表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄菓子屋怪談  作者: 山和平
2/2

作中神話要素解説

神話要素が無いのですが、読んで楽しめる内容なら幸いです。

◇ムラサキババア 【都市伝説】

 1970年代に登場する学校の怪談系都市伝説の中でも最強クラスの武闘派。

 主な出現ポイントは女子トイレ。

 紫色の着物にマフラー。紫色の唇。長い髪に長い爪。

 「ムラサキババア」と呼びながらノックすると現れると言う召喚方法の他、隙間、タイルのひび割れ、鏡、果ては天井の穴から出現する。

 その行動も、「何色が良いか?」と言う色問い型だけではなく、問答無用で襲ってくる、「足一本寄越せ」と襲ってくる、など基本ヤバ過ぎる。 

 標的を追うその足はターボばあちゃん並。

 足を切り落とすカシマレイコ。

 退散の条件を満たさない限り逃げられない赤マントの追尾性と無敵性。

 首絞め、内臓抜き取り、爪などの多彩な攻撃。

 その戦闘力は、キング・オブ・アイアンフィストどころかモータルコンバットでも対戦相手を文字通り地獄送りにできるだろう。

 それもその筈。

 ムラサキババアは70年代初頭に子供の勘違いから噂話になった怪異であり、様々な学校の怪談と70年代のバイオレンス漫画等の影響を取り込んだ、合成怪異なのである。


 ちなみに、紫色の肌をしたなすび婆なる怪異が比叡山延暦寺に現れたと言う話がある。外見だけは由緒あるらしい。

 安土桃山時代と言うか戦国時代と言うか。突然現れて半鐘をガンガン鳴らしたと言う。

 しかし当時の延暦寺は御存じの方も多かろうが思いっきり仏の道から外れており、女はもちろん男の子も当たり前、と言う有様で、原因究明する事も無く大半の者がスルーしたらしい。それから時をそれ程置かずして、比叡山は炎に包まれる。織田信長による焼き討ちである。

 火事を予見する妖怪なのか、はたまた坊さんが色に流される事を咎めるものか。

 紫は東アジアでは皇帝の高貴な色とされ(色を作る材料が稀少だった)、日本仏教では仏の色でもある。

 もっとも、京都で紫色の肌を持つ狂った女となると、身体を売った結果梅毒を患った女性なんじゃないかと言う気がする。

 ムラサキババアの存在自体は新しいが、ルーツを辿ると案外由緒正しいのかもしれない。


◇汲み取り式便所 【設備】

 現代でも浄化槽に蓄積しバキュームカーによる回収が行われている場合もあるが、汲み取り式の場合は便器の真下が蓄積槽であり、真上に臭いは直撃する。

 当然、穴は蓄積槽に直結であり、落ちれば地獄である。

 と言うか、子供が落ちれば死ぬ。

 似たような物に肥溜めがあるが、そっちの方がまだ生存率は高い。

 古の便所はとても恐ろしい場所だったのだ。

 ちなみに倭建命の物語序盤では、帝の女といちゃついていた兄貴をバラして便槽に詰めると言う話がある。


 我が国においては農業中心の歴史があったため、江戸時代頃には排泄物は重要な肥料として金銭や物品で取引されていた。長屋の大家さんの副収入だったとも。

 勝手に盗んでいくウンコ泥棒も居たとか。

 これに対して、パリやロンドンでは道端に投げ捨てていたと言う。

 風呂とトイレは日本が世界一なのも頷ける。


 今では考えられないが、尿とは厳格に区別された。これは肥料として別物だったからである。また、ケツを吹いた紙を混ぜる事も禁止された。紙は短期間で土に還らないので肥料にできないからだ。

 そもそもトイレットペーパーを買わない、と言う理由もあった。高いから。要らないから。

 現代でも経費削減策に何故か現れるトイレットペーパーの劣化や使用制限だが、この頃の発想がこびりついているのでは、と思う事もしばしばである。とは言え、トイレットペーパーの無駄遣いはもちろん、いたずらで一ロールを流すなど論外である。


◇食屍鬼 【クリーチャー】

 ムラサキババアの都市伝説を調べていたら、なぜか食屍鬼の姿と被った。

 目撃された食屍鬼がムラサキババアの元ネタになったら、と言う感じです。

 現在の日本は火葬が主な葬儀方法なので、日本の食屍鬼たちは大変苦労している。なので納骨堂の神モルギディアン信仰も篤いと言う説がある。

 それでも学校のトイレで食屍鬼にエンカウントしたくはない。


◇土葬 【葬儀】

 基本は棺桶等の容れ物に亡骸を入れ、地面に穴を掘って埋葬する。棺桶は運搬に便利だったり、本来動物に掘り返されて食べられないようにする為である。もちろんそのまま埋めるのも土葬だし、生き埋めの場合でも結果的に土葬になる。

 火葬は死体を燃やすコストが問題である。人間を骨になるまで焼くのは結構な火力が必要だからだ。

 対して、土葬は土地の問題が大きい。維持コストも高いと言われる。

 日本では火葬が義務付けられていると思われがちだが、実は法律上は火葬並びに土葬は同じように扱われている。

 ただし、土葬の場合は自治体の許可がまず下りない。周囲に対する影響を考慮に入れる為、条件付けが厳しいからだ。日本国内の土葬霊園は片手で数えるほどしかない。

 東日本大震災三陸大津波では岩手・宮城の火葬場が内陸のものまでパンクして、日々腐敗が進む中、遂に自治体による土葬許可が下りた。

 また、鳥葬、魚葬などはもちろん駄目である。動物園の虎の檻に身を投げるのも駄目。


 宗教的な理由で土葬を重んじるのは主にキリスト教、イスラム教、儒教。

 キリスト教はモーセやイエス由来の土葬を推奨するが、僧侶はともかく一般への束縛力は案外高くなく、近年は維持コスト面重視で火葬も多い。まあ教会で同性婚できるなら火葬だってできるだろう。

 コーランが規範であるイスラム教はその点に於いては厳しく妥協が無い。日本でも近年イスラム教徒の埋葬形式に関して問題が起きるようになった。

 厳密には宗教とは異なるが、儒教でも長らく火葬を否定してきた背景が有り、今でも中華人民共和国の一部では土葬に拘る富裕層がいるらしい。なお、中華人民共和国は日本と異なり火葬は義務付けられており、役人が立ち合いをするらしい。

 まああれだ。見逃して欲しければ、わかるな?と言う光景しか思い浮かばない。


◇紫婆さん 【人物】

 実は何かの化身である、と言うわけでもない。

 ただの老婆である。

 ただ小学生の時点で神話世界に足を突っ込んだので、長い年月でそれなりに色々知っている。

 婆さんの怪談は大半が真実であり、その話を子供たちが纏めた怪談集は程度は低いものの、魔導書の類と呼んで差し支えない。

 

        

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ