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小さな肩、茶色の長い巻き毛がくるくると背中に広がって、ああ女の子っていい匂いがするななんて思っていたら、身体が勝手に首根っこを掴んで引き剥がしていた。
あれ? まさか、もしかして、この身体はスキンシップが好きじゃないのかな。
アイリーンの首根っこを掴んでぽいっと投げ捨てる俺の右手。
おおっ、この身体って以外に力持ち。
いや、そうじゃないだろ俺っ!
「ごめ……いや、そのアイリーン?
俺らっていつもこんな?」
抱きつかれたら投げ捨てる、そんな関係なのだろうか?
それとも好意を持ってるのはアイリーンだけで、リヴィエールは違うんだろうか。
「ふふっ、そうですわね。
リヴィエールはいっつも照れ屋さんで、過度のスキンシップはやめろとよく──どうしてそんな事を聞くの?」
「ああ──その、なんだ。
ちょっとばかり記憶が混乱してて。
魔法弾とやらのせいかも知れないが、色々変なことがあるかも知れないが気にしないでくれ」
「リヴィー……。
やっぱりあのへっぽこ魔術師っ……、どうしてくれましょうっ」
「いや、彼──彼女か、そのせいじゃないだろう?」
多少の原因はその【へっぽこ魔術師】のせいもあるかも知れないが。
どうしたもんかと考えていると、遠慮がちなノックの音がした。
「誰だ?」
これまた遠慮がちにそっとドアが開いて、金色の光が見えた、と思った。
鮮やかな金髪が肩までの、眼鏡をかけた少女がそこにいて、伏し目がちな瞳が俺を見つめていた。
「何しに来ましたの、へっぽこさん」
俺に対するのとは違った低い声がその少女に向けられた。
「へっぽ──こって、ああっ! この子が?」
さっきまで話題にあった、魔法弾を俺に、いやリヴィエールにぶつけてしまったへっぽこ魔術師は彼女なのか。
それにしても──、ちっちゃくて可愛い感じの子だな。
「ご、ごめんなさいっ!
私のコントロールが悪くてぶつけてしまって、本当にごめんなさいっ」
ぺこぺこと謝る姿はなんというか、コメツキバッタって言葉が頭に浮かんだ。