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祭だというので一張羅と言いたいところだが、リヴィーは制服くらいしかまともな服を持ってないので制服のままでアイリーンの準備が済むのを廊下で待つ。
「お待たせ、リヴ」
ドアから廊下に出て来たアイリーンはいつもの制服とは違い、緑の瞳の色のよく映える、薄緑のワンピースを着ていた。
胸に緑の石のペンダント、唇に薄っすらとピンクの口紅を引いていて、どきりとさせられる。
「どう、似合う?」
「う、うん……似合ってる、その……すごく綺麗だ」
本当に、いつもの姿よりも綺麗で、ワンピースの裾はいつもよりも長いはずなのに、そのひらりとした裾から覗く足が白くて目に眩しい。
「じゃあ、行きましょう」
笑って手を差し出されて、その柔らかな手を握る。
握った手はリヴィールの手で大きさは同じなのに、小さく温かく感じて、アイリーンは女の子なんだよなって実感する。
俺の今の手はリヴィーの手だから同じくらいの大きさだというのに、そう感じるのは俺が男の目から見たアイリーンだからだろうか。
「まずはアイスを食べるっていうのはどうかしら、リヴはアイスはバニラ?」
「あ、うん、あるならバニラがいいな。
アイリーンはストロベリーとか?」
アイリーンの顔を見ながら、その唇のピンクに連想してしまってストロベリーと言ってしまった。
「そうね、ストロベリーは好きよ、でも──ううん、ストロベリーでいいわ」
アイリーンの顔がくすっと笑っているような気がして、よく見ようとすると、手を繋いだままで頬にキスをされた。
「……アイリーン、リヴィーにそうやってよくキスしてたのかな?」
「りヴィーはすると怒るからしてないわ」
えっと、それって俺だからって思ってもいいのかな?
そんな事を考えてながら歩いていると、アイス屋の前まで来ていた。
玄関を出てすぐの場所にあるってことは、女の子たちが出てすぐに買ったりしてるのかな、と周りを見渡すとアイスを手にした生徒たちが歩いているのが見えた。
食べ歩きを行儀悪いとかっていうのも今日はお咎めなしらしい。
「ね、リヴ、アイスを買ったらベンチで食べないこと?」
いつの間にかアイスを二つ買ったアイリーンが目の前に居た。
「そうだね、ゆっくり食べられるし──」
「こっちよ」
返事が終る前にアイリーンが歩き出した。
付いて行くと中庭の噴水の前にベンチがあり、剪定された木々の迷路みたいなもので周りからは見えないようだった。
「さ、座って」
ベンチに座るとバニラのアイスが差し出されて、それを一口食べてみる。
冷たくて、何より甘くて美味しかった。
「うわ、美味しいなこれ」
「ストロベリーも食べてみて」
口の前にピンクのアイスが差し出されて、これってひょっとして──関節キスになるんじゃあ──と躊躇っていると、アイリーンがにっこり笑っていた。
「ね、食べて?」
「あ、うん……、こっちも甘くて美味しいな」
一口食べるとイチゴの香りと味のするアイスが口の中に広がって──。
「口に付いてるわ、リヴ」
くすくす笑いながらアイリーンの顔が近づいてくる。




