そんなにも苦しい顔でどうしたの
「そんなにも苦しい顔でどうしたの?」
あなたはその済んだ瞳でじいっと私の顔を覗く。
「何でもないよ。ただ、その――すこし、すこしだけ。」
「すこしだけ、何?」
瞳。目。まっすぐな君の顔。あなたの目に映る私。
「やっぱり、言えない。」
「なんでよ。」
「なんでも。」
あなたが少し息を吸う。
呼吸。
吸って吐く。
大きな息が漏れる。
「……わかった。いいよ、無理に話さなくても。いつか、そうだね――きみが君になったとき、話してくれればいいさ。」
優しい笑み。でもどこか憂いを帯びていて、悲しい笑み。
「……あなたはやっぱり優しいね。」
「優しくはないさ。ただただ君を憐れんでるだけさ。」
「そっか。」
「うん。」
外は晴れ、時々曇のち雪。
移り変わる時の中で、やっぱりきみだけが、変わらなかった。