その先は
源二が穴に入ってから、一夜明けた。
正一はまったく寝付けなかった。晩御飯もろくに食べず、お風呂に入ってもすぐに上がってきた。宿題にも集中できず、寝ようと思ってベッドに横になっても、源二のこともあって、心中穏やかではなかった。
そのまま戯れに時は過ぎていった。
何を考えようとしているのか分からず、考えをまとめようとしてもぐちゃぐちゃになって、考えること自体が嫌になった。
気づかぬうちに、月は西に傾き、東の空が白んできた。
正一は起きた。着替えて、他の家族を起こさないように家を出た。なんだか落ち着かなくて、あてもなく歩いた。
空の端が、赤くなり始めた。
歩いていっていると、また、穴の前に来ていた。
「源二......。三波......。なんで皆、過去にいっちゃうんだ......」
悲しみに頭を抱えた正一に、一つの案が浮かび上がる。
それを頭の中で何度も繰り返し理解しようとし、その度に頭をブンブンと振った。
「そんなことしたら、俺も一緒だ!ここから、俺はここから立ち直らないと!」
そう言い聞かせても、穴の入り口を見ると、そこに吸い込まれていくような感じがした。
「......」
一歩。二歩と。足は勝手に前へと体を動かしていく。歩を進める度に、正一の目は輝きを失っていった。
「源二。......三波」
穴に手を伸ばす正一は、もはや過去しか見えていなかった。そして彼もまた、呑み込まれていった。