修正・三
気づくと、顔に汗が吹き出すのがわかった。
顔だけじゃない。背中や体のそこかしこから、嫌に冷たい汗が流れる感覚が伝わってきた。
「じゃ、じゃあね」
三波は顔を伏せて走り去ってしまった。
追おうとしたが、足が動かなかった。張り付いて剥がれないとでも言うように。
意識が落ち着いてくると、周りからの声がだんだんと耳に入ってきた。
「何だったのあれ?」「嫌がらせ?」「あれ転校生だろ」「何やってんだよあいつ」
次々に、四方八方から言葉が刺さった。
異が破裂しそうになってくる。
胃液が逆流してきそうな感覚に襲われる。
だめだ。こらえろ!
必死に我慢していた正一の視界に、ふっと何かが映りこんだ。
「いった!」
映りこんだそれは、認識を凌駕する勢いで視界の全てを奪った。
一瞬頭が真っ白になった。後ろに倒れそうになったところを踏ん張って視界を元に戻すと、拳をこちらに向けて静止している源二がそこに佇んでいた。
正一が文句を言おうとすると、すかさず早歩きで近づき、今度は痛々しい音が響くくらいの勢いで頭にげんこつを食らわせた。
「いてえっつってんだ! なんだ! なんのつもりだ!」
負けじと正一が大声をあげると、源二は腕をつかんで歩き出した。
「ここでこれ以上いてもお前の変な噂がたつだけだ。はやく逃げるぞ」
「......」
源氏の目は、至って真剣だった。




