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空気を読まなかった男と不良未満少女の、ひとつ屋根の上交流日記  作者: 未紗 夜村
第五章 そしてようやく、恋が始まる。【本編完結】
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四月二十四日(月・了)。事後。

 ◆◇◆◇◆



 詩乃梨さんと、えっちっちしちゃった!



 ◆◇◆◇◆



 しちゃったかぁ-……。……なんか、実感無いなぁ……。


「………………………………」


 考え事をする時の俺的ド定番になりつつある、ベッドに寝転がって暗闇に浮かぶ天井を眺める体勢で。


 俺はしばし、詩乃梨さんとの情事を回想する。


 …………………………ま、待て、待った。ちょっと待った。ちょっと思いだそうとするだけで股間にぎゅんぎゅん血液が溜まりそうになって色んな液体出そうでやばい。思い出すのはちょっと待った。


 ようやく後処理全部終えた所なんだぞ。詩乃梨さんの身体をティッシュ一箱使い切るくらい頑張って綺麗にして、レンジでチンした熱々の濡れタオルで色んな液体の名残を丹念に拭い取ってあげて、その時もちろん詩乃梨さんの秘密のアレ周辺もまるで国宝のワレモノでも手入れするかのように――


 しゃっとあーうとっ!


 ……ふぅ、ふぅ、ふぅ……。と、とにかく、詩乃梨さんを綺麗にしてあげて、着衣の乱れも全部整えてあげた。ただしリボンタイは解けたままだし、ブラウスのボタンも逆にふたつほど解放させてもらったけど。だって結局ボタン全部留めたまま最後までやっちゃったから、あー喉元苦しいだろうなー、実際呼吸大変そうにしてるしなーって思って、優しさゆえにボタンをひとつ外し、ついムラッときちゃったがゆえに二つ目を外し――


 しゃっとあーうとっ!


 ……………………ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……。と、とと、とにかく、詩乃梨さんについては概ねOKだ。しのりんが脱いじゃったおぱんつ様は、俺のパジャマのズボンやトランクスと一緒になってその辺転がったままだろうけど、概ねOKだ。ああうん、つまり俺も詩乃梨さんも下半身がすーすーする格好のまま、こうして隣り合ってベッドに横たわっているわけなのさ。詩乃梨さんの身体綺麗にし終わったらなんだか完全に気抜けちゃって、自分綺麗にするとかベッド綺麗にするとかどうでもよくなっちゃって、しのりんったらいつの間にか寝ちゃってたし、じゃあ俺もそろそろ一緒に寝ちゃおっかなってなって、同衾なう。俺と詩乃梨さんの濃厚な匂いが立ち込めるマイルームで、二人共下半身の防御力がほぼ皆無な状態で、色んな液体がべっちゃりしちゃってるままのベッドに並んで横たわって、一枚の布団に仲良くくるまってる。


 詩乃梨さん、俺の隣で、おやすみ中。彼女の枕は、俺の右腕。


 時々さ、詩乃梨さんはね、寝言でね。俺の名を呼び、ふにゃりと笑う。


「……………………こ……た、ろー……。…………ふぇへ、ふぇへへ……」


「…………………………………」


 ……ムラッ。


 しゃっとあーうとっ! しゃっとあぁぁぁーうとッ! 鎮まれええええぇぇぇぇぇい! 鎮まれえええェェェェェェイッ!


 …………………………だ、だめだ、思考に耽ることができるような環境じゃない。寝よう。とにかく寝よう。細かいことは明日考えよう。明日。そうだ、明日。明日平日だっけ。あ、早く寝とかないとやばい。寝よう。とにかく寝るんだ。


 寝ろ。寝ろ。寝ろ。寝ろ。寝ろ。寝ろ。寝ろ。寝ろ――


「ねろねろうっさいぁぁあああ! 逆に寝られるかっつーのっ!」


「……こたろー……、うる……さ、い……」


「さ、さーせん」


 詩乃梨さんは少しだけ不機嫌そうに眉を顰めていたが、瞼を持ち上げる様子は無く、程なくして安らかな寝顔に戻って穏やかな寝息を再開した。


 あどけない、寝顔。常日頃からストレスにされ続けている彼女が、起きている間には絶対に見せないような、余計な重荷の何もかもがすこーんと抜け落ちてる、母の胸に抱かれた赤子のように無防備な表情。


 ……やっぱ、こういう時の詩乃梨さんって、かなり幼く見える。でもさっきまではあんなに大人の女性として成熟してる所を見せつけてくれてた……あ、いや、でもやっぱり子供っぽかったよな、とくにまん――


 マントヒヒっ!


 ………………………ふーっ、ふーっ、ふーっ! ……だ、だめだ、やばい、もうダメだ。ムラっどころの話じゃない。どうにもならん。いくら考えないようにしようと思っても、頭の中が詩乃梨さんでいっぱいだ。


 ……と、とりあえず、ちょっと頭冷やそう。ソロ活動だ。お一人様専用で観客なんて居ない狭い個室で、孤独なソロ活動に興じて何もかもをペーパーに吐き出して水に流してしまおう。


 よし。そうと決まれば、詩乃梨さんの頭の下から俺の腕を抜き取――


「…………こ……た、ろー………………」


「……………………………………」


 詩乃梨さんが、枕にしてる現実の俺の袖をきゅっと掴んで、夢の中の俺に寂しげな声音で呼びかけた。


 俺は一旦抜け出す動きを止めて、自由な方の手で詩乃梨さんの頭をそっと優しく撫でる。


 詩乃梨さんは、俺の手にやわやわと撫でられて、とても幸せそうにふにゃりと笑った。


 そして彼女は、底の無い夢の世界へと堕ちていく。


 無防備な、微笑み。瑞々しい唇の端から、ちらりと垂れる、おいしそうなよだれ。


「……………………………………」


 ムラッ。


 あああああああぁあぁぁああぁぁっぁぁああああああ! もうっ! もおうッ! ああああああぁあぁぁあぁぁああぁぁああああぁぁぁあぁぁあぁ――――――ッ! アホか、寝られるかこんなんっ! 無理! 絶対ムリっ! しかも今までだったらこんな状況でも俺主人公で詩乃梨さんヒロインな完全フィクションの妄想しか頭に浮かばなかったけど、一度実際に致してしまったせいでフィクションが完全なフィクションではなく限りなくノンフィクションでリアルな熱と肉感と体液と音がもおおおおおおおおおおぅ! もおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉうっ!


「……………………………………」


 いい。


 もう、寝ない。


 徹夜だ。


 完徹だ。


 ……たぶん、明朝には、ベッドに白い粘液の水たまりができていることだろうね……。さわらなくても出ちゃうの……。え、何が出ちゃうのかって? はっはっはー、なんだろねー。ぼくしーらない。


 ……あ、お、ちょっ、ま、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あっ、で、で、で、でる――

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