第十五章 引越しと・・別れ!?
「おい坂野!そらガセじゃねぇだろうな!」
『あぁ、確かだ!桜井の母親から電話があったんだ。さっき家を飛び出したって』
・・家を・・・?
『俺はこれから探しに行く』
「わかった。俺も探すぜ」
『助かる!じゃ、あとで』
「あぁ」
ピッ・・・
「龍君、どうしたんだい」
「・・爆朱さん、俺出かけるんで二人をお願いします」
みんなには迷惑かけられない
「じゃあ行って来るから」
「気をつけてね」
俺は頷き上着を取って走った
・・どこだ
・・・どこにいるんだ・・!
「龍!」
「・・坂野!」
「いたか?」
「いや、いない」
「こんなに探してもいないなんて・・・」
他に探してないところは・・あそこしか・・・
「待てよ・・・」
「どうした・・?」
・・・・あそこか・・!
「坂野!お前はもう帰れ」
「な・・!わかったのか。居場所が」
俺が小さく頷くと坂野は
「絶対につれて帰れよ、炎」
と言い残し自宅へ引き返した
「わかってる」
俺たちが唯一行ってない場所・・・
瑠奈のお気に入りのあの場所ならきっといる
龍はそう想いある場所へ向かった
そこは壁を挿み出来ている崖の上に作られた小さな公園
枯れる事無く咲き誇る一本桜が描かれた壁と海の見える場所
「・・あーあ・・なんで私、うちを飛び出してきちゃったんだろ・・・」
『・・瑠奈、ちょっといい?』
『どうしたの?お母さん』
『あのね、瑠奈。今度のお父さんの転勤先にいるのが結構長くなりそうなの。それでね・・・』
「・・・何泣いてんだよ瑠奈。お前らしくない」
「・・龍・・・・」
瑠奈は後ろを向いた
「・・な、何でこんなとこにいるの、かな?」
強く振舞ってる・・・
「坂野から連絡が来たんだ。お前が家を出てったって」
「そ、それで私を探して理由を聞こうって?龍君も、ひどいことするなぁ・・・」
「・・んなわけねぇだろ。理由を言いたくないやつに無理に聞こうなんぞ思ってない」
「じゃあ、何で?何で来た、のかな?」
「・・・心配だったからに決まってんだろ」
「え?」
「お前は、学校の外でも人気あるし、その、俺もまぁかわいいとは思ってるからな。どこぞの馬鹿どもに何かされてるかもしれなかったし・・・」
あぁ・・言っててハズい・・・
「それに瑠奈の親には俺も借りがあるからお前は護らねぇとって・・・」
「・・龍・・・」
「・・・・・・確かにお前にあったら理由を聞こうと思ってた。でもお前の眼は聞いてほしくないって眼をしてるからな・・・それに・・・」
「・・それに・・・?」
「・・・男でも女の涙には弱い。そんなんじゃ聞こうにも聞けん」
そんな今にも泣きそうな涙目じゃ・・・
「・・言いたくなったら話せばいい」
「・・・龍・・・・・」
「・・・そんな声で呼ぶな、くすぐったい・・・」
「・・ねぇ、ちょっと・・胸を借りてもいい?」
「・・・・・あぁ・・いいよ」
トン・・・
瑠奈は龍の胸に頭を乗せ
「・・ありがとう・・・・う、うわーーーーーーーーーん」
思いっきり泣いた
「・・ごめんね、龍・・迷惑、だったよね」
「・・・いいや、んな事ねぇよ。俺は瑠奈の太陽みたいな笑顔のほうが好きだから・・・」
「・・龍・・・」
「・・・そういえば瑠奈、腹へってねぇか?」
「え、べっ、別に・・・」
くゥ〜〜〜・・・
「ッ!!・・聞いた・・?」
「・・いや・・聞いてない」
「・・うそ、聞こえたでしょ。顔がニヤついてるもん」
「じゃあ何か?女子は自分の恥ずかしい事をはっきり言ってほしいと・・・?」
「そ、そんな訳・・って近いよ!」
「ぉ、悪い悪い」
ふふッ・・正直でよろしい
「さて、じゃあ行くか」
「え、行くって・・?」
「決まってんじゃん。俺ん家だよ」
それ以外でどこへ行くと・・・
「い、いいや・・私、もう帰るね」
「でも家を飛び出してきたんだろ?居辛いんじゃないのか?」
「・・・・・・」
「いいから来いよ。飯でも食わせてやる」
「・・う、うん。ありがとう」
・・やっぱり笑ってる顔のほうがいいな
「あ、そうだ。今日家に竹内が泊まりに来てるから」
「え、何で?」
「竹内んとこの親な、今旅行でいないんだって。それで都合のいいうちに泊まりに来てるって訳だ」
「ふぅん・・・」
歩き出してから少しして龍は話し始めた
「・・瑠奈さぁ」
「何?」
「お前がさ、幼稚園にいた時、卒園三日前に引っ越した男の子覚えてるか?」
「え、うん。特徴的な名前だったから」
特徴的ねぇ・・・
「なんて名前?」
「え、えっと、焔竜だったけど・・・それが?龍には関係ない・・・」
「・・やっぱり分かってなかったか、月ちゃんは」
「・・・・月・・ちゃん・・・・・その呼び方・・もしかして・・・」
「そ、俺がタツだよ。月ちゃん」
あだ名か・・久しぶりに使った・・・
「・・・・本当に・・?」
「あぁ。俺が焔竜だ」
「でも漢字だって名字だって違うのに・・・」
「俺の一族は変な風習があって火炎一族が結婚したら子が産まれ六年の年を過ぎるまで『焔』の名を使うんだ」
小さな火が炎になるって感じだろうか・・・
「でも龍の名前は?」
「あれは俺が簡単の方でって事で面倒臭くてな」
「・・でもやっぱり信じられない・・そのあと引っ越した私と同じ行き先だったなんて・・・」
「証拠か?」
「いや・・別にそこまで・・・」
「証拠ならあるぞ?」
俺はそういいながらポケットから黒い物体を出した
「これ、は・・?」
「俺の思い出の品」
「思い出・・・」
「・・・お前も持ってるだろ?暗くて見づらいけどさ」
「・・・・・・これって・・・」
「そう、これは俺たちの通っていた幼稚園、桜幼稚園の卒園の証さ」
それは黒革の手帳
そこには小さな子供たちの写真がたくさん貼られていました
「・・これ、みんな龍の写真だね?」
「あぁ、これはな」
「これは・・?」
「いや・・っとしてる間についたぞ」
「ただいま」
「あ、おかえり、龍」
「・・おじゃま、します・・・」
「櫻井さん、いらっしゃい」
「ルルに竹内、ちょっと俺たちは二人で話がある」
「わ、わかった・・・」
なんだかしんみりした空気の中
こと・・・
「食えよ。即席チャーハンだけど」
「あ、ありがとう・・・」
「・・で、何であんな所にいたんだ?」
「・・・・・・・あのね、私、引越しするかもしれないんだ」
「え・・?」
引越し・・・
「うちのお父さん転勤が多くてずっと単身赴任。でも今度の場所は長くいるみたいでそっちに引っ越さないかってお父さんから電話があったみたい。お母さんは行きたがってるんだけど私はここにまだ居たいんだ。ってごめんねこんな話し龍には関係ないのに・・じゃあ食べ終わったしそろそろ・・・」
「ちょっと待ってろ」
「・・?」
「ほら、デザート」
「あ、ありがとう・・・」
「・・お前はここを離れたくないんだよな」
「・・・・うん・・・私はここが大好き。でも親の事を考えると引越しに賛成したほうがいいのかなって・・・」
「・・・親なんて考えるな。自分の正直な気持ちで答えを出せ。お前は引っ越したくないんだろ?」
「・・・うん・・・」
「ここが好きなんだろ?」
「・・・・・うん・・」
「ここを離れたくないんだろ?」
「・・・・・・・うん!」
ニカッ!
やっと本心が出た!
「泣くなよ。そうとなれば話は別だ!竹内!」
「え!?あ、はい!」
「話は聞いてたな?こいつに部屋とか用意できるか?」
「え、いや・・わかんない・・・親が許さないかも・・泊まりなら・・・」
「・・そうか・・・」
じゃあどうするか・・・
「あ、あの・・な、なんでそこまで・・・」
「お前が引っ越したくないのに行けなんていえるか!行きたくないなら住む場所を探さねぇと!」
「それなら私の家で・・・」
「女子高生が一人家で住むなんぞ危険すぎる!安全な場所・・・そうだ!」
この手があった!
「え?」
第十五章 終