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「え?」
女の子の部屋にしてはやけに殺風景だと、その部屋を眺めると一つだけ、オルゴールのようなアラバスターの箱が、女の子の持ち物だと示すようにそこに在った。
その他は作りつけの棚やタンス、ベッドのシーツやカーテンすら華やかさはなく、白い色だけを見せていた。
「いやに殺風景な部屋ですが、これは最初から?」
「もともと部屋についていたものですね、カーテンもベッドも。
多分──あのアラバスターの小物入れだけが持ち込んだものなのでしょう」
周りを見渡してから、そう答えてくれた。
この身体の持ち主──リヴィエールは物に執着がないんだろうか。
そんな彼女が持ち込んだという小物入れに興味が湧いた。
「ありがとうございます、えっと──」
ミルカ先生だったかなと考えていると、ノックの音がした。
「ミルカ・サフィ、あなたたちの教師であり、寮監でもあります。
どなた?」
ミルカ先生がドアに向かって誰かと問いかけると、そっとドアが開いてさっきの少女が顔を覗かせる。
「ミルカ先生……、入ってもよろしいでしょうか?」
「リヴィエールさん、もうよろしいですか?」
さっきの、アイリーン・レイスという少女を部屋に入れるかどうか、迷ったものの特に支障があるわけでもなし、入ってもらうことにした。
「ミルカ先生、ありがとうございました」
「何かあったら、私に相談してくださいね?」
ミルカ先生はそう言い置いてドアから出て行き、入れ替わりにアイリーンが入って来た。
「リヴィー、大丈夫?」
心配そうな瞳に、リヴィエールとどういう関係なのかをミルカ先生に聞きそびれたと思ったが、それは後の祭だった。
「ああ、身体はなんともない」
身体はな、と思いながら苦笑を浮かべる。
「よかったぁ……」
いい終えるや否や、抱きついてくるアイリーン。
いい匂いだと思っていたのは彼女の髪か、と彼女の背中を撫でながら思う。
「ああ……、心配かけてすまない」
とりあえず、心配かけたことを謝ってみる。
多分、リヴィエールにとっての大切な友人であろうと、アイリーンの態度で思われて、邪険にするのをやめて、リヴィエールならそうしたんじゃないかと、背中を撫でながら時折ぽんぽんと軽く叩いてやる。