10
たっぷりの湯に浸かりたい。
それはもう、毎日でも!
「時間ずらしたら……一人で入れない……かなぁ……」
寮生活だし、それはムリっぽい、けど……出来ればそうしたい。
「だから、それはムリだってー。
あ、でもぉ──」
何やらリーズが考えているようで、額に指を当てている。
「掃除当番──なら、掃除の前に入れるかも知れないんじゃないかなっ?」
「掃除でも何でもやるよ」
「じゃあ──寮監の先生に聞いてあげるねっ」
俺はリーズに感謝した。
心から、心底、感謝した。
一人で風呂に浸かれる、それはなんて至福の時を……。
「待ってよ、それってリヴがリヴィーの身体を好き勝手にするんじゃないでしょうね?」
「おいおい、好き勝手って何だよ。
普通に風呂に入って身体洗うだけ、だろ?」
そう言ってから、気が付いてしまった。
俺の身体は今リヴィーの身体であって、男でなく、女だってことに。
「あ、そんなのダメダメっ、男にリヴィーの身体を好き勝手にさせるなんて嫌っ」
リーズまでもが言い出した。
「いや、その人聞きが悪い言い方止めて……頼むから」
俺が風呂に入るってことは、イコールリヴィーの身体を洗うってことで……どうしよう。
風呂だけじゃない、着替えもあるよな、あれ、そういえば俺……今朝どうやって制服に着替えたんだろう。
「あのさ、二人共、今朝俺どうやって着替えたのか覚えてないんだけど、知らない──かな?」
記憶が無い。
朝起きて、顔を洗って……それから着替えなきゃって思った所で意識が途切れている。
クローゼットから制服を出して、それから気が付いたら身支度を整えていた。
つまり、俺の記憶の中には、リヴィーのパジャマっていうのか、寝てた時の服を脱いだって記憶がない。
もちろん、下着を身につけた覚えもない。
スカートが短いって思ったことや、鏡を見た記憶はある。
「……あれ、俺……どうやって着替えたんだろう」
ぷつんと記憶が途切れて、次の瞬間には制服になっていたって感じだろうか。
これって何だろう?