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海辺  作者: こここ
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枯野1

十の地方公共団体(都市)と統治機構である管理棟が直接管轄する十七の衛星都市で構成されるこの地には、ある風土病が存在する。

百二十年前に旧世代の人々がこの地に越して以降、その病は市民と共にあり続けた。

四肢末端結晶化病変

俗称を水晶病という。


十雪市の北東部に位置する時雨坂には、水晶の指を持つ人々が眠る施設がある。

十雪市水晶病市民対応所という正式名称があるが、市民には単に対応所と呼ばれている。

もともと居住区として計画された区画だったが造成途中で中止となり、広大な更地だけが残った。

現在も他に施設は何もなく対応所の建物だけが広い野を渡る緩やかな風に吹かれている。

高架鉄道の駅がたった一つという交通の不便さには、職員のみならず市民からも度々不満の声があがるものの、市議会で積極的に移転案は出た事がない。

水晶病市民対応所は管理棟指導下にあるが、運営は各都市で任されている。

その為か対応所所長は名誉職のようなものになり、実質の責任者は副所長が担っていた。


森崎は机の上に新聞を置くとふっと息を吐いた。

新聞には森崎の名前がある。

管理棟所属である森崎が都市である十雪市の対応所副所長の責を担う事を問題視する記事が載っていたのだ。

管理棟の越権行為ではないか、都市の自治は守られるべきという趣旨が述べられている。

森崎の副所長着任は市長直々の指名だったとも新聞には書かれていたが、事実は逆で森崎から市長に持ち掛けたものである。

森崎の名前を出しておきながら、取材の一つも申し込まれたことさえなかった。

それ自体は大した記事ではない。

新聞は反市長に与するもので、市長を親管理棟派として糾弾したいらしい。

しかしながら実際のところ、あの市長ほど管理棟と対立している人物もいない。

案じるべきは最近起こっているその議会の一部議員と市長との間の摩擦だ。

こうした記事が出るのも一部議員の働きによるものだろう。

権力にすり寄るつもりは無いが、政治には目を光らせておかないと足元を掬われかねない。

何人かの知り合いの議員の顔を思い浮かべ、その内の一人へ連絡をし明日の夜会う約束を取り付けた。



森崎視点になって書ける事が増えて少しだけ書きやすくなりました。

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