5
アイリス大賞4
そして、部屋に案内されてカバンは扉近くの床に降ろされる。
寮の部屋と似たような、女子にしてはあっさりとした、物の少ない部屋。
ただ、リヴィールが帰って来るからか、花が花瓶に飾られていた。
「リヴィール様、いえ、今は違いましたね」
えっ、今…何を言われた?
「あの、今何て言いましたか、よく聞こえなくて…」
まさか、知ってる?知られている?
心臓がどきどきしている。
「ああ、ご心配なく、リヴィール様からは伺っておりますので、貴方が男性であることは知っております」
えっ?え、え?どういうこと?
「あの、執事さんそれっていったい…?」
「私は執事ですが、ちょっと特殊な執事なのです。
ちなみにリヴ様とお呼びしてよろしいのでしょうか」
「あ…それはリヴィールとの区別でそう呼んでいるだけで俺の名前じゃあないんだ」
「なるほど、では本当の名前はどんなですか?
お聞きしても?」
「ああ、俺の名前…なんだったかな…。
思い出せなくて分からないんだ。
だから、リヴでいいや」
うん、思い出せないのは確かだから、まぁ慣れた名前だしなぁ…。
「なるほど…、分かりました。リヴ様」
分かったというように、銀の髪が揺れてちかりと光った。




