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リセットボタン

作者: 山田結貴

 俺の人生は、パッとしないことばかりだ。

 定職にはついているものの、任されている仕事はつまらないし、これといってやりがいのあることも見つけられていない。

 唯一自主的にやることといったら、自室でゴロゴロすることだけだ。

「いっそ、人生を丸々やり直すことができたらなあ」

 そんなくだらないことを呟きながら布団に寝っ転がっていると、手の中に変な感触を覚えた。

「ん?」

 おそるおそる見てみると、いつの間にか奇妙な物体を握っていた。

 何だか、おもちゃについている押しボタンに似ている。

 こんなもの、部屋に置いていた覚えはないのだが。

「何だこれは。裏に何か書いてあるぞ」

 そこには、無機質な字体でこう刻まれていた。

「えっと……『これは、リセットボタン。これを押せば、何のリスクを負うことなく人生をやり直すことができます』はあ?」

 押すだけで、人生をリセットできるボタン? 何だかどこかで聞いたことがある話だな。

 それにしても、そんな代物が何故に俺の部屋なんかにあるのか。

「リセットボタン、ねえ」

 もしそんなものが本当にこの世に存在しているのであれば、誰もが求めてやまないだろう。

 誰だって、あそこでああしていればとか、あちらの道に進んでいたらなあだとか、そう思って生きているに違いない。

 今は無気力な日々を送る俺にだって、そんな人並みの気持ちくらいは……。

「ふん。どうせこれは誰かがお遊びで作ったものなんだろ。アホくさい」

 その誰かが作ったお遊び道具らしきものがどうして俺の手の中にあるのかは別として、こんなものを見てしまった以上気になって仕方がない。

 もう少し、手の中でボタンをいじくりながらしげしげと眺めてみる。

「これを押して、本当に人生をやり直せたら最高だろうな」

 今までの波風もなく、ただただ平穏でつまらない人生をリセットして、新しい自分として一からやり直すことができたら。

 過去にあきらめてきたことを、人生をリセットすることで改めて追い求めることができたなら。

 このつまらない人生からもおさらばすることができるのではないだろうか。

「押してみるか?」

 どうせ押したところで、何も起こりはしないだろう。もし何かが……人生をリセットするという現象が起こるとしたら、リスクもないというし、それこそめっけものだろう。

 この、ただ生かされているというだけの人生に、何の生き甲斐も感じられない人生に、終止符を。

「面白いじゃねえか」

 俺はフっと笑みを浮かべながら、ボタンにそっと親指を乗せる。

 そして、こう一言呟いた。

「あばよ。つまらない自分」

 カチっという音とともに、辺りが真っ白な光に包まれていった。


 俺の人生は、パッとしないことばかりだ。

 定職にはついているものの、任されている仕事はつまらないし、これといってやりがいのあることも見つけられていない。

 唯一自主的にやることといったら、自室でゴロゴロすることだけだ。

「いっそ、人生を丸々やり直すことができたらなあ」

 そんなくだらないことを呟きながら布団に寝っ転がっていると、手の中に変な感触を……。

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