表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

穴・二

 やっぱり、腹痛とこの穴には何か関係があったんだ。これで、それがようやく確認できた。

 しかし、問題は未だ視界を晴らしてはくれない。先の見えない穴のごとく、黒々としていた。

「なぁ、正一。あれ、穴か?」

 声が震えていた。正一が横目で見やると、身体中がぶるぶると小刻みに震えていた。

「そうだろうな。それ以外に、あんなものが存在する理由も、根拠もない」

 それを聞いて、ふっと震えは止まった。

 まずい。直感的に、正一は感じた。

「なぁ、正一。あれ」

「それ以上何も言うな!」

 一瞬、時が止まったようだった。二人の声も、鳥の鳴き声も、風の音さえも、その時だけは聞こえなかった。

 一瞬。

「な、何だよ。どうしたんだよ正一」

「いいから、ここから離れよう。いますぐ」

 腹のざわつきは強くなってくる。今すぐここを離れないと、何かが起こると言うように。

 正一は源二の腕を無理矢理に引っ張って、ハンドルを反対方向へと向けさせた。そこから前にぐいぐいと引っ張るが、源二の体は一向に動かなかった。

「なんで、お前はそうするんだ」

 源二が問うた。

「今すぐここを離れないと、ヤバイ気がするからだ」

 正一はいつの間にか、深いシワを眉間に集めていた。

「あそこに穴があるんだぞ。もしかしたらあそこにみなみんがいるかもしれないんだぞ」

 源二も、同じだった。

「そうかもしれない。けど」

「今ならまだ、助け出せるかもしれないんだぞ」

「今だけは言うことを聞いてくれ。源二」

「今を逃したら、一生後悔するかもしれないんだぞ!」

 源二は振り払った。正一の手を。

 胸が、痛い。

「源二!」

「正一。さっきの勘には恐れ入った。お前がいなきゃ、この穴は見つけられなかった。だがな......」

「源二、お願いだ」

 腹の痛みがどんどん深くなっていく。

「ここからは俺が、俺の力で、何とかして見せる!」

「やめろ!」

 源二の耳はとうに塞がっていた。正一の忠告も聞かず、穴の中へと突進して行く。

 とぷん、と。そんな音が聞こえてきそうなほどに、余裕をもって、ゆったりと、穴は源二を、飲み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ