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四月九日(日・6)。甘い時間と、終わる世界。

 詩乃梨さんの話を聞き終わる頃には、俺達の食事も完了した。食器を手早く洗い終わって、今コタツの上に置いてあるのは、俺が推薦する苺ショートケーキと、詩乃梨さんがさっき自室に戻って用意してきた湯煎済み缶コーヒーが、それぞれ二人分。


「こたろう、もう食べていい? いいよね? ちゃんとご飯食べたし!」


 詩乃梨さんは、きらきらと輝かんばかりの瞳でケーキを凝視しながら、こちらを見ずに問うてきた。


 俺は詩乃梨さんに手の平を突きだして『ちょっと待ってて』ポーズを取る。そして、空いている方の手で自分の額を押さえ、先程の詩乃梨さんの話についてちょっと振り返ってみる。


 詩乃梨さんと猿のお嬢さんの、喧嘩及び仲直りについて。


 詩乃梨さんは目立つのが嫌いだということだから、常の彼女であれば、猿のお嬢さんのちょっかいをスルーするスタンスで行こうとしただろう。だがそれをせずに真っ向から反論したのは、猿のお嬢さんの恋愛観が、自分のそれと比較してみて、あまりにも度し難いものであったためだ。

 猿のお嬢さんに説教した理由も同様だろう。『まともな男だったら、おまえのことをもっと考えてくれるはずだから、会ってすぐエッチをするような男とは縁を切れ』、だったか。そして詩乃梨さんは、猿のお嬢さんと和解に至って一件落着。

 一件が落着というか、おそらくこれまでの因縁も解消されたか、その兆しが見えてきたかしているのではないだろうか。でなければ、和解したことはともかく喧嘩したことも一緒くたにして『琥太郎のおかげ』と言うわけがない。


 琥太郎のおかげ。そう、この一件について、俺のおかげであると詩乃梨さんは言った。


 それはきっと、今回の騒動の根幹にある『詩乃梨さんの恋愛観』にとって、俺という存在が必要不可欠なものだったからなのだろう。


 先程の、〈side 幸峰詩乃梨〉の内容から考えるに、たぶんそういうことなんだと思う。


 ……ああ、一応ちょっといいかい? 注意事項ね。勘違いされてると困るから、ひとつ言わせて?


 さっきの、詩乃梨さん視点の話。あれね、俺が詩乃梨さんの話を聞いて、イメージで作ったものなんだよ。


 え、わかってるって? どうせそんなこったろうと思ったって? 詩乃梨さんの中での俺の評価をモリモリ盛りすぎだっただろって?


 いや、そういうことが言いたくてわざわざ注意しているわけじゃない。むしろ、逆なんだ。


 詩乃梨さんの俺に対する激烈な高評価。あれな、九十九パーセント、詩乃梨さん本人が実際に言ったものなんだ。


 で、俺の中で大問題となっているあのワードについても、それは同様なんです。


「詩乃梨さん。ケーキ食べる前に、ひとつだけ確認していいかい?」


「いい。早く。なんでもいいから、こたろう早く」


 詩乃梨さんは未だケーキに心を奪われながらも、ちらちらと俺に視線を向けてくれる。


 俺は自分の分のコーヒーを手に持ち、その香りで己を鎮めながら、極々自然な風を装って問いかけた。


「詩乃梨さんて、俺が『どうしても』って頼んだら、えっちさせてくれるの?」


「させるよ! だから早くケーキ!」


「そっか。うん、食べていいよ。答えてくれてありがとう」


「わたしもありがとう! ケーキとかほんっと久しぶり! いただきます!」


 言うが早いか、詩乃梨さんはケーキにフォークをさっくりと差し入れ、切り取った一欠片をフォークごと口の中に放り込んだ。


 一瞬遅れて彼女の顔に到来する、至福を体現した恍惚の笑み。頬に手を当て、目を閉じて唇をもごもごと動かしている。もごもご。もにゅもにゅ。もにゅりもにゅり。もーにゅり、もーにゅり。


 ……いや早く飲み込めよ、たいせつに味わいすぎだろ詩乃梨さん。


 これだけ悦ばれると、用意した側としても悪い気はしない。俺の分も後であげるかと思いながら、香りだけを楽しんでいた缶コーヒーをずずりと啜る。


 ふぅ、おいし。


「………」


 さて。


 詩乃梨さんさ、俺がどうしてもって頼み込んだら、えっちさせてくれるらしいぜ?


 聞き間違いじゃなかったかー。……どうせなら聞き間違いであってほしかった気もするなぁー……。


 ……詩乃梨さんの恋愛観が、わからん……。猿のお嬢さんの乱れきった性事情に思わず物申しちゃうくらいには、まともな恋愛観をお持ちなんですよね? あぁ、まともっていう言い方も誤謬があるか。貞淑とでも言い換えよう。


 そんな貞淑な女性であるところの詩乃梨さんは、なんで俺が頼み込んだくらいでえっちっちしちゃうんすか?


 ……いや、理由はなんとなくわかる。


 詩乃梨さんにとっての俺って、恋愛的な意味では無い好感度や、信頼度が異様なまでに高いみたい。


 加えて言うなら、もしかして詩乃梨さんって自己評価がとても低いんじゃないだろうかとも思う。今の所そういう気配を感じたことはないけど、そうでも考えないとさすがに説明がつかない。


「……自己評価、ねぇ……」


「むふ? ほはほうはんふぁひっふぁ?」


「飲み込んでから喋ってくれ。なんて言ってるかわからん」


「…………………………………………………」


 詩乃梨さんが絶望の眼差しで俺を見つめる。見つめながらひたすら口の中をもにゅもにゅしている。おい、ケーキがほとんど減ってないぞ、貴女どんだけ味わってるの?


 俺がしらーっと白い目で見ていると、詩乃梨さんはばつが悪そうにむぐりと小さく唸った。そして、たっぷり十秒以上迷ってから、ごっくんと嚥下する。


 少女は泣き崩れんばかりに悲壮を露わにする。


「……ぷふぁぁぁ……。……ああ、飲んじゃった……。こたろうが飲み込めっていうから……」


「……正直すまんかった。俺の分も食っていいから、それで許し――」


「許す! はい許した! こたろうありがとう! で、こたろうさっきなんて言ったの?」


 詩乃梨さんのテンションが超おもしれぇ。沈痛な面持ち、喜色満面、きょとんとした顔の流れるようなコンボ。すごいな、こんなにくるくる表情変わる子だったのかよ。やばい、顔がニヤけそう。詩乃梨さんかわいい。結婚したい。


 結婚てお前、いやだから俺まだ詩乃梨さんのこと愛してるとかじゃないし――はぁ、この言い訳いい加減疲れてきたなぁ。やめちゃおっかなぁ……。もう愛でいいんじゃないかなぁ、実感がゼロパーセントだけど。詩乃梨さんも確実に俺のこと愛してなんていないけど。


 でも、えろすさせてくれるらしいし、勢いで結婚とか申し込んだらOK貰えそうな気するなぁ。さすがにそれはないか。


「こたろう、さっきなんて言ったの? ほれ、はやく」


 コタツをぺしぺし叩きながら急かされて、やっぱかわいいなーと思いながら脳内から言葉を引っ張り出してくる。


「ああ、なんだっけ。確か、俺が詩乃梨さんに結婚申し込んだらどうなるか、ってい…………う………………よう、な、ことを、考えてたんだけどね。もし申し込まれたら、詩乃梨さんどうする?」


 うっかり飛び出した言葉を、何気ない風を装って最後まで続けてみる。いやさすがにこれ何気なく話すような内容じゃねぇぞ、でもえっちについても同じだしな、今更か。


 詩乃梨さんは、しばし考え込む。じーっと俺の目を見つめながら、すーっと眼を細めていって。フォークを咥えて意味もなくもごもごしながら、ぶっきらぼうに問いかけてきた。


「……え、なに、こたろう、わたしと結婚したいの?」


「…………………………………………………いずれ、そういう関係になれればいいな、という希望は抱いていた。ちょっとだけ」


「ふぅん……?」


 ふぅんて何、どういう意味。呆れなの? 感嘆なの? あなたのそのじっとりとした視線の意味はなんなの!?


「ずっと思ってたの、それ? 最初から? わたしと、初めて会ったときから?」


「初めて会った時? いや、あの時は『うわぁ不良だマジやべぇ、眼合わせないでおこ』としか思わんかった。ときめきなんだか恐怖なんだかわからん動悸はあったけど。というか、一目見ただけで『結婚したい』とは思わんだろ、さすがに……」


「ふぅん……」


 だからそのふぅんって何なの!? 汎用性高すぎ!


 必死こいて詩乃梨さんの反応の意味について考えていると、詩乃梨さんはふと窓の方へ目をやった。


 そこには特に面白い光景などなく、ごくごくありふれた雨模様が広がるばかりだ。詩乃梨さんも、特に面白みを感じていない様子のままに次なる質問を投げてくる。


「こたろう、さ。屋上に傘、用意してくれたじゃん? 去年の梅雨くらいに。あの頃は、どうだったの?」


「か、傘でござるか? なんのことでせうか、それがしはそんなものとんと存じ上げないでござる」


「は?」


 傘を知らない傘張浪人という意味不明な小ネタを挟んでみたら、すんごい低い唸り声を向けられました。あ、はい、ごめんなさい、つまんなかったですよね。


「こたろう、わたしが何も知らないとか、思ってるの? あの状況で? ……ばかにしてる?」


「あ、怒ってるのそっちか。……いやだって、バレてもいっかな、とは思ってたけど、実際バレたらなんか恩着せがましいだろ。お前のために傘用意してやったんだぞ、有り難く思え、みたいな」


「恩、着せればいいじゃん。着せてよ、そっちの方が楽だったし話早かったよ……」


 詩乃梨さんは、何かを悔しがるようにフォークをがじがじと囓る。悔しがるようにというか、恥ずかしがってる? なんかほんのりとお顔が赤くなってきてらっしゃるぞ。え? えっちっちの話で恥ずかしがらないでここで恥ずかしがるってゆこと?


 あと、『恩を着せて欲しかった』っていうのは、なんなのさ。……マゾ?


「詩乃梨さん、傘差し出されながら高圧的に『ありがたく使うがいい! そして存分に恩に着るのだ!』って叫ばれる方が嬉しかった?」


「殴り倒すね、そんなの」


「ですよねー」


 そもそも、雷龍モードだった頃の詩乃梨さんにそんなことする勇気はない。俺は基本的にチキンである。


 詩乃梨さんはフォークを食いちぎらんばかりにがじりがじり噛みまくりながら、最早隠しようのないほどに顔を赤く染め、上目遣いでこちらを睨み付けてきた。


「そういえば、さ。こたろう、他にも、色々やってくれたじゃん? 夏の、あの、さ。熱い日に、屋上に持って来る、あれ」


「仮設テントみたいなやつか? ……いや、あれは自分のためだぞ? だって、日傘だけじゃ周りの地面まで陰作れなくてクソ暑いし」


「……それ持って来るようになったのって、まだあんまり暑くない時だったじゃん。……わたしは、夏風邪で熱あったけど……」


 なにそれ初耳。え、あのはぁはぁ言って頻繁に汗拭いてたのって、詩乃梨さんが特別暑さに弱いとかじゃなくて夏風邪だったの? 言えよ、そしたらテント持ってくるとかじゃなくてさっさと部屋に追い返したわ。チキンだから無理だけど。


「……あと、秋の、あれ。こたろうが、無駄に大工仕事したやつ」


「無駄って言うなし。つーか、大工? ……………………ああ、あれか」



 昨年の秋。冬に向かって肥え太り往く鳥を、詩乃梨さんと一緒に眺めていた時のことである。


 詩乃梨さんと二人して鳥にパン屑蒔いてほのぼのしてたら、一羽、異様に煌びやかなヤツがいたんすよ。しかも人語を喋る。なにこれ怖い。まあ、インコだったんだけど。なぜお前ここにいる、家はどうした。


 しょうがないから、詩乃梨さんがそいつと戯れてる間に、周辺の柱に迷いインコ探してますの張り紙してないかと確認しに行った。さすがに近隣全部の家やアパートにピンポンするわけにもいかないので、手軽に済むならそれでよしって思って。


 結果、無駄足。どうしたらいいかわからなくて、とりあえずインコを一時的に入れておくためのダンボールでも貰って帰るか、とホームセンターに寄った俺。店を出るときには鳥の巣箱が作れそうな木の板を数枚購入していた。なんでだ。


 いやだって、インコの巣箱って木でも作れるんだへぇー、何コレ鳥籠より安い上にオシャレじゃん、長期戦になりそうだったらこれ使って屋上で飼わせてもらうって手もありかもな、って思わされたんだよ。あれは店のディスプレイセンスが悪い、俺は悪くない。


 で、自室で工具回収してからアパートの裏手の公園に行って、とんてんかんてん大工仕事開始。一応ゴム製のハンマー使ったから、騒音はそんなでもなかった。アパートの屋上から詩乃梨さんが遠目にめっちゃ見てて、変に手に汗握りながら、ひたすら大工仕事してた。


 そしたら、美人なお姉さんに声かけられた。


 ワイルドな男はもてるのかしらあらいやだ、でも詩乃梨さんが見てるからお引き取り下さい、って思ったらその人がインコの飼い主でした。件のインコはその日の朝に逃げ出したばかりだったので、張り紙より何より先に、近所を歩いて片っ端から人に聞いて回っていたんだそうな。


 俺は完成したばかりのオシャレ巣箱をその人に無理矢理差し上げて、詩乃梨さんの元へ直行。したら、詩乃梨さんもインコも居なかった。


 どこ言ったかと思って屋上から周辺を見回してたら、お姉さんにインコを渡している詩乃梨さん発見。ぺこぺこ何度もお辞儀をするお姉さんと、無愛想に頷いてる詩乃梨さんを見て、俺は一件落着したことを知った。


 無駄に疲れた。思わずいつものベンチに座ろうとしたら、そこにはなぜか缶コーヒーがふたつ。俺と詩乃梨さんの代わりかのように、どどんと居座っていた。


 誰がどういう意図で置いたのか、丸わかりである。


 で、その後は戻って来た詩乃梨さんと、仲良くいつもの――いつもなら彼女とは会わない時間帯のコーヒータイム。



「――こたろうは、あの頃は、もうわたしと結婚したかったの?」


 心持ち熱を帯びた声が、いつの間にか過去へと飛んでいた俺の意識を現在へと引き戻す。


 詩乃梨さんはなぜかこたつにべったりと突っ伏して、あらぬ方向を向いていらっしゃった。


「詩乃梨さん、こっち向いてくれ。貴女の愛らしいお顔を俺はいつでも見ていたい」


「うるせぇ。いいから答えろ、こたろう。どうなの? したかったの? したくなかったの?」


「いや、あの頃は、うーん。こんな恋人がいたらしあわせだろうな、とは思ってたけど、結婚とかは全然」


「……じゃあ、いつ頃になったらこたろうはわたしと結婚したくなるの?」


 それ、まるで詩乃梨さんが俺との結婚を熱望してるのに俺が全然結婚したがらないので困る、みたいな意味に聞こえるな。実際は逆なのに。


「いつ頃って言われても……秋まできたから、じゃあ『冬といえば』みたい何かあったっけ? あと関係ないけど、詩乃梨さんの頭撫でていいかい?」


「………………………………………………」


 詩乃梨さんのへんじがない。ただのしかばねのようだ。


 ふむ。どうしよう。台詞の後半のうっかり漏れ出た欲望はともかく、前半の純粋な質問に対しては何かしらの発言をもらいたかった。俺を無視しないでー、イエス詩乃梨さん・ノータッチの精神を放棄しちゃうぞー。ずっと前から頭撫でてあげたりしたかったし、お手々繋いだりもしてみたかったし、あ、この体勢なら背中から覆い被さって抱き締めるのもいいかもねヌッ殺されるわやめとこ死んじゃう。


 欲望に蓋をして、詩乃梨さんと結婚したいと思うきっかけになるような冬の出来事について自力で回想を試みる。


「冬、冬、ふゆ、ふーゆ。………。……なんもねぇな」


「……雪の日」


「雪の日? ………。……やっぱり、なんもねぇな」


「…………ベンチ」


「ベンチ? …………………………あ、あー。そっか、あれね、あれ、うん。……え? 雪の日のベンチに、俺が詩乃梨さんと結婚したくなるような劇的なイベントなんて存在したっけ?」


「……ないけど。………………こたろう、必ず先に来て、雪払っててくれたなって。……それだけ」


 …………………。


「俺、詩乃梨さんを抱き締めてもいいかな?」


「………………………………」


 へんじがない。ただのしかばねのようだ。


 だからなんで無視するんだってばよ。本気で抱き締めるぞ? しないけど。やっぱりしていい? ダメ? でも抱き締めたいよ? 俺本人でさえ意識してなかったようなちょっとした気遣いでさえ覚えていてくれた詩乃梨さんが愛おしくてたまらないよ?


 ……ん? 愛おしい? これはもう愛情に至った好意ということでいいのかしら。まだダメ? そっかー、だめかー。……ほんとにだめなの? せめて頭なでなでしちゃダメですか? とにかく詩乃梨さん愛おしいの気持ちをどうにかして抜いておかないと俺今ちょっと頭パンクしそう。


 えっとね、うんと、うんと。あ、そだ、こうしよう。


「詩乃梨さん。次俺のこと無視したら、貴女の頭をなでなでしちゃうぞー。はーい、返事はー?」


「………………………………」


 返事が無い。これは、いけるか!? いっていいのか! イエス詩乃梨さん・イエスタッチ! オゥイェス!


 と思ったら、詩乃梨さんがごそごそと身を起こしてしまった。遠のく、彼女の頭。俺は絶望した。


 詩乃梨さんはなぜか、こたつからのそのそと這い出て立ち上がる。トイレだろうか。


「こたろう、邪魔。もっとそっち行って」


 ……え、トイレ行くなら俺べつにどかなくても行けるよね? なんでそんなむすっとした顔で睨まれなきゃあかんのん? あと貴女、インフルエンザかかったみたいに顔真っ赤っかなんですけど、それまた風邪じゃないよね?


「こたろう。ほら、早く、そっち」


「あ、はいはい、わかったって、蹴るな、蹴るなってば」


 詩乃梨さんにつま先でぺちぺち叩かれて、俺は仕方無く目一杯端に寄った。詩乃梨さんを仰ぎ見て、これでいい? と視線で問いかける。


 詩乃梨さんは満足そうに首肯を返し――


 ――俺が空けたスペースに、すとんと腰を下ろした。


「…………………………え、詩乃梨さん何してるの?」


「ちがうから」


 何をしているのかと問う俺、違うからと答える彼女。会話が噛み合っていないぞ、どういうことだ。今の俺達の台詞を無理矢理繋げるなら、「貴様、そこで何をしている、怪しい奴め!」「ち、ちがうんです、誤解なんです!」みたいなシチュエーションしか思い浮かばん。


 困惑する俺の横、詩乃梨さんはもぞもぞとこたつ潜り込み、先程までと同じように突っ伏して、あらぬ方向を向いた。


「………」


 単身者用の、あまり大きいとは言えないこたつ。そのうちの一方向に、二人で収まる。なかなかに窮屈であり、どう足掻いても詩乃梨さんに肩先や太股が触れてしまう。


 この子、なんでこっち来ちゃったの? 俺ほんともう抱き締めていい? いや待て、今そんなことしたら俺は詩乃梨さんに殺されるより先に興奮の鼻血で出血多量であの世行きだ。自分が愛している女の子を抱き締めて死ねるなんて、なんて幸せな死因なんだろう。いやだから愛じゃねえ、愛じゃねえんだって。


 もうこの愛しさを愛にしてしまいたい。


「詩乃梨さん」


「…………………………なに?」


「俺がいつ頃詩乃梨さんと結婚したいと思い始めたのかって、聞いたよな?」


「…………………………うん」


「思い始めた頃っていうと、残念ながらちょっとわからないんだけどさ――」


 そっぽを向いたまま突っ伏している詩乃梨さんの、髪の間から覗く耳元へ口を寄せて、続きを囁く。




「本気で詩乃梨さんと結婚したいって願ったのは、今、この瞬間が初めてだ」




 詩乃梨さんは、「ふひゃっ」とくすぐったそうに小さな悲鳴を漏らした。かわいい。愛しい。愛してる。


 愛している。俺は、詩乃梨さんを、愛してる。この気持ちはもう、愛でいい。なぜなら、俺がこれを愛だと思いたいからだ。


 例え間違っていたとしても、自分の欲望が肯定してる方へと進んだ方が、後悔はしないですむ。その理屈で俺は既に詩乃梨さんのお手製弁当を手に入れたし、さらに棚からぼた餅的に詩乃梨さんと色々なことを話すことができた。


 だから。俺はまた、己の心の叫びに従って、今度は幸峰詩乃梨と言う少女をまるごと手に入れにいく。


「……けっこん、かー……。こたろうと、けっこんかぁ……」


 詩乃梨さんは、明後日の方向を見つめたままぼんやりと呟く。彼女の声音には嫌そうなニュアンスはなく、ふわふわ・ふんわり・ふぅわふわっと軽かった。


 これは、たぶん好感触。きっと、たぶん好感触。結婚とか重いワードを持ち出したり持ち出されたりしまくった後でのこのそれなりの好感触というのは、これたぶん押せば本気でいけちゃうんでないかい?


 でもあんまりすんなり行くと怖いので、むしろちょっぴり引いてみちゃう。


「もちろん、今すぐにしようって言ってるわけじゃないからな? 詩乃梨さんまだ学生だし、俺もさすがに女子高生娶るってことになると社会的に死亡しそうだし。本当に結婚するとしたら少なくとも、詩乃梨さんが成人してからになるだろうし」


「……ふぅん」


 だからふぅんて何なの!? 俺はもっと貴女の声が聞きたいのでもっと長々と心境を述べて!?


 そういう気分じゃないっていうなら、じゃあ仕方無いので、これだけは聞かせてください。


「幸峰、詩乃梨さん。……俺と、結婚、してくれる?」




「んー……。だめ」




 ほとんど逡巡せずに、そっぽを向いたまま発せられるお断りの言葉。


 あ、だめなんだ。そっか。了解す。


「……………………………え、マジで?」


 ……え、でもキミ、俺のこと好きっぽい雰囲気が行動とか台詞の端々とかに溢れてたんだけど、本当にだめなの? 今もなんか、あんまり拒絶してる感じしないよ? 焦らしプレイ好きな小悪魔彼女の『んー。まだ、だぁめ(はぁと)』みたいに語尾にハートが見えるとかじゃなかったけど、少なくとも『断固ことわる!』みたいな頑なさはまったくない。それこそ、俺がどうしてもって土下座して頼み込んだら、しょうがないなぁってOKしてくれそうな感じに見える。 


 ………。でも、あんまりけこーんけこーん言い過ぎると、流石に重すぎるだろうしなぁ……。むしろ現時点でだいぶ重いね、豪華客船が沈没するくらいの重さはあるね。お断りされてちょっと冷静になっちゃった。


 結婚は、もう言わないでおこう。


 そう決意した俺の隣で、詩乃梨さんは突っ伏していた身体を引き起こした。


 されど、彼女の顔は首が折れんばかりに下を向いたままで、艶めかしい輝きを放つ髪に遮られて横顔もろくに見えない。しかも横顔っていうか、身長差そこそこある上にやたら近い位置にいるので、ほぼ後頭部しか見えないんだけど。


 詩乃梨さんは、俺の方へ少しだけ身を寄せながら問うてくる。


「こたろう、わたしの頭、撫でたい?」


「撫でたい」


 けっ○んをお断りしてきた少女の、この行動。まるで意味はわからなかったが、俺はただただ純粋に自らの欲望を暴露する。


「……だきしめ、たりも……したい?」


「したい」


「……膝枕とかは?」


「したい。されたい」


「……え、えっちなこ――」


「超したい」


「……ふ、ふ、ふぅん? ……こ、こたろうは、さ。本当に好きな相手とじゃないと、過剰にべたべたとか、したくならないんだよね?」


「………………………………う、う、う、うん――ごめん嘘! 俺今愛しい貴女に嘘ついた! ろくすっぽ会話したことのない会社の後輩の初々しい女の子とか見て、わぁかわいいなー頭撫でたりしてあげたいなーとか思ったことあります! ……撫でる、どころか、い、いきつくところまで、いっちゃう感じの妄想とか――んぎっ!?」


 詩乃梨さんに強烈なタックルをもらいました。助走無かったこらそっちは大して痛くなかったんだけど、おまけで繰り出された頭突きがアッパーカットの如く俺の顎にミラクルヒット。俺ちょっと舌噛んだ。


 舌を出してはひはひ言っていると、詩乃梨さんが俺の胸元にぽすんと軽い頭突きを放ってきた。くっついたまま留まって、憤懣遣る方無いといった様子の荒々しい声をぶつけてくる。


「こたろうのばか、やめろよ、わたしのこと好きなんじゃないの、他の女でそういうこと考えないでよ、ばか、ばかこたろう、むかつく、はったおしたい、なぐりたい、けりたい、ばか、ばーか、ばかこたろう、こたろうマジウケる」


「……まじウケるって、それ別に悪口の類じゃないからね? 煽りには使うかもしれないけど」


「うるさい。こたろう、まじうける。こたろう、妄想禁止。……こたろうは、わたしのことだけ、考えてればいいんだよ。わたしとだけそういうことしたいって、おもいやがればいいんだよ。……わたしに、けっこんしてー、けっこんしてくれーって、ばかのひとつおぼえみたいに、もっと、いっぱい、いっぱい、いってれば、いいんだよ。わたしのことだけ、いまは、かんがえてよ」


「………………………………まさか、けこーんゴリ押しされたいの貴女?」


「………………。…………わかんない」


 詩乃梨さんはずるずると身体を倒していき、俺の膝枕に上半身を乗っける形で収まった。


 あまりにも軽すぎるようで、けれど確かな存在感を感じさせてくる、不思議な重み。布越しにじわじわと浸透してくる、俺のそれよりも少しだけ高めの体温。


 詩乃梨さんの香りが、鼻腔をくすぐる。いつもの屋上で、柔らかな風が吹き抜けた時に、ふと隣の席から流れてくる、胸に染み渡る暖かな香り。それをコーヒーと一緒に楽しんでいた俺は、いつしか、詩乃梨さんの香りを嗅ぐと心がほっこりあたたまって落ち着くようになっていた。


 落ち着く。とても、落ち着く。


 俺は完全に無意識のまま、詩乃梨さんの後ろ髪に、首筋のあたりからそっと指を差し入れた。そのまま、梳かすように、整えるように、彼女の頭を優しく撫でる。


 俺の大好きな子は、俺の手から逃れるように身体を丸めて強ばらせた。しかし、この体勢ではどう足掻いても逃げることなどできはしない。ふはは、逃がすものか。俺はひたすら詩乃梨さんの頭をなでりなでりと撫で続ける。


「……んっ」


 詩乃梨さんが小さく吐息を漏らし、くすぐったそうにもぞもぞと身をよじる。その果てに、いつの間にやら仰向けになってしまって、胸を反らせたキツい体勢で俺を見上げてくる。


 久方ぶりにまともに拝めたご尊顔は、まさに沸騰しきっているといったように赤く、赤く、上気している。目の端に涙を溜め、それがこぼれないようにと頑張っているかのように、いつにもまして視線が鋭い。


 見る物に恐怖を植え付けるはずの彼女の目は、しかし、あっちへふらふらこっちへふらふらと弱々しげに揺れており、見知らぬ場所につれてこられて怯えきっている小動物のような印象を受ける。


 不意に俺と目が合った詩乃梨さんは、驚いたようにぎょっと眼を見開き――


 ――がばりと身体を起こしてこたつから逃げ出した。


「……え、あ、あれ? 詩乃梨さん?」


 俺は行き場を失った手を詩乃梨さんに向けて伸ばすが、彼女はなぜか四つん這いでこちらにお尻を向けているので、今手を伸ばすとせくしゃるはらすめんとにしかならない。……いや、さっきまでのも既にせくしゃるしてたな。え、俺、詩乃梨さんに、何してた? 詩乃梨さんも、俺に何してた?


「………」


 いえす、詩乃梨さん。たっち、詩乃梨さん。おー、いえす!


 ……いやいやイエスじゃねえよ、ノーだろ。だめだろ、そういう、なんていうの、ええと――やめとこ。いいんだ、イエスでいいんだ。いいんだよ、うん。


 だから俺は。彷徨っていた手で拳を握り、詩乃梨さんのお尻に向かって語る。


「詩乃梨さん。俺、もっと詩乃梨さんにさわりたい」


「………………やだ。こたろうやだ。きらい」


「なぜに!?」


「……だって……」


 詩乃梨さんは、恨みがましい眼で俺を睨み付け、しかしすぐにふいっと顔を背けて答えを告げた。


「……………………は、はずか、し、すぎる、から……」


「……………………………………え、俺はそんな貴女が超絶愛おしすぎてより一層触りたくなってしまったんだけど、これどうしたらいい?」


「い、いまは、だめ。とにかくだめ。今日はもう、だめ。ほんと、いっぱい、いっぱい、だから。これ以上は、ちょっと、む、胸が、こわれる」


 詩乃梨さんは俺に背を向けたまま、ぺたんと女の子座りをした。己の胸に両手を当て、喘ぐようにはふはふと熱い呼吸を繰り返す。


 胸がこわれるだって? おいおい、そいつぁーいけねぇな。貴女の慎ましやかでありながら程良い隆起と美しさと気品の溢れるお胸には、俺の夢と理想と探究心と冒険心が詰まってるんだぜ? こわさせたりなんかしねーぜ!


「わかったよ。じゃあ、『今日は』、とりあえずここまでだな」


 今日は、と殊更に主張して。俺は、全身を脱力させた。


 気付けば、身体の節々ががちがちに固まっている。詩乃梨さん効果で精神的に癒されていた反面、肉体は慣れない事態に直面したせいで普段使わない筋肉が酷使されてしまったのだろう。


 俺は、軽く肩や首を回してほぐしながら、すっかり温くなってしまった缶コーヒーをずびずび啜る。


 ああ、うめー。でもぬるい。……もっかい温め直すかな?


「詩乃梨さーん。コーヒーぬるくなっちゃってるから、もっかい温めようか?」


 詩乃梨さんを振り返れば、こちらに背を向けて座り込んだまま、不満そうな眼を向けられた。


「……こたろう、なんか、フツーすぎ。……むかつく。……なんで? こたろうは、やっぱり、あ、ああいうこと、慣れてる、の? ……わ、わたし以外と、やっぱり、ああいうこと……」


 俺が何かを言うより先に、詩乃梨さんは何かに気付いたように「あ」と口を開けた。そして、しょんぼりと肩を落ち込ませて床に目線を堕とす。


「……そ、だよね。……こたろう、おとなだったんだっけ……。そだよね、うん……。そういうこと、してて、当然だもんね……」


 俺はコーヒーをまた一口啜って、落ち着き払ったまま答えた。


「いや、当然じゃないし。あんなんやったの詩乃梨さんが初めてだし。恋人どころか彼女どころか女友達すらいたことないし。……異性に触れるのなんて、学校の授業とか仕事の中で不意にとかコンビニでお釣りもらう時とか、それくらいでしか経験ないぞ。俺あんまりモテた例し無いし。……あ、あとは親戚くらいか?」


「……………………うそだー」


「なんでやねん」


 ありのままの真実しか告げない俺に襲いかかる、疑念満載のお言葉。


 俺のツッコミに、詩乃梨さんは消え入りそうなか細い声で返答を寄越した。


「……だって、こたろうだったら、女の方がわらわら寄ってくるもん……。ぜったい、うそだよ……」


「……なんで詩乃梨さんの中の俺って、そんなに評価高いんですかね?」


「…………………………むしろ、なんで低いと思うの?」


 おおっと、質問への質問返し。マナー違反ですよ裁判長! 俺もやったっけなぁ。あ、これ意趣返し?


 俺は詩乃梨さんの分のコーヒーも持って立ち上がり、こちらを一向に見ようとしない詩乃梨さんの真ん前に移動した。


 しゃがみ込み、俯く詩乃梨さんにコーヒーを差し出して答える。


「嫌われてない、とは、俺も思ってたよ。……でも俺のこれは、詩乃梨さんが俺に対して言っていたような意味よりだいぶ下でさ。嫌われてないだろうなとは思いながらも、『嫌われてるかもしれないな』っていう思いがいっつもちらついてた。……まさか、詩乃梨さんが俺のことをそんなに高く評価してくれてるなんて、全然思ってなかった」


 戯れで妄想はしたけど。本気で思いはしなかった。


 詩乃梨さんは、コーヒーを受け取らずに、俯いたまま首を横に振る。


「嫌ってない。全然きらってない。なんで、そんなことになるの?」


 理由は、色々ある。俺が女の子に対して異様なまでに免疫がなかったのでついつい卑屈になっちゃってたとか、しかも詩乃梨さんはちょっと見ないくらいに可愛い女の子なので余計に『俺なんて居るだけで不快ですよね生まれてきてごめんなさい』状態だったとか、いつまで経っても会話が無くて詩乃梨さんから感じるちょっとした好意のようなもの全てに確証が得られなかったとか。


 でも、一番大きいのは、たぶんこれ。




「『好かれてるって思ってたのに、実は嫌われてた』ってなるくらいなら、最初から『嫌われてる』と思っておいた方がマシだろ」




 ――人は、簡単に裏切る。俺がその人に対して寄せていた信頼を、いとも容易く裏切ることができる。


 なぜなら、その行為は、その人にとって全く裏切りなどではないから。俺が勝手にその人を信頼していただけであって、その人は最初から俺のことを信頼などしていなかったのだから。罪悪感や抵抗感の介在する余地など、何処を探しても存在しない。


 少しびっくりしたような様子で顔を上げた詩乃梨さんに、俺は自分の想いを伝える。


「俺、基本的に馬鹿だからさ。誰かにちょっと優しくされただけで、すぐにその人のこと好きになっちゃうんだよ。でも大抵、俺に優しさを向けてくる人って、俺のこと好きとか嫌いとか以前に『どうでもいい』って思ってたりするからさ。

 ……いやなんだよ、そういうの。俺が勝手に期待して、相手は俺に期待どころかか関心すら一ミリたりとも抱いていなかったのに、それを『裏切られた』とか思って怒ったり傷ついたり。

 ……ばかくせぇ」


 馬鹿すぎる。滑稽すぎて笑えない。最初から最後まで、一喜一憂その他諸々が完全なる独り相撲。哀れ過ぎる。本当に、馬鹿臭い。


 俺が最後に呟いてしまった憎悪混じりの独り言が、詩乃梨さんをびくりと震わせた。


 彼女の目に浮かぶのは――恐怖、だろうか。


 いつもの詩乃梨さんなら、意図せず自分から周囲へ撒き散らしているはずの、その感情。それを今は、俺がこの子に与えている。


 ……自分より十歳は年下の女の子を、部屋に連れ込んで。大の男が『愛してる』だの『結婚してくれ』だの押しつけて、思ったことなんでもかんでもべらべら話して、しまいにはマジギレして女の子を怖がらせる。


 大好きな女の子に、愛しいと思っている女の子に、その仕打ち。


 ……俺、ほんとどうしようもねぇな。


「……はぁ」


 低く響いてしまった溜息が、詩乃梨さんをさらにぴくりと震えさせる。


 ごめんな。ごめんな、詩乃梨さん。


 ……俺が、勝手に好きになって、本当にごめんな。


「詩乃梨さん、そろそろ帰ろうか」


 俺は立ち上がって告げる。結局、詩乃梨さんに渡すはずだったコーヒーも、渡すはずだった想いやりも、何もかもが中途で終わった。


 詩乃梨さんは、ぺたりと座り込んだまま、赤面の名残などどこにもない血の気の引いた顔で見上げる。


「……かえ、る? ……でも、こたろうの家は、この部屋……」


「帰るのは詩乃梨さん。俺はここにいる」


「…………………………」


 詩乃梨さんは、無言のまま、虚ろな瞳で俺を眺めて。


 こくり、と。心を持たない人形のように、頷いた。

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