第二十話 我が高校最強の男
次の日の朝
「おはよー・・・」
「あぁ、二人ともおはよう」
「いい匂い」
「今日の朝飯は鮎の塩焼きの定食だ」
並べた品は鮎の塩焼き、卵焼き、味噌汁、白米、そして漬物だ
「じゃあ、いただきます」
「やっぱおいしいなぁ・・・」
「そうか?」
「うん。・・・でも何かいつもと違う味・・・」
「あぁ、まぁな。今回の朝飯は普通に主婦が作るような一般的な味だからな」
いつも俺の味だと舌がそれに馴染んで一般的な物が美味しくなくなるから
時々こうやって作ってやんなくちゃな
「俺の味は飽きるだろ?」
「うん・・まぁ、ね」
「さて、どうするか」
「何が?」
「お前の事。家に住んでる事はもはや隠しても無駄かも知れん」
昨日優睹さんが言ってたしな
バレてるかもって
「とりあえず学校に行ったらいろいろ聞かれるかもな。大丈夫か、とか。もしかしたらここにいれなくなるかも」
「でも私はここにいたいな」
「大丈夫さ。瑠奈がここに住む事、校長は知ってるし。許可も貰ってある」
「そうなの?いつの間に・・・」
「瑠奈が家に住む事になった晩に電話で叩き起こした」
「いいの・・?」
「いいだろ」
生徒会長の許可もある
校長の許可も貰ってるし親の承諾も得てる
それに警察沙汰にもならない
「問題無しだ」
「ならいいけど・・・」
朝8:26
学校
「うっす」
「おぉ、龍」
・・・なんだこの空気
まるで今から尋問するみてぇじゃん
「・・・あぁ、火炎君」
「あ?・・・あんた誰」
「・・・・このクラスの委員長だ。ちょっと君に話しがある」
マジで尋問かよ
めんどくせぇ・・・
「何」
「君の家に今、櫻井さんを住ませているね」
「・・・・・・」
「単刀直入に言おう。櫻井さんを彼女の家に帰してあげろ」
・・・何を言い出すのかと思えば・・・
そんな事かよ・・・
「何で」
「僕は君たちのことを思って言っているんだ。そのままいると不純異性交遊になり退学になるかもしれない」
「・・・・それ本心?」
「・・え・・?」
「確かにこれは不純異性交遊になるかも知れない。けどそれは人に言われずとも分かるもんだ。俺はお前に注意されずともそれは知っている。だが、そうしてお節介を焼くのは願望をかなえたい本心があるからだ」
だいたい不純異性交遊なんて・・・
いまどきそうそうないだろ・・・
「お前も本心は・・・こんな警察に世話になったことがある暴力男より自分のほうがよりよい暮らしを提供できる。この男が櫻井さんを帰したら今度は自分の家に強引にでも住ませるんだ。それに彼女が寝てる間にいろいろとしてしまえば・・・・・だろ」
「うわッサイテー」
「こんなやつがクラス委員だったのか・・・」
「・・・なッ!・・嘘だ!僕はそんな事思ってない!」
評判ガタ落ちだな
「ちなみに俺は心臓の音とリズム、そしてお前の表情で嘘が分かる。そうだな、今俺が言った事は・・・・前半、住ませると言うとこまではほぼ正解だな」
最低だな
こいつ・・・
「どうした、何の騒ぎだ」
「あ、校長」
「校長先生、火炎くんが不純異性交遊をしてます。桜井さんを」
「彼の家に泊めてあげているんだろう?事情は彼女の母に確認済みだ。同居する事に関しては私が許可を出している。それに生徒会長も、警察もな」
うわ・・・
校長すげぇ・・・
警察にまでかよ・・・
「この話しについてまだ話すのならば校長室へ来なさい。聞いてあげよう」
校長室にまで行って話す奴はいないだろ
授業が始まる二分前
「・・じゃあ俺は寝る」
「いやだめでしょ」
zzz…
「はやッ!」
「えぇ・・皆さん」
先生来んの早いな・・・
「今日は一時間目の先生が風邪で休む事になられたので自習になります」
「やった、ラッキー」
「それと今日から新しく転校して来た子がいます。入ってきて」
「おい、龍。転校生だとよ」
「む?」
くそねみぃ・・・
「寝る。あとで教えろ」
「了解」
zzz…
「じゃ、自己紹介して」
「ぁ、北上鐘です。しょうって名前だけど女子です。よろしくお願いします」
「それじゃぁ席は・・・火炎君の後ろが開いてるわ。そこに座って」
「はい・・・ところであの人・・・寝てるんですが・・・」
「あぁ、気にしちゃダメ。それと起こしちゃダメよ」
「え・・?」
「今起こしたら大変な事になる。五月蝿くしたりしないでね」
「はぁ・・・」
BRRRRRRRRRRRR・・・!!!
「なんだ?」
「何あれ・・・どこの不良だよ。ありゃ近くの高校の奴らじゃねぇか」
「それにしてもうるせぇな」
zzz…
「まだ大丈夫か」
「・・なんか叫んでるぜ」
「・・・で、て、こ、い、く、そ、アマ?」
・・・・・・誰だ
「あ、起きちまったか。窓開けな。鐘ちゃん」
「え、あ、はい・・・」
「俺の眠りを邪魔したのは・・・」
開いた窓に走り出し
「お前らかぁーーーーーーーー!!!」
そこから一気に飛び降りた
「えぇーー!?」
「おぉ、キレてるキレてる」
「え!?あ、あの、え!?」
「あぁ、鐘ちゃん。よく覚えておきな。この学校には起こしてはならない最強の人間がいるてことを」
「・・なんだこいつ」
「気にくわねぇな・・・殺るか」
「殺れるもんならやってみな、クズ共!!」
「上着とシャツを脱いで半袖になったか・・ありゃ生きる保障は無いな・・・寝起きの龍は間違いなく無敵だ。物を使って殴っても、飛び道具を使っても無意味」
「鉄パイプは体で受け止めるし、銃弾は指と歯で止める。むしろ頭から出血していても相手が動けなくなるまで攻撃し続けるからな」
「くっ、喰らえ!」
バイクで攻撃か!?
「それなら・・・こうだ!!」
「馬鹿め!車輪に腕を突っ込みやがっ・・て!?」
「車輪が破壊された!?」
「俺らはあいつの事をこう呼ぶ。寝起きと」
「スリープ・アップ・・・」
「まぁ、黄眼の龍とも呼ばれている」
「こうがん?」
「黄色の眼の龍だよ。キレてたりするとそうなる・・って話してる間に終わったな」
「・・・地獄絵図だなありゃ」
そこにあるのは骨を折られ動けなくなった血だらけの不良共だった
「あぁ、もしもし?うちの学校に動けなくなった奴らいるから逮捕しといて。じゃ」
めんどくせぇなぁ・・・
「ん?」
「あ・・・」
女が何でここに・・・
「お前もあいつらの仲間か?まぁ、違ぇか。うちの制服着てるし。何のようだ」
「・・いや、用は無い」
「そうか・・・・お前、何か誰かに何か聞いてほしそうだな」
すれ違いざまに龍はその少女の表情から気持ちを読んだ
「え・・?」
「何か相談したい事でもあるなら俺が聞いてやるよ・・・・俺を知ってればな」
龍は上着を羽織って戻って行った
「・・・・ん?・・これは・・・」
「お、戻ってきたか」
「寝る。起こすな」
「・・・座った瞬間に寝やがった・・・」
zzz…
「パトカーだ・・・あーあ、連行されてら、あいつら」
「・・火炎君っていったい何者・・・」
昼休み
「腹減ったぁ・・・」
「飯だな」
「なぁ、お前。一緒に食うか?」
「え!?な、何で?」
「だって転校生だろ?」
友達まだいねぇじゃん
「鐘!」
「ん?」
「あんたっ!何やってんの!!」
「のわッ!!」
な、ナイスキャッチか・・・
って俺狙われてる!?
しかも
「広辞苑・・・!?」
「あんたっ!鐘に何かしたの!?」
「てめぇ誰だよ!」
いきなり物投げんな!
「私は鐘の姉、楓よ。あんたは?」
「俺は火炎龍。そいつの友達だ」
「・・・鐘、もう友達が出来たの?」
「え、う、うん・・・友達だよ」
「そう、もう友達がしかも一人で出来たなんて・・・」
今までの鐘はどんな奴だったのか・・・・
「なら私たちも友達よ」
「今日だけでいっぱい友達が出来たのね」
「・・・うん!」
とりあえず自己紹介がすんだところで
「じゃあまぁみんなで昼飯でも食いに行くか」
「・・・どこ行くんだよ」
俺は静かに上を指した
「ここじゃ静かに食えねぇだろ」
「確かに・・・」
瑠奈の周りに人だかりが出来まくる
・・だろうからな
「先行っててくれ。出た瞬間ドアは閉めろよ」
「・・・わかった」
・・・ピシャン
ガガガガガガガガ
「な・・・」
「・・お前らはもう出入り出来まい」
鉛筆を思いっきりドアの周りに投げさした
「そしてここは二階。飛び降りたら骨にひびが入る高さ。全員ここから出られなくなった、俺以外、な」
俺は窓から飛び降りた
そしてハサミ付きの紐を屋上に投げ上げた
「お、龍のハサミ付きの紐だな」
「・・これって忍者とかが使うような感じの物?」
「そ、でもこれは上に誰か一人いないと出来ないんだけどね。ハサミを柵に巻きつけて取れないようにハサミを開いてってな」
「これ本当に落ちないの?」
「意外とな」
「よぅ、やっと来たぜ」
「どうやって来たの・・紐だけで・・・」
腕力があれば可能だろ
たぶん
「ま、そんな事気にせず飯にしようぜ」
皆それぞれ自らの弁当を持ち出した
「いただきます」
「・・・ことろでさ、あんた、火炎・・だっけ。龍でもいいかな」
「別に。むしろそうしてくれ」
「わかった。今朝のって龍がやったんだよね」
今朝の・・・
寝ぼけてたからいまいちハッキリしない
「まぁ・・・」
「鐘に聞いたらケンカ、相当強いんだって?」
「・・・何が言いたいんだ」
「私と勝負して」
・・・は?
何で・・・?
「これでも私は前の高校で学年一番だったのよ」
「・・・・で?」
「だからあんたを倒してまた一番になるのよ」
「あ、そ。ご自由にどうぞ。一番になりたいのなら自分で名乗ればそれで一番だ」
めんどくせぇから・・・
自分で名乗っとけよ
「名だけじゃあんたに勝てないの。だから勝負よ」
しゃあねぇなぁ・・・
第二十話 終