!ありがとう!」
穂炉は笑って答えた
本当に助かる
後は俺があれを用意すれば・・・
余裕だろうか・・・
そうして学園祭への準備が整っていった
第二十九話 終