第08話 変わらない日常。
書き溜め分を全部消化しました。
これからペースが落ちるかもしれませんが、今後もよろしくお願いします。
(前略)
俺はクリスマスという日が嫌いだ。
何故ならクリスマスは遠く離れたところで生まれた神の息子の誕生日であり、それを祝う日であるはずだ。しかし、日本ではカップルと呼ばれる者達が無駄な時間を過ごす日 という認識である。
しかもその数日後には大晦日、正月とまた寺や神社をフラフラと徘徊する日が存在するのである。
神道が定着する日本でリア充がフラフラ徘徊する日が2つもあるのだ。
しかも遠く離れたところで生まれた神の息子を祝う日であり、本来はそのような目的では無い日である。
「『つまり、日本でのクリスマスという概念は必要が無いと思うのだ』 読み終わりましたが、何か問題でも?」
「逆に問題が無いと思うのかね?」
「うーん。あえて言うなら文章力不足ですかね?」
「本当にそう思っているのなら君はどうかしているぞ?」
「何を基準に正常でどこからが異常なのか定義してもらいたいですね」
「屁理屈を言うな。と言うか、何故君が書くものは全てが『リア充爆発しろ』に帰結するのだ?」
「それは全ての事にリア充が絡んでいるという事じゃないっすかね?」
「君の考えが腐りきっているだけだと思うが?」
「てか、これ世界史の宗教についてのレポートっすよね? 先生って数学担当じゃないんですか?」
そう聞くと先生が一瞬驚いたような表情をこちらに見せる。
「今日、なんで君の担任の先生が学校に来てないのか知らないのかね?」
今日、担任の鵜飼先生が休みだったのだ。
クラスの話をよくよーく聞いている俺は『季節外れのインフルエンザ』や『交通事故』や『食中毒』やら、根拠のない噂を耳にしている。
まあ、詳しい話は誰からも聞いてない というか聞く友達がいないけどな。
てかなんで俺自虐してるの? ってこれ2回目だよな?
「一身上の都合によりって奴ですかね?」
「つまり、知らないということか。ま、まあ とにかく、私が君たちの臨時の担任教師になったからには君のことをガリゴリとしごいていくからな」
「ガリゴリとしごくのではなく、ビシバシと指導していくのが普通だと思います。というかガリゴリって暴力を揶揄しているとしか思えないのですが」
「そんなことはどうでも良い、取り敢えずお前はこれを書き直して世界史の海原先生に出しに行ってこい。期限は明後日までらしいからな」
「じゃあ書きなおすためにも時間が必要ですね。
なので今日の部活は休ませていただきますね」
「ほほう、言うようになったな小童よ」
そう言うと先生は指をパキポキと鳴らし、拳を作る。
にこりと笑ったその顔に付いている目は全く笑っていなく、むしろ血走った目をしていた。
「じょ、冗談ですって。じゃあ部活に行って来ます」
「全く、最初からそう言えば可愛いものを」
最初から素直に従うような性格じゃないと知っているからこその脅迫だろ。
そう言おうと思ったが、身の危険を感じたのでやめておいた。
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部室の前まで来るが、やはりまだ慣れないようで、中へと入るのをためらってしまう。
深呼吸をして心を落ち着かせ、扉をからりと開ける。
しかし、そこには冷徹悪魔美少女はおらず、鞄もなにもなかったのだ。
今日は開幕と同時に俺のメンタルを壊すべく飛んでくる暴言や嫌味が飛んでこなく、新鮮な気分だ。
コンコン とノックが二回される。
ノックをするという事は、部員である雪奈川と顧問である桜井先生ではないという事
つまり、導き出される答えは————
「失礼しまーす」
入って来たのは、肩にかかる茶髪 、よく通る声、いつもクラスの中心にいるスクールカースト上位者の深見 岬だった。
「・・・・・ヒビヤ?」
「普通に名前違うのだが。んで何の用だ?」
「なんであんたここにいるの?」
「ここの部員だからだ。んで何の用——」
「ほかの部員はいないの? あんた頭悪そうだし、頼りにならないっしょ」
「人の話を聞け、何の用だ?」
「それについては相談箱に入れたけど?」
「悪いな、それを回収するのは俺の役割じゃないんでな」
「まあいいや。あんたさ、茶道みたいな日本文化について詳しい?」
「いや全く、もう1人の——」
俺の受け答えを遮るようにからりと扉が開く。
「あら? 相談者かしら? 遅れて悪いわね。1人にさせてしまうなんて不覚ね」
「おい、俺もいるぞ?」
「あー ヒビヤくん、居たの?」
こいつはいちいち何か言うたびに俺を傷つけないと気が済まないのか? サディストなのか?
「あ、雪奈川さんじゃん。あんたもここの部員?」
「そうだけれど、この『茶道、華道などの日本文化について出来るだけ教えてほしい』っていう相談をしたのはあなたかしら?」
「そうそう、私さ友達と茶華道部を作ろうと思ってるんだけどさ〜、初心者でなにも知らないから教えてくれないかな?って思って出したけど」
「そう、なら1つ言っておくわよ。
礼儀作法が一朝一夕で身につくと思わないことね。 あと、なにを教えようともあなたの努力次第よ」
「それくらい分かってるって、私が教えてほしいのは礼儀作法もだけど、それ以外の茶道に関してとか華道に関しての知識を教えてほしいの!」
「それくらいのことは自分で調べるべきだと思うのだけれど。それに部活を作るのなら顧問も必要よ?」
あっれ?完全に俺 空気じゃね? 深見と雪奈川の間に位置してるんだけどな。
もしかしていつの間にか死んでいる系なの?
「顧問は心当たりあるから問題ない。
取り敢えず、日本文化に詳しいの?詳しくないの?」
「……まあいいわ。ヒビヤくんにもちゃんとこの部の活動を見せておいた方がいいと思うし」
「っえ!? ヒビヤまだ居たの?」
「さりげなく俺を空気として扱っていたことを認めるのやめろ。そして俺はヒビヤじゃないっての」
「じゃあ、行きましょうか」
「何処に?」
「部室に決まっているでしょう?」
そう言い雪奈川は俺たちを無視して教室の外に出る。
それを追いかけて俺と深見も教室の外へ出る
「ちょっと?雪奈川さん、どこに行くの?」
「部室よ。それ以外にないでしょう?」
「だから、何処の部室かを聞いてるんだって!」
雪奈川は歩くのをやめ、不思議そうな顔をしてこちらを向く。
「何処って、茶華道部の部室に決まってるじゃない?」
普段無表情に近いのに表情筋が豊かで色んな顔が出来るのだ、と無駄な知識が増えた。
その間、深見はポカンとして固まっていた。
安心しろ、多分俺もそんな表情をしている。
「あんたね〜、まだ部活さえも作ってないのに部室なんてある訳——」
「あるわよ? あなた達は学校の見取り図を見ていないのかしら?」
「見取り図は見たことあるけど茶華道部 部室なんてなかったぞ?」
「まあいいわ、ついてこれば分かるもの」
そう言い雪奈川はまた歩き始める。
俺と深見は雪奈川について行く。
深見が凄く不満そうな顔をしていたのは秘密にしておこう。
「ついたわよ」
雪奈川が東校舎の2階の空き部屋の前で止まる。
「ここが茶華道部の部室?」
「そうよ、まあ旧茶華道部 部室なんだけどね。 まあ、去年廃部となったばかりだから備品もそこそこあると思うわ」
そういうと、雪奈川は旧茶華道部 部室の扉を開ける。
中は結構綺麗で、一角に畳が敷かれていた。
座布団は綺麗に積み重ねられていて、まだ使えそうな様子だった。
「へぇ〜、結構 部室の中 綺麗じゃん。座布団も置いてあるし、もう今日から始めれそう」
深見は部室の中に入り、畳の上にあった座布団を一枚敷いて、正座をして座る。
「うん、座り心地も結構——」
「深見さん、その時点でもうダメよ」
深見が座布団に座った感想を述べているのにかぶせて雪奈川の指摘がはいる。
「え、座り方って正座じゃ不味かった?」
「そうじゃないわ。座布団の四面の内の三面に縫い目があるの分かるかしら?」
「確かにあるわね、なにか意味でもあるの?」
「縫い目の部分は切れ目の部分、つまり縁の切れ目とされることがあるのよ。
だから縫い目のない部分を向けて縁が切れないように とゲン担ぎをするのよ」
「お前、凄いな。 なに?雪奈川ってグーグル先生なの?」
「このくらいは一般常識とは言わないけど嗜むくらいはしておいて損はないわよ」
「あーそっすね。はいはい」
適当に返答をしてやり過ごす。
雪奈川 零下がどれだけ変わり者で、毒舌で、ぼっちであろうと、やはり女子なのだろう。
こうやって同性の友達と何かをしている時が一番楽しそうに笑って、楽しそうに過ごしている気がする。
そんな楽しそうにしている2人の邪魔をしないようにそっと俺は旧茶華道部 部室 もとい茶華道部 部室を静かに出るのだった。
「あ!ひびのん、どこ行ってたの?探したよ!」
「んあ?」
「んあ? じゃないよ! 部室行っても誰もいないし探しちゃったよ!
あれ、今日はユッカと一緒にいないの?」
「雪奈川なら ほれ、そこの茶華道部 部室で深見さんに茶道について語り合ってるよ」
「そうなんだ。ひびのんは参加しなくていいの?」
「俺には縁のない話だ。
ま、雪奈川も意外に楽しそうだったし わざわざその雰囲気を壊すようなことしねえよ」
「じゃあ、今日はこれからどうするの?」
「もちろん帰るつもりだ。世界史のレポートも再提出だしな」
「じゃ、じゃあ 一緒に帰ろ!」
「………はい?」
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