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四月二十五日(火・続6)。古傷の中の白昼夢。

 どうにかこうにかレバニラ炒めを食べ終わって。俺はパジャマの上からジャケットと半纏を羽織り、詩乃梨さんはエプロンを外した代わりにブレザーを着込んで、屋上へと向かった。


 錆びた扉が生娘のような悲鳴を上げながら、ゆっくりとご開帳されていく。


 冷たい夜風がひゅるりと通り抜けていく中、俺と詩乃梨さんは手に持った湯煎済み缶コーヒーの熱を頼りに、夜空の下へと躍り出た。


 俺はなんとなく数歩ほど歩いて、缶を持っていない手を半纏のポケットに突っ込んでぶらぶらさせながら、軽く天を仰いだ。


 背後で、詩乃梨さんが鉄扉を閉めた音がする。これで、この覆う物のない屋上は、俺と詩乃梨さんの貸し切り部屋となった。


 俺達の頭上には、地平を満たしているであろう人工の光に浮かび上がる、星々の輝きを喪失した作り物染みた夜の色と、絶命に向けてひた走る瀕死の月。明日か明後日辺りには、きっとお月様はご臨終であろう。


 この間詩乃梨さんと見上げた夜空は、満月に近かったように思う。じゃあ今は、あれから約半月後ということになるのか。


『きみの二十歳の誕生日にきみを押し倒す』と宣言したり、婚約をきっぱりとお断りされたりしてから、半月。たったそれだけの短い期間の間に、俺は既に詩乃梨さんと身体を重ね、結婚の約束までするに至った。


 未来なんて、本当に、アテにならない。それは、この約半月の間についてもそうだし、……認めたくないことだけど、俺達が誓い合った将来についても、きっとそう。


 なら俺が信じるべきは、『未来』などというご大層で大仰で見かけ倒しな、テキトー極まる天気予報なんかじゃない。


 俺が確かに信じるべき物を、信じられる者を。俺は、ゆっくりと振り返って、軽く肩をすくめて見せた。


「星、全然見えねぇな。やっぱ都会じゃこんなもんか」


 鉄扉に軽く背を預けている少女は、片手で缶コーヒーを弄びながら、もう一方の手でお腹をやわやわと撫でさすりつつ、吐き気を堪えている辛そうな顔で呻き声混じりに台詞を返してきた。


「……こたろーの実家って、都会じゃないの?」


「ハッ。都会じゃないどころか、田舎のイメージそのまんまだよ。隣の家まで徒歩何分、次の電車まで何時間待ち、降った雪が溶ける前に新しい雪がどんどん積もっていくって、そういうレベル」


「………………………………ふぅん……」


 詩乃梨さんは気のない相槌を打ち、全身を引きずるようなゾンビめいた動きで、出入り口横のベンチにどさりと座り込んだ。普段の彼女なら必ずやっている、スカートをお尻の下に折り込む所作が見事に省かれていて、なんかもうほんとにいっぱいいっぱいみたい。


 こりゃ膝枕してもらうのはお預けかな、と内心残念に思いながら、俺は詩乃梨さんの隣に腰を下ろした。


 その瞬間、隣からかわいいくしゃみが聞こえて来た。


「……詩乃梨さん、やっぱ寒い? だから何か着る物貸そうかって言ったのに」


「……………………寒くない……。寒くないので、わたしは、ここから、動きません」


 詩乃梨さんは背もたれからずるずるとずり落ちていき、夜の帳の中でもまばゆい輝きを放つ生足をぴんと突っ張って体重を支え、お腹の上に缶コーヒーを手放しで直立させる遊びを始めてしまった。


 俺はその缶をひょいっと取り上げて、緩慢な仕草でこちらを見上げてくる彼女へ、徐に脱いだ半纏を差し出した。


「ほら、これ着て」


「……………………そしたら、こたろー、寒くない?」


「俺は詩乃梨さんのあったかいご飯とあったかい唾液いっぱいもらったから、心も体もぽっかぽかです」


「………………………………ふぅん……。……わたしも、こたろーからもらえばよかったかな……」


 詩乃梨さんは何気なく呟き、ベンチに手を突いてよっこいせと身体を持ち上げて座り直した。


 そして俺の半纏を受け取る――かと思いきや、なぜか赤い布に突っ込む闘牛のように、半纏越しにタックルかましてきました。


 半纏にくるまれて、俺の胸にぽふりと飛び込んできた、俺の大好きな女の子。


「………………………………」


 俺は二人分の缶コーヒーをベンチの端に置き、自由になった両腕で、詩乃梨さんを分厚い布ごと抱き締めた。


 ふわふわもこもこである。女の子の感触なんてちっともしない。


 でも、詩乃梨さんの匂いがする。それに、なんだか、じんわりと、詩乃梨さんの熱が伝わってくるような気がする。


 心が、落ち着く。


 ……そして、物理的な下心が、むくりむくりとバベルの塔。


「………………………………ねえ、しのりん。今日ってえっちなことは無しなの?」


「――こっ、ここ、ここここここ、ここでっ!?


「違ぇよなんで二回目にして野外プレイなんだよハードすぎんだろ。部屋戻ってからの話だよ」


「…………………………したい、の?」


「有り体に言えば、そうね。したくてしたくてしたくてしたくて辛抱たまらんね」


 俺は正直に欲望を暴露しながら、腕の中の詩乃梨さんの頭を布越しに優しく撫でた。


 詩乃梨さんは、ちょっと背中を丸まらせなら、くぐもった声でおそるおそる問いかけてくる。


「……こたろーって……、性欲、強い……よ、ね? ……それも、普通の、三倍、なの?」


「……まあ、たぶん? 他の男がどんな感じなのかっていうのは正直あんまりわかんないけど、溜められる量がそのまま性欲に繋がるなら、少なくとも普通の三倍以上だと思う。……休憩無しで二桁出せるって、やっぱおかしいかな?」


 女の子には答えられるものでもないし答えようとすら思われない質問。詩乃梨さんは「ふ……、た、け、た……?」と驚愕の声を漏らしてから、一転して平板なトーンで言葉を紡いだ。


「……でもこたろーくんは、わたしに『怖い』って言われただけで、しおしおに萎れちゃうんだよね」


「……………………………………うん。そうね」


 あれは、キツかった。性欲暴走させて襲いかかって、詩乃梨さん怯えさせちゃうとか、俺ほんと死ねよって感じだった。こうしてちょっと思い出すだけで、バベルの塔がまたしても完成前に崩壊である。


 急速に冷え切っていく、心に。詩乃梨さんが、細い両手をそっと回してきた。


 俺の胴体に、ゆるく回された、彼女の両腕。そこには力強さの欠片もないというのに、どうしてか、俺はその腕が特殊超合金製の命綱のように頼もしく感じられた


 ふわもこした綿を間に挟んで、俺と詩乃梨さんは、互いの身体をあたため合う。


 夜風の寒さなんてのは、どっか別の宇宙へと吹っ飛んでいた。


「こたろー、さ」


 詩乃梨さんは、躊躇いがちに俺の名を呼び。そして、全身にぐっと力を込めて、続きを口にした。


「……こたろーは……、食欲も、性欲も、心とか愛がこもってるのが、いちばんだいじ、なんだよね」


「……うん。そうだね。でも腹は減るし性欲も溜まるから、詩乃梨さんに会うまでは、砂みたいなメシ食ったり汚物みたいに性欲吐き出したりしてた」


「……まえ、愛はお金で買えない、みたいな話も、してたから……、愛さえあれば、お金なんかどうでもよかったり……するの?」


「……どうでもいいっていうか……、金は、嫌いだ。無ければ生きていけないから、仕方無く稼ぐけど……。どうして世間の人達は、あんなに金カネ言うんだろうな……」


 金なんて、ろくなものじゃない。失えば、生活すらままならなくなったり、人間性に歪みが出たり。必要以上に溜まれば溜まったで、これまた生活がおかしくなるし人間性に歪みも出る。


 歪んだ人間と歪んだ人間が交われば、間に生まれるのは、亀裂と、断裂。


 今のこの国において、金に囚われていない人間なんて、どこにもいない。俺も、詩乃梨さんも、わりと金に強く囚われている部類の人間だ。善人と呼ばれる部類であろう俺達ですらそうなのだから、世界に溢れかえっている『この俺以上の悪人』達については、言わずもがなだろう。


 ……俺にとっての『善人』であった人達ですら。金ばかりにこだわって、俺のことなんて全然見てくれようとしなかった。


 親しかった、兄も。……それに、俺を生み育ててくれた、両親も。




「……俺さ。この屋上に初めて来た時な。本当は、自殺しにきたんだよ」 


 


 俺の、告白に。詩乃梨さんは、一切反応を示さなかった。俺の腕から逃れようともせず、俺から腕を放そうともしない。


 彼女の心の裡は、わからない。けれど俺は、彼女が俺の話に耳を傾けてくれていると確信して、続きをぽつぽつ話していく。


 今まで、思い出すことを、意識的に、無意識的に、避け続けていた、あの頃の記憶。


 それを俺は、自分の傷口を抉って血しぶきと共に引っ張り出しながら、腕の中の少女にぶちまけていった。



 ◆◇◆◇◆



 俺が高校を卒業と同時に就職した会社は、業界に関わりの無い人でも名前を知っているくらいの、そこそこの大企業だった。


 学歴も資格もろくに無い田舎者が、雇ってもらえるような所じゃない。俺だって半ば記念受験というか、仲間内のネタのひとつになればいいな、くらいの軽い気持ちで受けただけだ。


 で、受かっちゃった。しかも内定通知だけじゃなくて、直接電話までもらっちゃった。


 俺は思わず、電話のお姉さんに「なななな、なんで俺受かったんですか!?」ってどもりまくりながら驚愕と興奮で思いっきり叫んじまったよ。


 お姉さんは詳しい事情なんて何も知らなかったようだったけど、くすりと笑ってから、優しい声で言ってくれた。


『きっと、あなたが我が社にとって必要な人材だったからですよ』


 ――俺、軽く泣いた。女の人にこんな優しく語りかけられたの初めてだったから心うっきうきで、しかも俺ごときにはとんでもなく分不相応な大企業に受かっちゃって、しかも受かった理由がこんな低学歴で資格も無くて田舎モンな俺のことを『必要だ』って思ってくれたから。


 泣くしかなかった。お姉さんは慌てならがも、俺が泣き止むまで超優しく慰めてくれた。


 それからの日々は、わりと平穏に過ぎていった。予想よりも、だいぶ平穏。友達に「俺あのデカい会社受かったぜ!」って得意げに話してみたら、「おー、マジか! おめでとー」くらいの反応しか貰えなかった。まあ俺以外はみんな大学受験組だったから、俺に構ってる暇なんてなかったんだろう。


 家族は……、けっこう喜んでくれたな。俺がその会社受けたことすら報せてなかったから、受かったって教えても最初は『何言ってんだこいつ』みたいな顔しかされなかったけど、後できちんとした内定通知が来たら、ようやく信じてくれた。それで軽くご馳走とケーキ用意してくれて、お祝いしてくれた。まあ反応と言えばそれくらいのもので、次の日からはやっぱりいつもの日常に戻っちゃったけど。いつもの日常、よりも一層気の抜けた日常だったな。それまで将来どうすんだー就職先どうすんだーって事ある毎にかけられまくってたプレッシャーが無くなったし。


 思ったよりもまったりとした日常を、ゆるゆると過ごして。


 そして俺は、独り立ちして、社会人になった。


 会社での配属先は、俺が受かったはずの事務職じゃなくて、なぜか営業だった。


『あれ?』って思ったけど、まあこんなの些細な出来事だろう。元々受かるはずの無かった大企業に就職できたんだ、会社の都合で多少配属先をいじられた所でちっとも問題なんかない。むしろ、その配属先こそが真に俺を必要としてくれているのだと、心の中に電話のお姉さんの愛らしい笑顔(※妄想)を浮かべながら、意気揚々と営業マン土井村琥太郎としての第一歩を踏み出した。



 その、一歩で。俺は、あっさりと、人間という動物の生きるべき道を踏み外して、落っこちた。



 俺の教育係を担当してくれることになった先輩は、職業においても人生においても大先輩にあたるような、定年間近くらいに見える恰幅の良い男だった。


 いつもにこにこと人当たりの良い笑みを浮かべていて、会社の人達との関係も良好。聞くところによれば、業界最大手の企業で重役を勤め上げてからキリの良い所で自ら退職し、フリーになった所で『是非に』と乞われてこの会社へとやって来て、イチ営業として再出発を切ったという経歴の持ち主らしい。


 経験豊富、人柄良好、意欲満点。非の打ち所の無い、年の離れた先輩社員。そんな人に教育を担当してもらえて、俺の人生マジで順風満帆すぎないかと怖くなるくらいだった。


 ――結果から言えば。その本能的な恐怖は、この上なく、正鵠を射ていた。


 会社の大先輩を助手席に乗せての、社用車の運転。ただでさえ春に免許取ったばっかだというのに、そんな状況で平常心を保てるわけもない。それでもなんとか頑張って、教えられたルートを辿っていると、先輩が小さく舌打ちした。


 小さな、小さな、聞き逃してしまうような舌打ち。けれどそれは、確かな怒気に彩られたものだった。


 俺は内心ひやりとしながらも、敢えて何も聞かずに、平静を装って運転を続けた。


 そして、予想していたのとは全く違う小道に入ってしまったようで、地図には無い行き止まりにぶつかってしまった。


 再度。横から、舌打ち。今度は、俺の耳朶を直に殴りつけるように、はっきりとした憤怒と音量。


 俺は笑顔を取り繕いながら、先輩に尋ねた。


「すみません、先輩。ちょっと道を間違えてしまったようなので、少し引き返して――」




 ……すまん。回想の途中で悪いが、先輩の台詞と反応は、省かせてもらう。


 あんなのは……、人が言うべき言葉ではないし、人が言える言葉ではない。


 それに。人を見る目でも、なかった。


 あの人にとって、俺は、人ではなかった。




 ショックで、頭の中が、真っ白だった。その日、その後どうなったのか、ほとんど思い出せない。当時の俺も、おそらく、ほぼ何も覚えていなかっただろう。


 何も覚えていないまま、帰巣本能に支えられてなんとか帰宅して、最近身につけたばかりの自炊習慣に基づいて、メシを作って、食べた。


 そのメシは、砂の味がした。


 砂みたいなメシと、浅い、睡眠とも呼べない睡眠を取って、俺は再び会社へ向かう。


 俺の出勤から少し遅れて、先輩が他の社員とにこやかに挨拶をしながらやってきた。


 思わず身を固くして頭が真っ白になった俺に、先輩はちょっと首を捻りながらも肩にぽんと手を置いてきた。


「どうした、そんな顔して。若いからって夜遊びばっかしてないで、ちゃんとメシ食ってちゃんと寝ろよ? 営業は足と健康があってこそなんだ、仕事より何より、まずは自分の身体をベストに保つことを憶えろよ」


 先輩の顔には、優しい微笑みが浮かんでいて。語る声音にも、俺への気遣いが溢れていた。


 俺は。笑顔と、お礼の言葉を返した。


 昨日のことは、きっと、悪い夢だったのだと。そんな風に、自分の正直な心に蓋をして。


 そして俺はその日も、先輩を乗せて営業先へ出向き。


 また同じ悪夢を。……いや、それ以上の悪夢を、見ることになった。


 何度も。


 何度も。何度も


 何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。


 何度も。何度も。何度も何度も。なんども、なんども、なンども、なんども、なんどもナンども何どもなんどもナんどもなんどもなんどもなんどもなんども何どもなん度もなンドもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんども――。


 現実で。夢で。白昼夢で。悪夢で。正夢で。夢じゃなくて、現実で。正夢で。悪夢が正夢で、白昼夢で、現実だった。


 でも、その夢を見る度に、俺は自分をどうにか奮い立たせた。


 俺は。この会社に、必要とされているから、こうしてここにやって来たのだ、と。


 会ったことすらない、ちょっと事務的なやりとりをしただけの、お姉さん。あの人がくれた、本当の思い遣りに満ちた、本物の優しさに満ちた言葉を、心の支えにして、俺はどうにか生き長らえた。


 だが。俺は、耳にしてしまった。


 笑顔で、先輩と挨拶を交わしていたはずの社員達が。個室で息を殺して血を垂れ流している俺に気付かず、アンモニア臭と水音を撒き散らしながら話していた『ここだけの笑える話』。


 俺は、それを、聞いてしまって。そして、俺がこの会社に就職できた本当の理由を、知った。



 元の企業で不祥事をやらかした先輩が、この会社を強請って天下り的に入社してきて。優秀な後輩をいびり倒して社員としても人間としても使い物にならなくしてしまうものだから、ならばいっそ、『最初から壊れてもいい人間』を玩具として宛がっておこう。



 なんとも合理的な話だった。ずっと心の中で燻っていた違和感に、ようやく明確な姿形が与えられた。


 俺は、心も体も、今まで生きてきて一番ってくらいにスッキリさせて。



 そして、自殺を決意した。



 決意してから、初めての週休。それは、約半年ぶりとなるまともな休日でもあった。


 社会人生活一年目がもうすぐ終わる、雪の日に。俺は、何日目になるかもわからない徹夜の果てに、ただ死に場所を求めて、高い所を探した。


 遠出するような気力は、もう無い。靴すら履かずに、アパートの自室から出て、ただただ上を目指した。


 最上階に位置する俺の部屋の、さらに上。掃除用具入れや粗大ゴミに半ば以上埋もれた、上へと続く階段。


 俺は、着っぱなしだったスーツが汚れるのも破れるのも気にせずに、半ば胴体で殴りつけるようにしてバリケードを抜けた。


 アザのひとつやふたつ、今更増えた所で気になんかならない。心も体も、どうせもう壊れている。こんなボロボロのスーツで出社したらこれまで以上の悪夢を見ることになりそうだが、そんな夢はもうすぐ終わる。


 俺はもう、夢を見ない。明日だって、もう、来ない。


 そして俺は、完全に錆び付いて固まってしまっている鉄扉を、力任せに押し開けた。


 広がる空には、薄墨を流して凍り付かせたような、まだらに煙るモノクロの空。


 そこから舞い散る、淡い粉雪が。ふと、俺の脳裏に、かつて自分が生まれ育った風景を浮かばせた。


 積もりゆく雪が、溶ける暇もないうちに、また積み重ねられていくような、冬に閉ざされた最果ての町。


 その町で過ごした、仲間と馬鹿ばっかりやってる日々や、両親と何でも無い会話をして穏やかに笑い合っている日々。


 気付けば俺の手は、学生時代から使っていた型遅れのケータイに伸びていた。


 俺が唯一ソラで言える電話番号。それを電話帳欄から検索して、選択。そして俺は、この街の空に故郷の空を重ねながら、コール音に意識を集中した。


『――もしもし? どしたいきなり。なんか用?』


 ある程度年を重ねた女性の、微妙に標準語とは異なるイントネーション。


 俺はそれに、営業時には絶対使わない、俺本来の発音で台詞を返した。


「別に用とか無いけど。今年家帰らなかったし、社会人一年目もうすぐ終わるから、なんとなく生存報告しとこうかなって」


『はぁー。そうかい』


 気のない返事と、遠慮の無い笑い声。俺もそれに小さく笑いを返して、しばらく、とりとめのない会話を続けた。


 続けながら。俺はずっと、本当に言いたいことを、言えずにいた。


 言えないままに、久々の親子の会話は終了の流れへ向かってしまい。


 俺は、それまでの流れの何もかもをぶった切って、とにかくジャブを放った。


「あのさー。もし俺が『会社辞めたい』って言ったら、どうする――?」



 俺の、意図は。半分だけ、正しく伝わった。


 その半分が、俺の予想していた以上に、母を怒り狂わせた。


 そして母は、俺の母ではなく、ただの『常識人』になった。


 ちょっとくらい嫌なことがあったからって、すぐに弱音を吐いてどうするのか。つらいのはお前だけじゃない。この不景気に、どうやって次の仕事を探すのか。ただでさえ学歴も資格も持っていないお前を拾ってくれる会社なんてあるわけない。せっかく大企業に就職できたのに何馬鹿なことを言い出してるのか。どうしても辞めるなら最低三年は待て。三年も待てない軟弱者じゃ、他の会社だって雇ってくれるわけがない――。


 怒濤のように溢れてくる至極ごもっともな高説に対して、俺はへらへら笑いながら「わかってるって、言ってみただけだって」と誤魔化して。しかし誤魔化しきれずに、何度も何度も同じ内容を延々聞かされ続け、ようやくなんとか話題を切り上げることに成功して、逃げ出すようにして通話を切った。


 俺をどやしつける、音の波が、感情の波が、完全に途絶えて。


 俺は、言葉も、感情も、完全に失った。


「…………………………………」


 咽が、音も無く笑うように痙攣した。手近に有った小汚いベンチにどさりと座り込み、ケータイをじっと眺める。


 投げ捨てようか。……でも、もし下を人が通っていたら、当たってしまうかもしれない。飛び降り自殺で通行人が巻き添え食って重症とか、そんなニュースを見る度に『死ぬなら一人で勝手に死ねよ』と思っていた俺としては、自分がそんな愚行を犯すわけにはいかない。


 ケータイは、捨てられず。ここから虚空へ身を投げ出すことも、俺にはできない。


 俺は天を仰ぎ、ケータイをスーツのポケットに戻した。


 ――その時。俺の指先に、こつんと触れる、冷たくて固い感触が有った。


 ケータイと入れ替わりに取り出したそれは、いつ買ったのかもわからない、缶コーヒー。


 ……もう俺は、大好きだったコーヒーも、ドブの水みたいにしか感じなくなってしまったけど。もしかしたら、今日は、おいしいと感じられるかもしれない。


 根拠なんてどこを探しても影も形も見当たらない、ただの希望的観測。それだけに縋って、俺はプルタブを引き起こし、ぐびりと一気に煽った。


 俺の臓腑には、ドブの水が流し込まれただけだった。


「…………………………」


 仰いだ天から降り注ぐ雪が、粉ではなく、綿へと進化していた。


 もうすぐ四月だというのに、こんな都会近くの街でもこんな雪が降るのか。


 身体に積もりゆく雪が、溶ける間もなく、積み重ねられていく。


 しんしんと。ただただ、雪の欠片が、ふわりふわりと降り積もってゆく。


 俺は、目を閉じて、雪の奏でる音色に耳を澄ませた。


 聞こえる。俺には、聞こえる。


 俺には、雪の音が聞こえる。




 そして、俺は。雪の音色の中に、『猫』の弱々しい鳴き声を、聞き取った。




「……………………」


 うっすらと開いた視界に映ったものは、ここ最近見続けていた白昼夢の続き。


 ただし、出演していたのは、あの先輩じゃない。だからこれは、白昼夢ではあっても、悪夢ではなかった。


 悪夢ではない、どころか。俺にとって、この上なく、嬉しくて、幸せな夢を、俺は見た。


「………………『トラ』……?」


 ベンチに腰掛けた俺の足に、身をすり寄せてきて、にゃーと泣きながら顔を見上げてくる、浅い黒色の毛並みを持つ猫。


 トラ。俺の祖父母の家で飼っていた猫。幼き日の俺が、猫という動物としてではなく、ただ『トラ』として、純粋に愛した子。


 愛していながら、会話なんてできないままに、死を看取ることすらできないままに、永遠の別れを迎えてしまった子。


 ……お迎えか。死因は、凍死かな。


「にゃー。にゃー!」


「おうおう、なんだ、どした。なんでそんな怒ってんだ」


 俺は、スネをぺちぺち叩いてくるトラの、両脇に手を差し込んでひょいっと持ち上げた。


 びくりと身体を硬直させたトラを、俺の太股に優しく着地させて、赤子に乳をあげるような体勢で腕の中に抱き留める。


 ……ああ、これはやはり夢だ。だって俺は、あいつをこんなふうに抱き上げたことも、抱き留めたことも、一度として無い。


 これは、俺ができなかった願望を、非現実の世界で充足させるための、まさに夢なのだ。


「……………………ははっ」


 夢か。じゃあ、いいよな? 俺がしてあげたかったこと、我慢しないで、していいよな?


 俺はトラを力一杯抱き締めて、小さな顔に思いっきり頬ずりしながら、頭をわしわしと撫でてやった。


 トラはしばらくされるがままになっていたが、やがてじたばたと全力でもがき出す。


「にゃー! ふにゃー! はなせ、ばか! いたい、ひげがいたい!」


「おう、ヒゲか。そういやお前ヒゲどこいった、なんかやけにすべすべだな。俺のヒゲわけてやろうか? 無いよりマシだろ。いくらでも抜いていいぞ」


「いらないから! ひげとかいらないから! いたいのやめて!」


 むぅ。夢のくせして俺の思い通りにいかない。まあ夢なんてそんなものか。


 俺は仕方無く少し顔を離して、フーフー威嚇してくるトラの唇に自分の唇をちょんっとくっつけた。


 トラ、硬直。……あ、猫の親愛表現ってキスじゃなくて鼻と鼻をくっつけるんだっけ?


 というわけでトラの鼻に俺の鼻をぷにっと押しつけてから、再び顔を離した。


 きょとんとした顔のトラに、俺は心からの笑顔で、素直な気持ちを告げた。


「また会えて嬉しいよ、トラ。来てくれて、ありがとな。……俺、ずっと、お前に会いたかった。……ずっと、お前に、ちゃんと、『好きだ』って、言いたかった。……大好きだよ、トラ」


 涙が、堪えきれなかった。鼻水が、留まらなかった。


 俺は顔をべちょべちょにしたまま、トラに再度接吻した。唇を離してから、鼻をちょんとくっつけるのも忘れない。人としての親愛表現と、猫としての親愛表現。伝われ、俺の愛。


 再度顔を離して、トラの様子を確認。すると、トラは全身をぐでんと脱力させて俺の腕に体重を預けていて、真っ赤な顔でぼんやりと俺を見上げていた。


「……トラ? どうした? なんか変なもん拾い食いしたか? それとも病気? 病院行く? 任せろ、どんなタクシーよりも速く俺が担いでいって、世界で一番の名医を力尽くで引っ張り出してきてやるぞ」


「………………………………びょうきじゃ、ない……」


「じゃあ、拾い食いか? お前そんなアクティブなヤツじゃないだろうに、どこでそんな面白い物見つけ……………………って、こら。お前、何持ってんだよ?」


 トラは、その小さな両手に、俺が飲みかけのままにしていた缶コーヒーをぎゅっと握りしめていた。


 猫。缶コーヒー。カフェイン。毒である。


 俺は片手でトラの身体を支えたまま、空いた手で缶を取り上げようとした。


「やー!」


 トラは怒りの声を上げ、すいっと俺の手を避けてしまう。


「……なあ、トラよ。コーヒーってね、猫には毒なの。カフェインは猫にはダメなの。言ってること、わかる?」


「わかんない! わたし、ねこじゃないし! とらじゃないし!」


 あらぁー、コーヒー欲しさに自分の存在を根っこから否定しはじめちゃいましたよ。そこまでコーヒー欲しいの?


「……しゃーねぇな。ちょっとだけだぞ?」


「……くれるの? ……いいの?」


「全部はダメだぞ。ちょっとだけだからな。飲み過ぎたらお前、ぜーったい後で気分悪くなっちゃうぞ」


「……………………しんぱい、してくれてる、の?」


 なんだその真ん丸なお目々。まるで、俺が心配してるとは一ミリたりとも思ってなかったような表情。


 俺はトラの顔に盛大に溜息をついてやって、眉をしかめて軽く身じろぎするトラにぐっと顔を近づけて真面目に告げた。


「当たり前だろうが。俺はいつだって、お前の心配してるぞ。……やっぱりお前、俺のこと、どうでもいいとか思ってたの?」


 もしかしたら、俺に擦り寄ってきてくれたのはただのマーキングにすぎなくて、やっぱり俺のことなんて好きでもなんでもなかったのかもしれない。


 胸が、痛む。ひどく、痛い。


「……俺は、お前のこと、こんなに好きなのにな。……そっか、お前はやっぱ、俺なんて――」


「す、す、すすす、すき、です、よ?」


 おや? なんだかめっちゃカタカタ全身揺らしながら、恥ずかしさで死にそうな顔で『好き』言うてくれたぞ。


 おおう。マジか。お前俺のこと好きだったんか。もう一回言ってくれ。


「えー、ほんとーにぃー? 無理してなぁーいぃー? なんでそんなどもりまくってるのぉー? もっとしっかりはっきりきっぱり言ってよぉー」


「……………………わたしは、あなたのことが、すき、です」


「そっか。ありがとな。俺もお前のこと、大好きだよ」


「…………………………………ひぅぅ……」


 トラは恥ずかしそうに呻きを漏らし、顔を両手で覆い隠そうと――したところで、己の手に握りしめた物体に気付いてはたと動きを止めた。


 しばらく缶をじーっと眺めてから、俺をおそるおそる見上げてくる。


「…………これ、のんで、いい?」


「……ちょっとだけ、だからな?」


「………………ん」


 トラはこくりと頷いて、おっかなびっくり、缶に口を近づけていった。


 そして、ほんとーにちょびっとだけ、舐めるようにしてくぴりと飲んで。


 缶を全力で身体から遠ざけ、顔も全力で遠ざけながら、しかめっ面で舌を出した。


「う、うぉ、ぅぇえぇ……………」


「だから毒やって言うたんに。もういいだろ、それは没収だ」


 俺はトラからひょいっと缶を奪い、また変に興味を持たれる前にぐびぐびと己の胃の中に流し込んだ。


 一息に飲み終えて、ぷはぁっと満足の溜息。


「……うまい」


 やばい。うまい。何これ。コーヒーってこんな味だったっけ? ここ最近ドブ水扱いしてたから、本当の味なんてすっかり忘却の彼方である。


 ……そっか。これが、ちゃんとしたコーヒーの味、なんだ。


 なんつーか。……甘くて、ちょっと苦くて……、幸せの、味が、した。


「……………どう、したの? ……わたし、まずいこと、した?」


 空になった缶を眺め続ける俺に、トラの不安げな声と瞳が突き刺さる。


 俺は破顔して、缶をベンチの端へ置き、両腕でトラのやわらかい身体をぎゅーっと抱き締めた。コーヒーよりも、甘くて、良い匂いがする。


「まずくないよ。むしろうまい。コーヒー超うまい。おまえのくれた魔法のおかげで、すっごくおいしくなった。ありがとな」


「まほう? ………………だえき?」


 おお、それは有るね。なるほど、今の幸せの味の正体はトラの唾液だったのか。やべぇな、唾液。いつか彼女とかできたら存分にべろちゅーして唾液飲ませっこしよう。まあ彼女とか一生かかっても作れる気配無いけどね!


 ……………………ん? 一生? あれ、俺、なんか死ぬ気失せてきてる……?


「……………………」


 俺は、抱擁を緩めて、トラの様子を確認した。


 トラは両手を胸元で小さく握り、俺の顔をほわわんぽわわんとした顔で見つめている。


 ……かわいいな。性的な意味で。……え、俺って獣姦できる人だったの……?


「…………ん? あれ、なんかお前、毛の色おかしくね?」


 じっくりと観察していたら、ふわふわと揺れている毛並みの色がちょっと不思議であることに気付いた。本来のやや白っぽい黒ではなく、白に近い灰色みたいになってる。どこかで遊んで埃でもかぶってきたんだろうか? でもそんな感じでも無いし……。毛が生え替わったとかかな?


 俺の疑問符を受けて、トラはなぜかしゅんと落ち込んでしまった。毛先を指でいじりながら、泣き出しそうな声を上げる。


「……いろ、おかしい、よね。……きたない、はいかぶり。……ごみみたいな、いろ。……ふこうを、よびよせる、いらないこ――」


「アホかお前」


「………………………………あ、あほ?」


 俺はトラの小さな手に自分の手を重ねて、摘ままれた毛先をゆっくりと持ち上げていった。


 凍り付いた空の間から漏れいずる、一筋の淡い光に。生まれ変わったトラの、天然の灰色の毛を翳す。


 僅かにくっついている雪の結晶や、子供の毛のように健康的なツヤを輝かせるそれは、まるで純白や白銀のように神秘的で美しい色合いを見せていた。


「なーにが灰かぶりだ。アホぬかせ。お前の髪、こんなに綺麗じゃんか。不幸を呼び寄せるだ? 笑わせんなよ、幸福を司る白銀のお猫様」


「つかさど、はくぎ……、え、なに?」


 トラの顔には、よくわかっていなさそうな表情。むぅ、台詞のチョイスがちょっと気障すぎたかな? それにいくら人語を解するようになったとはいえ、元は猫なのだから、もうちょっとやさしい言葉に置き換えてあげた方がいいかもしれない。


 俺はトラの手と毛を光の中でふりふりと揺らして透かし見ながら、改めて言い直した。


「お前はな。しあわせの白猫さんだ」


「……………………しあわせの、しろねこ?」


「そう。幸せの白猫。お前の運んでくれた幸せのおかげで、俺ってば今、ちょーしあわせ」


「…………………………うそ、ついて……ない?」


「俺の顔、見てみ? これが嘘ついてる顔に見えるかね」


 俺は、トラの手を優しくきゅっと握り、小さな身体を抱き留める手にもぐっと力を入れて、トラに向かって全力の笑顔を向けた。


 トラは、呆然。呆然としたまま、なんだか顔を赤々と沸騰させていき、全身もガタガタと震えさせ始める。


「お、おい、どうした? どうした、やっぱ病気か? やっぱ病院行くか? 任せろ、俺がどんなタクシーよりも速く担いで――」


「ふしゃー! うなぁー!」


 トラは両手両脚をぶんぶんと振り回し、俺の腕の中から全力で逃げ出した。


 跳ね飛ぶようにして地面に着地したトラが、バンザイした俺をものすごい形相で睨んでくる。トラさんってば、まるで虎か龍のごとし。


 竜虎の類へ進化したトラは、ダッシュで出入り口の扉へと飛びついた。どうやらこの場から逃げようとしているらしいが、隙間に錆が挟まってしまっているのか、ドアノブに何度飛びついても開く気配なし。


 真っ赤なお顔で龍みたいな瞳を向けてくるトラに、俺は「しょーがねーなー」と溜息を吐いて、よっこいしょと立ち上がった。


 ドアノブに、手を掛けて。ふんぬっと引けば、ぎぎぎと響く重低音。


「ほれ、開いたぞ。行ってらっしゃい」


 笑顔で語りかける俺に、トラは、なんだかむすっとした顔で、ぶっきらぼうに呟いた。


「……いって、きます」


 そして、トラは、俺の前から消え去った。


 俺は扉を閉めて、ふぅっと軽い溜息を吐く。


「………………………………」


 白昼夢は、終わりを告げ。そしてここから、きっと現実。


 夢と現実の境目が曖昧になっていた、俺の日常に。この時、しばらくぶりに、現実感が戻ってきた。


 振り仰いだ空には、いつしか雪の気配は消えていて。


 見下ろしたベンチには、ただ空になったコーヒーの缶だけが、ぽつんと残されていた。


 ……………………良い夢、だったな。すごく、すごく、良い夢、だった。


 また、見たい。また、いつか、あいつに会いたい。


 ……また、ここに来れば、会えるかな?


 頑張って、生きて、生き続けて、ここに通っていれば、また会えるのかな?


「………………………………」


 そんなことを考えながら、俺はトラの小さな背中を追うように、屋上を後にした。




 俺はそれから、とりあえず三年は耐えて頑張ってみようと、毎日必死に生き足掻いた。


 上司が撒き散らす悪夢は相変わらず。脳に焼き付いた悪夢にうなされて眠れない日々も相変わらず。


 でも、俺は、耐えた。


 あの、幸せな夢が。俺の折れそうな心と消えそうな命の火を、懸命に繋ぎ止めてくれていた。



 結果から言うと、そうして耐え続ける日々は、三年も続くことなく終わりを迎えることとなった。


 俺が中々潰れないことに業を煮やした先輩が、他の社員にまで魔の手を伸ばしてしまい、その社員が実は重役の息子だったものだからさあ大変。先輩はクビにはならなかったものの僻地へ飛ばされることとなり、入れ替わりでやってきた真人間な上司が先輩の残していった糞便を綺麗に掃除した結果、俺はとってもクリーンな職場を手に入れることになりましたとさ。ちゃんちゃん。


 ふぅ、終わった。……あれ、なんかもう達成感で胸いっぱいになっちゃったけど、まだ俺のトラウマスイッチについてまで話及んでなくね? あとしあわせを運ぶ白猫ってワード、なーんか聞き覚えあるんですけど……。

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