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【一番になりたい】
学院祭という名の、試合の朝。
俺は朝から二戦して、なんとか二勝していた。
「あとは昼から、かぁ……」
持ちなれない剣を右手にしながら溜息をつく。
「リヴ、おめでとうっ、順調に勝ってるわね」
いきなり後から抱きつかれた。
「そ、その声は……リーズ……、く、くるしい……」
首をぎゅうぎゅうに絞められて、息が出来ない。
「え? 美少女に抱きつかれて嬉しいでしょ?」
一向に離してくれそうにないのに、顔が赤くなって、意識が遠くなっていくのが分かる。
ああ、ひょっとしてこのまま落ちるのかな……。
「リヴ? どうしたの、顔が真っ青よっ?」
いや、リーズ、それ君のせいだから。
「………………」
意識が途切れた。
気が付けば、草の上に寝転んでいたのか、目を開ければ空が見えた。
「あ、気がついた?」
空と一緒にリーズが見下ろしている顔が目に入った。
頭の後ろが土の感触でないと頭を動かすと、スカートの端が見えて、リーズの膝枕で寝ていたのを知ってびっくりして起き上がる。
「うわ、びっくりしたぁ」
いや、それ俺のセリフだから。
「さっきはびっくりしたよぉ、急に倒れるんだもん」
いや、それはあなたの絞めのせいです。
「それで、気分はどう?」
……いや、もう言うまい。
きっと、何を言ってもムダだ。
「──気分は悪くはない。
介抱ありがとな、どのくらい気を失ってた?
俺の次の試合まで時間は?」
「んーっと、五分くらいかな。
次の試合って午後でしょ、充分時間あるよ」
「ああ……ちょっとほっとした」
「次の試合は誰とだっけ?」
次の試合の相手、誰だったかな……男子生徒だったような──。
何ていったっけ……確かえらく美形だったような。
「名前は忘れたけど、こう、なんというかキラキラした感じの」
ぽんっと手を合わせてリーズが分かったという顔をして笑った。
「キラキラ、それ多分ルイスだっ、キラキラ──うん、キラキラだねぇっ」
ぷぷっと吹き出して、笑い出す。
「金髪の巻き毛でえらくハンサムな奴だったと思うけど、それがルイス?」
「ん、間違いない、ルイスだっ」
「ルイス──何?」
顔は見た事があるけど、名前は知らなかったがそこそこ有名なんだろうか。
「ルイス・エドワーズ、顔はともかく、彼は結構強いよ?
リヴは付け焼刃なんだから気をつけてね」
確かに、リーズの言う通りだ。
身体はリヴィーが覚えてるけど、俺自身は剣なんて持つのも初めてなら、戦うのも初めてだ──多分。




