4
水を一気に飲もうとして、半分くらい飲んだ所で──咽た。
「ガッ、ゲホゲホ──」
「ああ、だめよ、ゆっくり飲んで。
あなた二日間も眠ったままだったんだから」
二日? 今二日間って?
背中を白い手で撫でられながら、今度はゆっくりと水を口に含んで飲んでいく。
ちら、とさっきの少女を見ると、さっきまでと違い心配そうに俺を見つめていた。
「何が──あったのか、教えて下さい。
出来れば、二人きりで」
今は余分な情報を入れたくないしなと、俺に抱きついて来たり、【私の】とか言った少女をちらりと見る。
「分かりました。
では、レイスさん、あなたは自分の部屋に戻って下さい」
「でもっ、ミルカ先生っ!」
「アイリーン・レイスさん」
静かだが冷たい声に、少女はドアから出て行った。
一呼吸置いて、俺に座りなさいと手で示されてベッドに腰を下ろす。
ベッドの前に椅子を置いて、向かい会うように座るミルカ先生と呼ばれた彼女は、年は二十代前半だろうか。
金髪が窓からの光でキラキラしていて、見惚れそうになる。
「リヴィエールさん、あなたは二日前に魔法弾の流れ弾に当たり、それからずっと眠ったままだったのです。
身体にどこか痛いとか異常はありますか?」
「──頭が少し痛いのと、──正直に言います、ここがどこか、自分が誰かも分かりません」
「え……?」
「自分の名前も、さっきの彼女の事も、あなたの事も、何も」
「えええええっ? ちょ、ちょっと待って──」
俺にそう言って、彼女は深呼吸を何度もした。
その度に胸が大きく揺れて、凝視しそうになるのをなんとか止める。
「記憶混濁──というか一時的な記憶喪失なのかしら。
まず、あなたの名前はリヴィエール・アレスター、アレイスター家のお嬢様です。
さきほどの彼女はあなたと同じ学科のアイリーン・レイスさん」
「ここは、学校──なんですか?」
「それも覚えていないのですね……。
ここは魔法と剣術等を学ぶ為の学校──アークランド学院、あなたはここの学生です」
「えーっと、学校ということは、この部屋は?」
あまり物のない、すっきりというよりは寂しいといった感じを受けるこの部屋は何だろう。
「寮のあなたの部屋ですよ、リヴィエールさん」
「え?」