第十三話 火炎家のレストラン
「泊めてくれてありがとね、龍」
「いや、いいよ。女の子、しかもお嬢様が一人で家にいるより安全だからさ」
「・・やっぱ変わらないねあの時と」
「まぁ、こういう性分だからな」
ほうっておけないって言うのかな
「・・ねぇ、竹内さんと龍ってどうやって知り合ったの?」
「・・・俺はあんまし覚えてねぇな」
「私はっきり覚えてるよ。・・あれは八年前、雪の降るとても寒い日だった・・・
私はまだ何も知らない幼い子供だった。
私は家の庭で一人で遊んでいたの。
そしたらいきなり後ろからつかまれてそのまま連れ去られたの。
でもその時龍が来て私を連れ去ろうとした人たちをあっという間にKOさせて助けてくれたの。
それでたまたま同じ中学、高校になってそれから恩返しとして龍の部下的な役割をしてるんだ」
「へぇー。すごいね、龍」
てかあの時はたまたま散歩してただけなんだが・・・
「あの時助けてもらってなかったら私んちは今頃どうなってたか・・・本当にありがとう」
「それはもう聞き飽きたから言うな」
「ごめんね♪」
「それも聞き飽きた」
「あはは・・・」
・・・会話のネタがねぇ・・・
「俺、寝るわ」
「え?何で?」
「最近寝不足でな。かなり眠い」
「わかった。おやすみ、龍」
「あぁ」
それから約二時間後・・・
「・・あ、そろそろ龍を起こそうか」
「た、竹内さん待って!」
「ん?どうしたの?ルルちゃん」
「龍を起こすのはちょっと危険だと・・・」
「あ、大丈夫大丈夫。私、起こし方知ってるから」
二人は俺の部屋の前にやってきた
「竹内さん、起こし方って?」
「まぁ、見てて」
そぉ〜っと・・・
「zzz・・・」
「シーッ・・・」
「?」
・・・パチン
竹内は俺の額にでこピンをした
「いっ!・・・」
「起きた?」
「・・おぅ、竹内か。あぁ、起きた起きた」
「え?何で?」
「・・ルルはしらねぇか。俺、母さんに起こさせる時必ずでこピンで起こされてな、それ以来でこピンでないとすっきりと起きれねぇんだよ・・あはは」
何でだろう・・・
「まぁ、とりあえず。今何時だ?」
「今、五時二十分」
「・・じゃ、晩飯でも作り始めるか。何がいい?」
「私は何でも」
「私も何でもいいよ」
それが一番たいへんなんだけどな・・・
「龍、今日の夜ご飯何?」
「みんな大好きカレー、にしようとしたけどカレールーが無かった」
「どうするの?」
どうしようかな・・・
「・・龍の家って面白いね。和風のようで洋風が混じってるみたい」
「あぁ、それはな・・・ちょっと長い話になるがいいか?」
「うん。何か面白そう」
「昔、うちは貧乏だった俺のじいちゃんはやってた仕事をやめて小さな喫茶店を開いたんだ。
その喫茶店がすごく好評よくて大成功。
そしてじいちゃんは調子に乗ってレストランを開いた。
それがまた大成功。それで金持ちになったんだ。
んで和が好きだったじいちゃんはこの家を買って家具も和風の物を買った。
それから父さんが生まれてじいちゃんのレストランを継ぐことになった。
これもまた味があまり変わらず好評がよかった。
洋が好きだった父さんはじいちゃんの形見と家宝を残してほとんどの家具を売り、洋風の家具を買った。
それで家は和と洋が混ざってるんだ」
「へぇー、そうだったんだ」
脱サラしてレストランって・・・
すごいよな
「龍の家ってみんな料理がうまいんだね」
「・・かもな」
「ねぇ、レストランの名前って何?」
「確か・・Vulcan」
「バルカン?」
「ローマ神話の火の神。実名はVulcanus、Mulciberとも呼ばれていた。家は名字が火炎だから炎関係の名前にしたかったらしい」
だったら炎の神にすりゃよかったのに・・・
「バルカン・・・それってもしかしてレストランVulcan Solのこと?」
「あぁ、そうだ。ソルってのは太陽って意味もあるが太陽神の名前でもあるんだ」
「やっぱり。そのレストランってすごい評判がいいって聞いた。食べに行った人みんなおいしかったって。評論家の人も三ツ星レストランに任命するって」
・・やっぱ有名なのか・・?
「・・・そのレストランって今どうなってるの?」
「あぁ、本当は父さんを継いで俺が料理長になるんだが、俺はまだ学生だから料理のうまい親戚のおじさんに料理長を頼んでるんだ」
つぶしてなければ・・・
ドンドンドン・・・
「お、噂をすれば」
「こんばんわー。久しぶりにご飯つくりに来たよ」
第十三話 終