修正・二
「須藤君、頭をあげてよ」
三波から、そんな言葉が出てきたのは、あれから数分後のことだった。
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正一の頭はフル回転していた。
三波との仲を、普通のものに戻すために出来ることは何かを。
いや、そうするのに、必要なことは何かを。
「あの時はごめん!」
謝罪の言葉。まずは絶対これだ。
「何だか、あの、昨日の声かけたときは気が動転しててさ。ついおかしなこと言っちまったんだ。だから、ごめん!」
理由の説明。それから、頭を下げること。
相手への気持ちを、身をもって示す。
そうすれば、いいと思ったんだ。
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そうして、最初の三波の言葉へと時間は繋がる。
言われても正一は、すぐには顔をあげなかった。
謝罪の気持ちを、まだ充分に伝えていないと思ったから。
しかし、それは逆効果だった。
「須藤君、あの」
相手が何かを言う。
そのままの体勢で、聞こうとしていた。
「顔、あげてみてよ」
それは、懇願のように弱々しい音。おもちゃを買ってもらえずにいじけたこどもが出すような、強い主張を含む声。
三波の言葉に従って、正一は顔をあげてみた。すると、自分と三波の周りから数十人の視線が送られてきているのに、ようやく気がついた。




