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「あ──多分これは夢なんだよ、夢。
でなきゃ、目が覚めたら女になってましたー、なんて冗談にもほどがある」
夢なら──ちょっとくらい触ったっていいよな?
どうせ自分の身体なんだから、誰にも迷惑かけないし──?
どきどきと心臓の音がうるさい。
シャツのボタンに指が触れて、外す──手よりも色の白い肌が指につるりと触れて、その滑らかな感触に心臓がバクバクと音を変えていく。
「うわ……緊張する……」
もう一つ、ボタンを外す。
胸の膨らみが見えて、シャツの中に手を差し入れてみる。
「うわっ……あったかくて、やわらけー」
さっきはシャツの上からだった。
今度は直に触っている。
手を動かすと、手の触れている感触よりも、触れられているという感触の方が大きくて、肩が跳ねた。
「あっ……」
思わず声が出た。
しかも、なんかちょっと色っぽい声で、それが自分の喉から出たというのが信じられなくて、誰もいないのに恥ずかしくなってしまった。
ものすごく、イケないことをしているような気がして、それでも手は掴んだ胸から離れなくて、もう少し動かしてみたらどうなるんだろうって好奇心が湧いてくる。
「も……もうちょっとだけ……触ったっていいよな……、俺の身体なんだし」
言い訳してるような気がするが、誰に、なんだろう。
あれ、俺の身体でいい──んだよなぁ?
本当に、そうなんだろうかと、鏡はないかと見渡して、壁にまぁまぁの大きさの鏡を見つけた。
胸から手を離して、緊張しつつベッドから立ち上がって鏡に手を伸ばす。
「……誰?」
鏡の中には見た事もないような美少女が俺を見つめていた。
さらりと流れる髪は月の光のような銀色。
白い白磁のような肌にはほんのり頬に赤身が差して、唇はほんのりピンクに色づいて、紅い綺麗な瞳が俺を潤んだ瞳でじっと見つめている。
「ぐはぁっ」
何この美少女、直球どストライクって感じで心臓を射抜かれた気がした。
「この美少女が──俺?」
俺が口を開くと、鏡の美少女も口を開いた。
「マジで?」
鏡に顔を寄せて、もっとよく見ようとした時、バタンとドアが開いた。
「リヴィー!」
誰、と聞く間もなく、抱きつかれた勢いでベッドに押し倒されていた。